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キャンプ場に戻ると、真奈が夕食の下準備をしていてくれた。


「……。」


私達を見た真奈は何も言わない。


「皆はテントで休んでいて。」


桜井君がそう言うから、桜井君を残して皆でテントに戻った。


「あれ、沙希?!」


テントの近くに咲真がいた。


「咲真、どうしたの?」


「今晩のキャンプファイアーの打ち合わせだよ。

面倒くさいな。」


「自分で選んだ係でしょ?」


「いや、ジャンケンで負けた。」


「そうなんだ。」


「俺さ、こういうの苦手なんだよね。」


「だろうね……。」


「沙希は何してるの?」


「テントに戻って来た所。」


「あっ、この辺り、女子のテントか!」


「そうだよ。」


「誤解されないように、さっさと行くわ。」


「フフッ、そうだね。

気を付けて。」


「おう!」


咲真は走って行った。

何か久々に咲真と話せて嬉しい!


「はぁ……。」


一人きりのテント。

やる事もない。

そのまま、いつの間にか寝てしまった。


「……ちゃん。」


「沙希ちゃーん!」


どこかで私を呼ぶ声がする。

その声で目覚めて、テントから出る。


「もしかして寝てた?」


堺君が笑っている。


「沙希ちゃん、髪がボサボサだよ。

僕、クシで良かったら貸すよ!」


園田君は心配そうにしている。


「ありがとう、このくらい手で直るでしょ。」


私はいつも手で髪を整える。

ちゃんとブラシでやりなさいって言われるけど。


「うわー、キレイにまとまるんだね。

いいなぁ。」


園田君が憧れの眼差しで私を見ている。


「これ普通にやらない?」


「やらないよ。

僕の毛なんてふわふわして、まとまらないもん。」


「そうなんだ、大変だね。」


「沙希ちゃんは肌もキレイだけど、もしかして何もしてない?」


「石鹸で洗う。」


「化粧水は?」


「臭そうだよ。」


「何か本物の美肌って何もしないって事なのかな?」


「園田君だって、キレイじゃん?」


「そんな事ないよー。」


園田君の方がキレイな気もするんだけどな……。

お手入れしてるのかな。


「そういえば朝からパチパチやってたな……。」


堺君がボソっと言った。


「見てたの?」


「気合い入れてるかと思った。」


「化粧水だよ。」


「そんなもの付けなくてもキレイそうなのにな。

まだ若いんだから。」


「若い内からお手入れするのが大事なんだって。」


「お前、モデルにでもなるつもりか?」


「無理だよぅ……。」


堺君と園田君の会話を聞いていると、弓弦が通りがかった。

隣には咲ちゃんがいる。


「何だよ、いとこがベッタリだな。」


堺君がボソッと呟く。

気になって仕方ないけど、話しかける勇気は無かった。

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