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担任と来た場所は集会場だった。


「とりあえず、適当に座って。」


そう言われて適当に座る。


「えっと。

サイレンの音って聞こえた?」


「はい。」


「実は……。」


担任が言いづらそうにしている。


「堺君が救急車で運ばれた?」


桜井君は冷静に言う。


「うん。

でもたいした事が無い。」


「運ばれたのに、たいした事が無い?」


「一応、念の為にな。」


「そうなんだ……。」


何で運ばれたのか気になる。


「それで、問題は何でそんな事になったかって話。」


「何でですか?」


「冷静に最後まで聞いて欲しいんだけど……。」


「分かりました。」


担任は分かっている限りの事を話してくれた。




ーーーそれは堺君がテントを出た時の事。



ふらふらと歩いてる男子を見つけて、嫌な予感がした。

ちょうど街灯の下で、その男子が手に小さなナイフのような物を持っているのが見えた。

その男子のちょっと先を歩いてるのが弓弦だった。


「何でお前、咲ちゃんを裏切った!」


そう叫んで、男子が弓弦を刺そうとした……。


「やめろ!」


堺君は男子を止めようとして、もみ合いになった。


「やめろって!」


弓弦も止めようとした。

その男子が暴れたのもあって、弓弦と堺君は少し怪我をしたようだ。

ただ、その男子をおさえようと、二人が殴ったり蹴ったりしたものだから……。

大怪我をしたらしい。


「高橋君と堺君は正当防衛だとは思う。

ただ相手が気を失うまで暴力ふるうのは、違うんじゃないか……とね。」


「そこまでしないと、暴れるからじゃ……。」


「そうかもしれないね。

先生も何が正しいか分からないよ。」


「それで、高橋咲さんや、高橋弓弦君と同じ班の人には言ったんですか?」


「それは、向こうの担任が話に言った。」


「結局、何で咲ちゃんを裏切ったなんて……。」


「咲さんの事が好きで、告白したら、弓弦君が好きだからってフラれたらしくて。」


「それで、弓弦君が沙希ちゃんと付き合ったから、咲ちゃんが裏切られたと?」


「そういう事みたいだな。」


「でも咲ちゃん、弓弦君を応援してましたよね?」


「そうなんだよ。

先生もそう思ったよ。

詳しくは本人に聞かないとな……。」


桜井君が担任に質問をしてくれて、聞きたい事は全部分かった気がした。


「堺君から、沙希さんに伝えてと言われた事があるんだけど。」


まさかの私への伝言があった。


「先生から今回の事を聞いても何も心配するなって言ってくれって。」


「……。」


「高橋君は、高橋君の担任と話していたから、先生は話せなかったんだ。

高橋君の言葉を聞きたいと思うよね?

ごめんね。」


「大丈夫です……。

ありがとうございました。」


大丈夫じゃないのに、大丈夫って言ってしまう。

弓弦が無事で、堺君も無事なら良い。

でも咲ちゃんはどうだろう?








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