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三人で帰る途中で咲真のスマホに着信があった。


「もしもし。

あっ、うん。

いいよ。

今、弓弦と沙希と帰ってるから。」


咲真が話している相手は多分美月だろう……。


「あのさ。」


「うん。」


「デートってどんな服を着ればいいんだろうな?」


「えっ?」


「いや、美月がオシャレして来るのに、俺はいつものままだし。」


咲真がこういう話をする日が来るとは……。


「咲真はいつも通りでいいよ。」


弓弦がボソッと言った。


「え?」


「自分で選ぶくらいなら、彼女に選んでもらったらいい。」


「そうかな?」


「今度洋服を買いたいけど、どんなのが良いか分からないから、一緒に選んでくれない?って言えばいいじゃん?」


「あぁ……そういう風に言えば、彼女の好みも分かっていいのか。」


「何か咲真がちゃんと考えていて偉いなって思ったよ。」


「相手がちゃんと考えているのに、俺もそうじゃないと失礼だろ?」


「そうだね、弓弦は良い奴で良かったよ。」


「そんなに良い奴じゃないよ。

悪い奴って思われたく無いだけだ。」


ちゃんと考えていてくれて、私も嬉しいよ。


「とりあえず、俺はこのままデートして来るわ。」


「うん、いってらっしゃい。」


咲真は私達と違う方へ向かって行った。


「沙希。」


「ん?」


「俺とデートしてみない?」


「え?」


突然、弓弦がそう言った。


「デート?」


「うん。

沙希とデートしたい。」


「付き合って無いのに?」


「俺はいずれ付き合いたいと思うよ。

でも今は友達と遊ぶって感覚で良いから。」


「うん。

友達としてなら行くよ。」


「じゃあ、昼御飯食べたら迎えに行くよ。」


「うん、分かった。」


「じゃあ、またね。」


「うん、待ってる。」


弓弦と私の家の前で別れた。

その時、


「沙希ちゃん。」


私を呼ぶ声がする。

弓弦は気付かず歩いていく。


拓哉たくや君。」


佐藤拓哉さとうたくやは私のイトコで憧れの人。

五歳年上の社会人。

たまたま家の前を通ったみたい。


「今日入学式?」


「うん。」


「似合ってるね、制服。」


「ありがとう。」


「懐かしいな……。」


「制服が?」


「うん……。」


拓哉君は悲しそうに見える。


雪夏ゆきなちゃん思い出した?」


「……。」


拓哉君は元彼女の小豆沢雪夏あずさわゆきなに未練がある……。


「あのさ、沙希ちゃん。」


「あそこのドラッグストアあるじゃん?」


「雪夏が働いているらしい。」


「えっ?」


「……。」


「それって仕事で再会?」


「うん……。」


拓哉君は運送会社でドラッグストアへの荷物の運搬をしているらしい。


「本当に好きなら頑張ってよ。」


「だよな。

何かごめん……。」


「ううん、いいよ。」


「ボーナス出たら何かご馳走するからね。」


「うん、楽しみにしておく。」


憧れの人の恋を応援するのは辛い。

でも雪夏ちゃんしか拓哉君を幸せに出来ないと思ったから……。

頑張って欲しいな……復縁。

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