第215話 真の英雄
漆黒の鎧が彼女の身を包む。
「『漆黒の栄光』」
「お前・・・・同じか。
鎧の展開だけ・・・・武器は出さないのか?」
「あなた程度なら出す必要もない。」
「へっ!舐められたもんだなっ!」
神速の一槍でマリュカスを貫こうと襲う。
しかし、キンっという音が鳴り響き、鎧によって阻まれる。
「なっ!仮にも『神装』の一撃をっ!」
「この能力はある一定のスキルと魔力を弾く。
キャスト君の思い描く力かな?
キャスト君自身のために強くなるなら、これが1番と思ってたから。」
この場においてマリュカスはマルグリットを遥かに凌駕している。
「!!」
マリュカスは迷わず、弾かれた隙を逃さず、
『トネドラ』ごと斬り込んだ。
「があっ!!」
マルグリットの鎧だけが斬られ、そのまま壁まで吹き飛ぶ。
「がはっ!!」
「脆いね。やっぱり。」
「ぐっ。く、ぐそ!」
マルグリットは相手の強さに焦りを感じる。
「本当なら首を切る所だけど。
彼を悲しませたくない。
それに殺したら負けだしね。」
「サイハデン闇流 『夜』」
黒き一撃がマルグリットを襲う。
マルグリットへ得体の知れない闇が迫り来る。
「ぐぅ!!ぉぉぉぉぉぉぉ!」
槍で攻撃を防ごうとするが、『トネドラ』がその衝撃に崩れていく。
「チッ!『神装』を無効にすんのかよっ!」
「もちろん。だって、力は力でしか制せない。
なら、彼のために与えられた力を上手く生かさないと。」
マルグリットはそのまま攻撃に押し潰されてしまった。
「大丈夫!!マルグリットは!?」
「落ち着いて下さい。ご主人様。」
「そうよ。アイツは殺さないって言ってた。」
言ってたって。お前ら冷静過ぎんだろ。
俺も冷静だが。
自分の大切な人がこうもあっさりやられるのは気分が良くない。
『珍しく感情的ですね。』
『抱いた女だからじゃね?』
割と冗談に付き合ってられるほど、落ち着いてはいない方だ。
「セレスト。」
「はい。戦闘不能になった者はこちらで回収し、即時に治癒を行います。」
流石はセレストだ。言わずとも解っている。
「ご主人様。怖い顔をなさらず。
どうか、皆を見守って下さい。」
ウルリカが俺に優しく手を添える。
やはり、母親は強い。
俺のような子供の事は手に取るように解ってくれる。
そして、歩み寄る。
「ありがとう。ウルリカ。」
ウルリカは頬を赤らめる。
後でもう一度抱いておこう。
『その一言でいつものマスターになりましたね。』
『つーか、いつのまに子持ちの女を抱いていたんだ?』
うるせー。色々とうるせー。
「ふう。」
「お疲れ様。」
「ありがとう。案外強いね。
キャスト君のお仲間は。」
「ここまでの英雄揃いだ。
そう簡単にはいかないだろうに。」
「そう簡単にはいかないのは確かだ。」
マリュカスは気付いていた。
テュナたちはその存在を感知できていなかった。
「あら?よくもまあ、ここまでやってくれますね。」
「人のことを言えるの?」
「お前が差し向けた雑魚と一緒にするな。」
「貴女意外と仲間思いね。」
「ふざけろ。私がこいつらを殺す。
勝手に死にかけてもらっても困るだけだ。」
アリシアは本音を素直に言った。
仲間とは思っていない。
しかし、それでも今を生きるのに必要な力である事を認識している。
「クラウディア、クロエ。取り巻きをやれ。」
「はっ!」
「指図されるのは嫌ですが。
まあ、貴女が相手をするのが道理ですね。」
クロエとクラウディアは二手に分かれた。
クラウディアはツンツン金髪とピンクツインテール、クロエはテュナへ的を絞った。
「それでメインディッシュがお相手なの?」
「そういう事になるな。」
「そう。ミレルミアは来ないの?」
「何だ?アイツの方が好みなのか?」
「違うよ。アイツと貴女を殺したいだけ。」
「本性が見えるぞ。化け物。」
「そう?ありがとう。怪物。」
その瞬間、お互いの刀が交差する。
「黒刀か。それと黒鎧か。」
「ええ。名前が『鋼』。鎧が『漆黒の栄光』って言うの。
どれもキャスト君が付けてくれたの。」
「ほう?なら叩き折りにくいな。」
キンっと、マリュカスを吹き飛ばし、再び距離を詰める。
またしても、お互いの刃が交差する。
「流派の使い手か。」
「貴女もでしょ?」
「そうだな。ただ、流派は飾りだ。」
「あら、私はそのものよ?」
そして、刀を再度弾く。
「『気斬』」
「サイハデン流『星屑』」
隕石のような鋭い練撃と光のような一閃が打つかり合う。
周りの地面が抉れる。
しかし、お互いは無傷である。
「へえ。流派を使わないの?」
「流派など飾りだ。同じ事を言わせるな。」
今度はお互い休む事なく、斬り合いを始める。
「ハァ!!」
「よっと!」
「あぶなっ!」
クラウディアはツンツンの金髪少女とピンクツインテールを相手にしている。
クラウディアの強力な一撃は難なく避けられる。
「おいおい、それハンマーか何か?」
「確かにっ。剣の一撃じゃない。」
クラウディアは剣で砂煙を払い除ける。
「当たり前だ。剣であり剣であらず。
私がアリシア様と同じ道を歩くことは無い。
私が2番手になるため、自身を今一度見つめ直す必要があるからな。」
「何語ってんだ?」
「だる。
あんなのが居るって窮屈じゃないのかな?」
「お前らには解らんだろうな。」
「ふーーん。どうでも良いや。」
「そうね。」
クラウディアは決して油断をしていない。
さっきから会話をしながら相手の隙を窺っていたが、一切その素振りを見せない。
「私はヤエ。」
ツンツンの金髪少女はそう名乗る。
「急じゃない。まあいいけど。
私はサテュラって言うの。」
「そうか。自己紹介はできるんだな。」
「バカにすんな!」
「ヤエ。挑発に乗らないの。
相手は崇高な騎士様って訳じゃないの。」
今までのクラウディアとは大きく変わっている。
泥臭く、勝利への執念を忘れない。
前回の酷い失態で、本人は自殺するレベルで病みかけていた。
しかし、アリシアからお仕置きを受ける事で再び再起した。
「(この痛みが私の成長を促している。)」
結局の所、信者切り離し作戦は失敗していた。
というより、より酷くなっている。
「何だ?何か寒気がする。」
「?お身体をお大事になさって下さい。」
ヴェルディが暖め用の毛布を掛けて下さる。
「ありがとう。」
「それにしても、あの強さは・・・・」
セレストの疑問通りだ。
マリュカスのあの強さは異常だ。
シアの『気』と身体能力に付いてきている。
「一体何したらあんなに強くなんだ?」
『改造とか?』
正義のヒーローか。
『マスターが何か余計な事をしたんでしょう。』
何その「またお前のせいか」みたいな感じ!
「んん!別に鑑定ができる訳でもないしな。
それに無くてもおおよそは予想はできる。」
「英雄レベルのスキルですか。」
「ウルリカの言う通りでもあるが、世の中は広いからね。
まさか、自分と同じスキルを持つ奴が居るなんて思いもしないわな。」
『まさか、ですね。』
『あ?あ?何何?』
そのまさかよ。
ユニークというか、英雄よりすごく稀なスキル『基礎成長』をね。
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