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ーーー私と堺君がテントに行ってた時の事。


「皆、いきなりゴメン。

ちょっと聞いて。」


弓弦がいきなりマイクを持ったらしい。

弓弦の隣には、咲ちゃんがいた。


「これから本当の事言うから!」


弓弦がそう言うと、皆が黙った。


「ねぇ、私の彼氏になってよ。」


咲ちゃんが急にそう言い出した。


「ゴメン、無理。」


「イトコでも付き合えるんだよ?」


「知ってる。

でも俺、こうして話してても、違う女の事を考えてる!」


「誰よ?」


「言ったら、嫌がらせするじゃん?」


「……。」


「嫌がらせとかやめて。

嫌いになりたくない。」


「だって、ムカつくじゃん?」


「俺は今、ムカつかれてる事に、ムカつくんだって。」


「……。」


この時、すでに数人が青ざめた顔をしていた。


「恋愛感情無いけど、好きなヤツ沢山いるんだよ。

その中の一人じゃダメか?」


「特別になりたい。」


「イトコってだけで特別だろう?」


「そんな事……。」


「ケンカしたって、嫌でも会うんだよ。

特別以外の何がある?」


「それは……。」


「でも俺が恋してる子は違うんだ。」


「え?」


「嫌だったら会えなくなる。」


「……。」


「俺のせいで傷つけられて、もう会いたくないって言われたら耐えられないな。」


「……。」


「傷つけられたヤツ、抹殺しちゃうかもね!」


「え?」


「命を奪うとかじゃないよ?」


「当たり前でしょ!」


「知ってるでしょ?

俺、怒ったら何するか分からないって。」


「……。」


この時の弓弦の目つきは、とても怖かったらしい。


「それで、俺の本命が今、俺の友達とどこか行っちゃったのよ?」


「え?

その子モテるの?」


「分からない。

用事があるらしいけど、モヤッとする。」


「ヤキモチじゃん?」


「その子以外にこんな気持ちにならないんだよ。」


「そんなに良い子なの?」


「そうだな。」


弓弦は何とも言えない表情だったようで。


「もしも、その子が俺と付き合ったら嫌がらせされるかもって、友達に言われてね。」


「そうね……。」


「どうしよう……。」


「え?」


「好きな人が嫌がらせされるような事、俺はしたくないのに……。

でも自分の彼女になって欲しいんだよな。」


弓弦が悲しそうにうつむく。


「皆、どう思う?」


弓弦が皆を見る。

すると、


「自分の好きな人を取られたからって、嫌がらせして引き離すなんて、誰も幸せにならないよ。

嫌がらせした本人は何も得しない。」


そう誰かが言った。


「綺麗事って言われるだろうけど、好きな人の幸せを祈れるような人でいて欲しいね。」


そう誰かが言った。

沢山の意見が聞こえた。


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