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周磨の家から帰る時、
「また来て。」
周磨がしつこくそう言った。
「いつでも呼べばいい。
俺達、スマホ持ってるんだから。」
高校入学と同時にスマホを持たせてもらった。
「そうだな。」
「いつでもメッセージ送っていいんだからね?」
「うん、ありがとう。」
周磨が不安そうだった。
でも学校も違うから、同じ学校だった時のようには行かない。
「沙希!」
歩き始めた時に周磨が私を呼ぶ。
「何?」
「言わなくても分かってると思うけど。」
「うん。」
「あのさ、弓弦これからモテそうだから。」
「そうだね。」
「自分の気持ち、早めに整理した方がいいよ。」
「うん。
分かった。
またね。」
「うん、またね。」
私と弓弦は二人でゆっくり歩く。
「分かったって言ったけど、何が?って思ってるんでしょ?」
弓弦がボソッと言う。
「俺は、この前みたいな事、もっとしたい。」
「え?」
「キス……とか。」
「ちょ……。」
「嫌だった?」
「嫌じゃないけど……。」
思わず私は後退りする。
「そんなに警戒しなくていいよ。」
「……。」
「沙希?」
弓弦が私の顔を覗き込む。
「フフッ。」
「……。」
「顔、真っ赤だよ。
可愛いな、沙希。」
「ちょ……。」
弓弦が私の手を握った。
それは決して嫌じゃない。
でもドキドキして離したいとかじゃない。
「離さないんだ?」
「え?」
「手!」
「あっ、ごめん。」
「いやいや、それ、沙希がごめんって言う事じゃないでしょ。」
正直よく分からない。
でも私の本能が言ってるんだ。
『この手を離しちゃダメだよ』
そんな感じの事。
「あのさ、弓弦。」
「うん。」
「男女の友達が手を繋ぐって、おかしい?」
「さすがに今の年齢では、おかしいって思われるかもね?」
「うーん。」
「じゃあ、周磨や咲真は?
手を繋ぐ?」
「ううん、だって彼女いるし。」
「そうだよね。
じゃあ、俺に彼女出来たら繋げないよ?
どうする。」
「しょうがないじゃん。」
「じゃあ、彼女作っちゃおうかな。
沙希が付き合ってくれないし。」
「えっ、ちょっと待って。」
「ん?」
「何か嫌。」
「沙希の嫌な事はしないよ?」
「だって、彼女……。」
「じゃあ、沙希がなってよ。」
「……。」
「急がなくていいから。」
「うん。」
「じゃあ、俺、この辺で帰るね。」
「あっ、うん。
ありがとう。」
「じゃ、またね。」
「うん、また。」
弓弦を見送る。
もうちょっと一緒にいたかったな……。
あれ……一緒にいたかったなって思った。
何でかな?
友達だから……かな。
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