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弓弦の事が好きな、あの子は気になる。

だけど、ずっと片思いしていた拓哉君がいる。

その片思いはずっと片思いなんだって分かっているけど。


「沙希、あの彼と本当に付き合わないの?」


真奈が突然言う。


「また、その話?」


「廊下から声が聞こえてるの気付かない?」


「え?」


眠くてボーッとしていて気付いていなかった。

でも教室のドアが開いたら、よく聞こえる女子の声。


「ねぇ、弓弦君さぁ、彼女いないんでしょう?」


「うん、いない。」


弓弦の声も聞こえた。


「弓弦君は弓弦君を好きって言ってくれる子を選んだら良いと思うよ?」


「そうだね。」


「じゃあさ、私はどう?

なんちゃって!」


その後が聞こえない。


「沙希、行かなくていいの?」


真奈が真剣な表情で言うから、ちょっと悩んだ。


「え?」


「いいよって言うかもよ?」


「弓弦が良いならそれでいいのよ。」


「え?」


「私はまだ100%じゃないから、無理だよ。」


「え?」


「彼女になる資格はまだ無い。

多分私が本気なら、もうとっくの昔に教室を飛び出してる。

それを出来るくらいに気持ちが動かないと、申し訳ない……。」


「え?

沙希、そんなにちゃんと考えてたの?」


「ん?」


「もっと、こう、好きな人がいるから、無理とか言うかと思ってた。」


「ううん、弓弦は大切な友達だから、中途半端は無理だよ。」


「そうなんだ。

大切な友達だから、いい加減な気持ちじゃ嫌なんだね。」


「そう。

付き合うのなら、拓哉君にちゃんと言いたい。

拓哉君より好きな人が出来たんだって。」


「そっか。」


「イトコだから他人でも無いし、家族みたいに過ごしたりしていたから。」


「認めて欲しいのかな?」


「あぁ、この人なら俺は勝てないなって思わせたい。」


「フフッ、逆襲みたいじゃん、それ!」


「そうかもね。」


拓哉君以上の人を……って、そういう事だと思うの。


「それにしても、あの女子は曲者だね。」


「弓弦、キレないと良いけど。」


「え?」


「静かにキレるから。」


「あぁ……普段おとなしいのに?」


「うん。

凄い怖いと思う。」


「うわぁ……大変じゃん。

沙希はそんな彼でも良いんだよね?」


「うん、友達としては最高。

彼氏としては分からないけど。」


「それはね……。」


「ん?」


「分からないから付き合ってみる……とかもあるよ?」


分からないから付き合ってみる……。

そういう選択肢は私には無いけど、そういう考えはアリだと思う。




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