5の4

「お前達、そろそろテントに戻れ!」


先生がちょっとイライラしている。


「そうだな。

戻らないとな。」


堺君がそう言うとテントの方に向かった。

皆もつられるように歩き出す。


「ちょっと、待って!」


呼び止められる。


「弓弦……。」


弓弦が私達の方に走ってきた。


「皆、これから何かあるかもしれないけど。

沙希の事、お願いします!」


弓弦が私と一緒にいた皆に頭を下げた。


「友達だから、お願いされなくても、ヤキモチ焼かれる位に仲良くするわ。」


そう言って、真奈が笑うと皆が笑った。


「俺の友達、泣かすんじゃねーぞ!」


堺君はそう言いながら、弓弦の肩をポンポンと叩く。


「沙希の事じゃなくて、二人の事って言えよ。

俺にとっては、沙希も弓弦も友達なんだからな。」


咲真が言った。


「一人でどうにかしようとするなよ?

お前と俺がいたら誰にも負けないだろ?」


堺君が笑うと、


「それもそうだけど、クラス違うからさ。」


弓弦が残念そうに言った。

クラスが一緒なら、気を遣うと思う。


「それより、あの号泣してた、ファンどうするんだよ?」


堺君は心配そうに言うと、


「俺に何か言ってきたら、きちんと話す。

言っても来ないのに、ごめんとか言えない。」


弓弦はそう言った。

私と付き合う為に、この人は何回ごめんって言ったんだろう?


「私もちゃんと話すから。」


そう私が言うと、


「迷惑かけてでも自分の女にしたかったんだ。

ごめん。」


弓弦がそう言った。

卒業してからでも良かったんじゃないか?とすら思ったけど……。


「迷惑とかじゃないよ。」


私はそう言ったけど、これから迷惑かけられる事があるかもしれない。

弓弦の事を好きな子達の気持ちに潰されてしまわないように。

しっかり弓弦の隣にいれるかな?


「いい加減に戻れって!」


先生の怒鳴る声がする。

でも先生の姿は見えない。


「そろそろ行かないとヤバいな。」


「そうだね。」


私達は慌ててテントに戻った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る