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弓弦とデート……って考えると何か不思議な気持ちになる。

違う違う、いつも通りに遊ぶだけだ。


「沙希、行くよ。」


「うん。」


弓弦が迎えに来てくれた。


「弓弦、いつもと雰囲気違うね。」


「そうだね。」


「……。」


「好きな人と二人で出かけるってなったら、普段と同じってわけには……。」


「何か……私がいつも通りでゴメン……。」


「いいよ、いつも通りで可愛いんだから。」


弓弦はサラっと言って来るけど……。

どう返したらいいか分からなくなる。


「どうしたらいい?って思ってる?」


「え?」


「別にいいんだけどさ。

一緒に居てくれたら。」


何か本当に申し訳ない位に言葉が返せない。


「俺、文具屋行きたいんだけど良いかな?」


「うん、いいよ。」


弓弦に付き合って文具屋に行く。


「あれ?

ここ文具屋だったっけ?」


「レンタル屋だったじゃん?」


「あぁ、DVDとか。」


「うん。」


「今はレンタルする人が少ないみたいよ?

動画配信あるから。」


「そうなんだね、残念。」


「でも何で文具屋?って思うよね。」


「うん、思った!」


「沙希も買うでしょ?」


「え?」


「言われなかった?」


「何を?」


「あれ?」


「ん?」


「参ったな。

クラス違うから持ち物とか変わるよな。」


「そうなのかな?」


何かクラスが違うだけで遠い存在に思えちゃうね。


「赤鉛筆じゃなくて赤ペンって言われたんだよ。

俺、鉛筆が好きなのに。」


「え?」


「情報処理の授業だよ。

誰かが消しゴムのカスをいっぱいキーボードに落としたらしくて、先生が怒ったらしい。」


「怒らなくてもいいのにね。」


「キレイ好きなんだろうな。

キーボード壊れると困るからか。」


「そうなの?」


「うん。

沙希はパソコンは大丈夫そう?」


「無理。」


「高校は単位落とせないぞ。

マズイなら、すぐ言って。

一緒に卒業したいから。」


「うん。

覚えるのはまだいいけどさ、指が動かなくてね。」


小中学校でもパソコンを授業で使ったけど苦手だったな。


「本当は咲真連れて来たかったんだけど、デートみたいだし。」


「それは仕方ないね。」


「消しゴム買おうって思ってたのにな。」


「あの、よく消えるやつ?」


「うん。

取扱店少ないから、ここにあるって教えたかったんだ。」


「そうなんだ。」


弓弦はやっぱり優しいなと思った。


「あれ?

弓弦と沙希?」


「周磨!」


文具屋に周磨が来ていた。

最近会ったばかりなのに久々な気がする


「彼女は?」


「友達とカラオケだって。」


「そうなんだ。」


周磨の彼女は私の友達の上原遥うえはらはるか

周磨の学校の近くにある私立の女子高に入学。


「咲真どうした?」


「デート。」


「そっか。」


「周磨は今日は?」


「予定ないよ。」


今日は二人でデート……って事だけど、周磨に予定が無いなら一緒に話したりしたいな。


「じゃあ、一緒に遊ぼうよ。」


「うん。」


弓弦が私の表情を見た後にそう言った。

気付いてくれたのかな?

私の考えている事。

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