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沢山の声を弓弦はちゃんと聞いた所で、


「もし付き合えたら、応援してとか言わないから、相手に何かマイナスな事はしないで欲しい。」


そう言って頭を下げた。


「私だって、彼女作られたらショックだけど、本気って分かったから。

人生で本気になれる事が見つかるって凄いじゃん?」


咲ちゃんがそう言った。


「皆の前でこれだけ言うのって勇気いるよな……。」


誰かが言った。

真奈が言うには、咲真の声に似ていたらしい。


「高橋君、幸せになって!

私達、応援するよ!」


そう言った女子の声は泣きそうな声だったと……。


「ありがとう。

近い内に真面目に告白するから、宜しくお願いします。」


弓弦はそう言うと、その場を去ったらしい。




「何で沙希のいない所で言ったんだろう?」


真奈が不思議そうにしている。


「真面目に告白するって宣言して、すぐ後に呼び出されたら、告白されるってバレバレだろ?」


堺君が言った。


「沙希、そういうの気付かないと思う……。」


「そうだけど、たまには勘が働くかもしれないだろう?」


「たまに……か。」


「付き合ってって言っても、どこに行くの?って言いそうだし。」


「あぁ……言うかも……。」


真奈と堺君が納得している。

でも違うと言えないのが悲しい。


「咲真君は嫌がらせあると思う?」


真奈が咲真に言った。


「弓弦があれだけ言ったとしても、あるかもしれない。」


「……。」


「沙希でなく、弓弦に何かするかもしれない。」


「え?」


「俺に何もするなって言ってないじゃん?」


「そういう問題?」


「そう。」


多分、咲真の言う、


『弓弦に何かするかも』


っていう事は起きるかもしれない。


「どうしたらいいの?」


私は思わず聞いた。


「分からない。

でも誰かに何かされたからって別れる?」


咲真がそう言った。


「分からない……。」


「さっき付き合ったばかりだもんな?」


「うん……。

実感も無いし。」


本当に実感が無くて、夢なのかも?って思う。


「寝てる時に何かされなきゃ、弓弦は大丈夫じゃない?

思ってる以上に、アイツ強いよ?

頭の後ろにも目がついてるの?ってくらい、背後の動きも気付く。」


堺君がそう言った。


「妖怪みたいだな。」


咲真がそう言うから、皆が笑った。

自分の彼を妖怪扱いされて、どうしたらいいのか分からない。

でも私も笑った。








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