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キャンプの一日目。

ちょうど夕飯の準備とテントの準備をしている。


「ねぇ、沙希ちゃん。」


佐々木君が小さい声で話しかけて来た。


「ん?」


「アイツらどう思う?」


「え?」


「桜井と真奈ちゃん。」


佐々木君が目で『あっち』と言わんばかりにチラッと見た先には、真奈と桜井君がいた。


「仲良さげだね。」


「だよな。

付き合ってるっぽくない?」


「付き合ってるなら言ってくれないものかな?」


「だよなー。

言って欲しいけどさ、言いづらいかもしれないし。」


「あからさまに、くっつきすぎだよね。」


ハッキリ言って、イチャイチャしているように見える。


「ねぇ、沙希ちゃん。

玉ねぎって、どうするの?」


園田君が聞いてきた。


「皮剥いて切ればいいんじゃない?」


「やった事ないんだよね。」


「じゃあ、私、やるよ。」


「ありがとう」


園田君は可愛すぎて、ついついやってあげたくなる。


「おいおい、沙希ちゃん。

危なっかしいな。」


堺君が苦笑いしている。


「俺がやるよ。」


「え?

堺君、出来るの?」


「うち、親が共働きだったから、俺がご飯作る日もあったんだよ。」


「へぇー。」


堺君に玉ねぎを渡す。


「へぇー、上手だね。」


「感心するのは良いけどさ、玉ねぎ以外も準備するんだよ?」


「あぁ……ピーラー苦手。」


「俺がこれ終わるまでに、出来る所までやってて。」


「はーい。」


出来る自信なんて無いんだけど。


「何かピーラーって名前可愛いよね。」


「そうかな……。」


園田君が楽しそうに皮をむいている。

ピーラー使うのは上手みたい。


「堺、テント手伝ってくれる?」


「うん、いいよ。」


堺君が桜井君に呼ばれていなくなった。


「私もこっち手伝うね。」


真奈が包丁を持つと、勢い良く切り始めた。


「上手だね。」


「そうかな?

よくやるんだよね。」


真奈があっと言う間に切ってくれた。


「佐々木君と園田君、お皿とか準備お願いしていい?」


「うん、いいよ。」


「沙希は私の調理を手伝って!」


「うん。」


真奈がテキパキ仕切ってくれる。


「真奈、凄いね。」


「え?

何が?」


「仕切ってくれるし。」


「自分が動きやすいようにお願いしてるだけよ?」


「そうなんだ。」


「あっ、それ取ってくれる?」


「うん。」


本当に凄い。


「真奈。」


「いい匂い!」


「え?」


「あっ、ごめん、何?」


「いや、いい匂いだねーって。」


「だよね!」


桜井君の事を真奈に聞こうとしたけど聞けなかった。


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