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「はぁ……。」


ため息を吐きながら、咲真が教室に来た。


「どうしたの?」


「なーんか、根掘り葉掘り聞かれた。」


「え?

何を誰に?」


「クラスのヤツに彼女の事を。」


「え?」


「彼女がいるかって話になってさ。」


「そうなんだ……。」


「いるって言ったら、何か大騒ぎでさ。」


「そっか。」


「最初、沙希が彼女って思われていたんだよ。」


「え?」


「一緒に帰ってるじゃん?」


「うん。」


「でも違うって言って、じゃあ誰だよ?ってなるわけだよ。」


「そうか。」


「別に、まだ友達とあんまり変わらないもんな。」


「そうなの?」


「何回か二人で遊んだだけだよ。」


「まぁ、学校も全然違うもんね。」


咲真が彼女の話をこんなふうにする日が来るって不思議な感じ。


「おー、二人揃ってる。」


弓弦も教室に来た。


「新入生テストの話は聞いた?」


「うん。」


「大丈夫?」


「無理だ。」


「ハッキリ言うね?」


「でも、本当に入試終わったら忘れ始めた。」


「そんなに難しくは無いって話だけど。」


「英単語とか漢字とか無理すぎる。」


「入試に使った物を復習に使うといいよ。」


「あぁ、一応見ておく。」


弓弦はテストだからって焦ったりしないよね……。


「弓弦、入試トップだったんだろ?」


いきなり咲真が言う。


「うん。」


「熱あったんだよな?」


「38度位。」


「マジか。

それでよく辿り着いたな。」


「何かボーッとしてたよね。」


「そんなんでトップって、どういう事だよ。」


「分からないよ。」


弓弦が苦笑いしている。


「元気な私達って……なんて思うよね。」


本当にそれは強く思ってしまうこと。

咲真も同じはず。


「それな!」


「元気で頑張っても勝てないんだよね。」


「そうだな。」


「切ないね。


「うん、そうだな。」


咲真とは、こういう時に気が合う。

成績同じくらいだったから余計に。


「そんなに頭良いなら、ここの学校じゃなくて、もっと頭の良い人が多い学校が良かったんじゃない?」


咲真がそう言う。

私だってそう思う。


「俺はここじゃないと嫌だった。」


「沙希がいるから?」


「そうだよ。

高校生活を好きな子と同じ学校で過ごしたいだけ。

俺だって普通の高校生だからね?」


「大学は?」


「どっちでも良いけど、資格を取るなら医学部とか法学部とかが良いかな?」


「え?」


「医者か弁護士。

教授も良いけどな……研究者もいいな。」


「よく分からないけど、何にでもなれそうだな、お前なら。」


「ううん、一番なりたいものに、なれないんだよ。」


「え?」


「沙希の彼氏。」


「うわぁ……一番難しいヤツ!」


「そうだろ?」


一番難しい……か。

でも中途半端な気持ちでは動けないんだよ……ごめんなさい。

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