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キャンプ一日目の夜。

私は真奈とテントで二人きりだった。


「このテント広いね。」


「うん。」


「男子は狭いだろうね。」


「私達二人で、男子は四人だもんね。」


他愛ない話をしている。

桜井君について聞きたいのに、言い出せない。


「ねぇ、沙希。」


「ん?」


「同級生と付き合うってどうなんだろう?」


「同級生?」


わざと気付かないフリをした。


「今まで年上ばかり好きになってて。」


「え?」


「付き合ってたんだ、年上の彼と。」


「そうなんだ。」


「でも引っ越すって言ったら終わっちゃった。」


「そうなんだね……。」


「同級生なら卒業も一緒だから良いかなって思ってね。」


「そうかもね。」


誰とも付き合った事が無いから分からないんだけどな……。


「沙希は桜井君をどう思う?」


「かっこいいとか、爽やかとか思うけど、まだよく分からないよね。」


「モテそう……。」


「そうだね。」


モテる男を好きになると良い事なんてないよって思う。

モテる男と友達なだけでも面倒だったのに。

でもかっこいいから好きになるっていう気持ちは分かるんだけど。


「もし桜井君と付き合うってなっても、沙希は変わらずにいてくれる?」


「え?」


「彼氏が出来ただけで態度変える友達がいたから。」


「あぁ……そういう人いるだろうね。

私は別に変わらないよ。

相手が変わったら私は変わると思うけど。」


「そうだね。」


しばらく沈黙の時間が続く。


「真奈ちゃん、沙希ちゃん、起きてる?」


テントの外から声がした。

テントの出入口を開けてみる。


「桜井君と堺君!」


「佐々木のいびき、うるさくて。」


「え?」


「しかも、園田はそんな中で爆睡だし。」


「そうなんだ。」


「だから、遊びに来ちゃった。」


「そうなんだ。

じゃあ、中に入って!」


テントに四人で入ると急に狭くなった気がする。


「せっかくだし、トランプしようか?」


「そうだね。」


四人でしばらくトランプで遊んでいた。


「ちょっと、私、トイレ行って来るね。」


真奈がそう言うと、


「暗くて危ないから、俺も行くよ。」


桜井君もついて行く。

二人がテントを出ると、私と堺君が二人きりになる。


「桜井、告白するんだって。」


ボソッと堺君が言った。


「え?」


「真奈ちゃんに告白するってさ。」


「それで来たの?」


「いや、さっきの理由は本当。

でも、ここに入る前に桜井に言われた。」


「そっか。

じゃあ、カップル誕生だね。」


「そうかな?」


「真奈も好きみたいだし。」


「別にいいけど、イチャイチャされるのは嫌だな……。」


「そうだね。」


いつ戻るか分からない二人を私達はトランプをしながら待った。

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