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班行動のハイキング。


「私、調子悪いから休むわ。」


真奈がそう言い出した。


「機嫌悪いだけだから説得しろよ。」


佐々木君が小声で桜井君に言うと、桜井君は真奈と一緒にどこかに行った。


「沙希ちゃんは悪くないよ。」


堺君がボソッと言う。


「えっ?」


「しつこいなって思ってたのに穏やかにおさめたでしょ。」


「そうかな?」


「これからハイキングなのに拗ねてるんだもんな。

彼氏次第だな、これは。」


「桜井君で大丈夫?」


「平気でしょ。

俺みたいに口が悪いわけじゃないし。」


ちょっと不安だ。

私が行けば良かったかな……とか思ってしまう。

結局しばらくして、


「ダメだった。」


桜井君が戻って来た。

私が行こうかと思っていたら、


「行かなくて良いよ。」


桜井君が私を止めた。

何とも言えない雰囲気でハイキングに行く。


「ごめんね、沙希ちゃん。」


歩きながら桜井君が謝って来る。


「え?」


「何か過去に色々あったらしいんだ、彼女。」


「……。」


「それでつい強く言っちゃったみたいでね。」


「……。」


「余計なお世話だった事は自覚してるから。

単に寝不足でクラクラするから、今日は行かないって事だったけど、本当の事は分からないね。」


「え?」


「ただ沙希ちゃんと気まずいのかもしれないし、本当に具合悪いかもしれない。

別にどっちでも良いんだ、本人がゆっくり休んでくれたらいい。」


「……。」


私も本当の事は分からない。

でも余計なお世話と言ってしまいそうだから、来なくて良かった……と思ってしまった。


「……。」


私達のハイキングは無言でひたすら歩くだけになってしまいそうだ。

そう思った時に、


「おい、ここ景色いいぞ!」


堺君が指さす方を見た。


「あっ、本当だ!」


小さい山だけど、上から見た街並みはとてもキレイだった。


「今日の夕飯何だっけ?」


突然、堺君が言い出して、私もお腹すいたなーって思った。


「豚汁じゃなかったかな。」


桜井君がボソッと呟く


「豚汁?」


「うん、豚汁だと思う。」


「豚汁って地味だけど美味しいよな。」


「うん。

皆に迷惑かけたから、俺と彼女で作るよ。」


「え?

桜井、作れるの?」


「ううん、彼女がいたら大丈夫でしょう?」


「おいおい、彼女任せにしないで手伝えよ!」


「うん、手伝うよ。」


桜井君の言う通り、真奈はご飯を作るのかな?

具合悪いって言って、作らないかも?


「あぁ……しんどーい。」


園田君が呟く。


「しっかりしろよ。

背中押してやるから。」


「ごめんね、堺。」


「いいよ、困った時はお互い様!」


「ありがとう。」


堺君は優しいなと、つくづく思った。


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