第216話 英雄VS英雄 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」


 英雄同士がぶつかり合う。


 観客、戦っている者、他のギルドマスターたちもその光景を固唾を飲んで見守る。


「死ね!!」


「お前が死ね!」


 時々出る、子供レベルの暴言も聞こえる。


「いや、小学生かっ!」


『それ言って解る人は早々いませんよ。』


『あ?ショウガクセイって何だ?』





 アリシア


「っ!」


 相手の居合返しに居合で返す。


「ならっ!」


 マリュカスは返された居合からもう一度距離を取り、再び縮地で距離を詰めた。


「サイハデン流『虚空』」


 次元をも裂く抜刀である。

 しかし、アリシアは真正面から受け止めた。


「!!」


「今度はこちらからだ。」


 刀に気を強めに流す。


「アサギリ流 七ノ型 『流水』」


 相手の刀を受け流すよに滑らせ、相手の身体をこちらへ引き寄せる。


 力流しの応用である。


「へえ!攻撃の型ばかりと思った!」


 マリュカスの体勢が崩れた所にアリシア刃が迫り来る。

 しかし、崩れながらも紙一重で避けた。


 だが、頬に斬れ跡が入る。


「ほう。やるな。」


 アリシアの頬にも傷が入る。


 実は崩れながら避けつつ、隙間から刀を入れ込んで攻撃をしていた。


 アリシアもまた紙一重で避けていた。


「乙女の顔よ。少しは気を遣って。」


「なら私もそうだ。特にこの日焼け肌は主様にとって、とてもとても貴重で大切な肌だ。

 いつも手入れもしているし。」


 すると、会場全体が1番上の席にいるギルドマスター見た。


「やっ、やめろっ!観るな!

 見せもんじゃなかと!」


 キャストの趣味が世間に露呈してしまった。





「恥ずかっ!何で見られんねん!

 ってか、戦いの最中にとんでもないカミングアウトしてんじゃねえーし!」


「お、落ち着いて下さい。ご主人様。」


 ヴェルディやウルリカは何か気まづそう。

 ライカはキモキモビームを目から放っている。

 セレストは何も知らぬフリをしている。


「何故戦っていない俺がダメージ量エグいんだよ。」


「お気になさらずとも良いかと。

 それに、キャスト様の好みは我々にとっても良いお話です。」


 セレストが落ち着けと言わんばかりに紅茶を注いでくれている。


「ありがとう。確かに趣味が偏ってるとは言われる。

 しかし、どれも好きですよ?間違いありません!」


「それはそれでキモいわよ。」


 ライカさんは何してもダメそうだ。


『気にしなくてもいいんじゃね?

 実際、何でも食べるだろ?』


 人を雑食みたいに言うなし。


『例の黒い生物と変わらないですね。』


 もう色々と酷い事になってんよ!


 身内には趣味を暴露され、世間には知られるわ、周辺には気を遣われるわ、剣にはディスられるわで、俺の精神はもう限界を迎えている。





 クロエ


「な、何っ!・・・・」


 クロエはかなり落ち込んだ。


 戦いの最中だが、四つん這いになりながら暗い感じになる。


 流石の敵でもあるテュナは攻撃を止めてしまう。


「急ね。」


「当たり前だ。お館様にそのような好みがっ!

 いや!そんな事よりもだ!

 1番許せないのが、それを知っていたアリシアだ!

 最近はロキリアの奴も・・・・!くそッ!」


 地面を思いっきり殴っている。

 地面にクレーターができる。


「ば、馬鹿力ね。」


「畜生!畜生!アイツら・・・・!」


 何故かクロエに本気スイッチが入った。


「!!こ、これは!」


 クロエ本来の姿である黒龍形態へと変わる。





「うーん。ジリ貧ね。」


「・・・・・」


 アリシアとマリュカスは膠着状態に入った。


「!!」


 アリシアは唐突に後ろへ避ける。

 頭上から黒いビームが放たれていた。


 立っていた場所は焼け野原になった。


「あのバカが!」


「わあ。」


 黒き龍が天に姿を現す。


「キサマ!コロス!」


「はあ。誰が味方で敵なのか・・・・元々全員敵か。」


「処理の仕方がおかしくない?」


 マリュカスですら疑問を抱いた。


「マリュ。ごめん。抑えられなかった。」


 テュナがボロボロの姿で現れた。


「テュナ。無事だったの。良かった。」


 テュナはボロボロのローブを脱ぎ捨て。


「ごめんなさい。あの黒龍を抑えるのに、私には難しかったみたい。」


「いいよ。あんなの他の人にも無理だから。」


 目の前にいる黒龍は暴れていた。

 敵味方関係なく攻撃している。


「バカトカゲがっ!」


 アリシアは毒づきながら、黒龍から放たれるビームを弾き返す。


「アリシア様っ!」


「よそみ」


「すんな!」


 クラウディアは迫り来る2本の剣を仰け反り避ける。


「マジか。」


「これ避けるって。未来予知かよっ!」


 クラウディアはすぐさまに態勢を立て直し。


「どけっ!」


『気』で固めた剣で斬撃を放つ。


「やばっ!」


「これは受け止めたらダメだ!」


 サテュラとヤエは辛うじて避けた。


「隙ありだな。」


「「!!」」


 ギリギリで避けた2人の間には、クラウディアがいつのまにかいた。


 クラウディアが斬撃を放った後、避けられるのを前提に『気』を込めた縮地で2人へ近づいていた。


 そして、クラウディアは剣を手放し。

 左右の手を2人の脇腹へ添える。


「『発勁打掌』!」


 ゼロ距離から放たれる『気』を流す奥義が発動する。

 ガードする術も無く、内功が練られている訳でもない2人は衝撃をそのままくらい吹き飛ぶ。


「ぎぃ!」


「ぐはっ!!」


 壁へ激突し、倒れた。


「がはっ!!」


「ごふっ!ゴホッ!ゴホッ!」


 2人は口から大量に血を流している。

 内からダメージが凄まじかった。

 その2人は立ち上がれず。


「ふぅ。剣よりは使い慣れてきたな。」


 倒れ伏している2人を見る事もなく、アリシアの下へと加勢へ向う。





「どけっ!バカ女!」


「お前がどけっ!!」


 何故か仲間内でぶつかり合っている。


「なら、こっちも隙アリって感じだね。」


 マリュカスもそこへ参戦する。

 三つ巴の決戦と化す。


「チッ!」


 マリュカスの攻撃を刀で防ぎ、クロエの漆黒の突風を『イージス』で防ぐ。

 マリュカスは2人から距離を離し、避ける。


「クソが。」


 アリシアはアイテムボックスから別の刀を取り出す。

 そして、抜いた刀の色は一切の澱みが無い、綺麗な刀だ。

 あらゆる魔法を断ち切るアサギリ家の家宝『魔我莵』である。


 その刀と自身の気を重ね合わせる。


「『魔封殺』!!」


「!!」


「!!!」


 迫り来る2人へ斬撃を放つ。


 2人は防ごうとしたが、あらゆる魔法を断ち切るため直撃は防げるが、余波を受けてしまう。


 マリュカスは特に『気』が使えない。

 そのため、気による攻撃耐性が付いていない。


 そんな、マリュカスの足下が揺らいだ。


「しまっ!!」


「『千殺斬』!!」


 アリシアはそんな隙を見逃さず、無数の刃をマリュカスへ放つ。


 マリュカスはその剣技を受けてしまう。


「くっっっっっっっっ!!!」


 身体が一気にボロボロとなり、あらゆる箇所から血が垂れる。


「回復もし辛い・・・・か。」


「ほう。これで生きているか。」


 互いに睨み合う。

 しかし、優勢なのはアリシアだ。


「クロエ様!!およし下さい!!」


 クラウディアが辿り着く。


「マリュ!!」


 テュナと同時に着く。


「クラウディア。遅過ぎだ。」


「申し訳ありません。」


「主様の顔に泥を塗るつもりか?」


「申し訳ありません!」


「何言ってんだか。」


 そんなアホなやり取りを見てか、クロエはやる気を失くしていた。

 龍形態を解除し、人型へと戻る。


「はあ。馬鹿馬鹿しい。」


『魔我莵』の余波を受けていたが、『気』を完全にコントロールしていたため無傷であった。


 武器の黒い鉄扇を開き、口元を隠す。


「ま、負けられない。」


 マリュカスは立ち上がる。


「ほう。見上げた根性だな。」


 マリュカスは『神装』と「聖剣」を同時に発動させた。


 そして、空が二つに割れた。

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