第213話 捨てた城!?

「旗持ってんのか!?」


「逆転の発想ですね。流石はクロエ様です。」


 逆転ってかね。奇策ではあるよ。

 ただ、エインが何処まで保つかによるな。


 普通は隠すか、取り難い位置に置くのがベストだ。

 しかし、人数の不利もある中、城の中まで把握している可能性もある。


「なら、弱点を抱えればいいか。

 下手に奥手になるより、見える位置にいた方が良い。」













「フンっ!」


 センキの馬鹿力でハンマーを振り抜く。


 敵は飛ばされ、地面は抉られる。


「鬼の力は危険だ!離れろ!遠距離魔法だ!」


「『鬼火!』」


 センキの特殊魔法の炎を相手に放つ。

 青く純度の高い炎は相手を戦闘不能になるまで焼き尽くす。


「加減はした。」


 何人かに火が燃え移り、消せぬ炎にパニックとなる。

 叫び声、悲鳴、慌しく戦況を荒らしていく。


「ブイ。」


 何故か、センキはピースをした。


「センキ。気合が入ってるね。」


 上からロキが話しかける。


「進化したのに、役に立てなかった。」


「そう。それはご愁傷様ね。」


「む。ロキロキは良いな。主人殿と一緒だ。」


「フッ。当たり前だ。キャスト様の1番を獲るのだ。

 身なりは勿論だが、知恵や力も備えておくのが普通だ。」


 そんなロキは空中に浮いているためか、遠距離攻撃の的になっている。

 しかし、カウンター魔法『リフレクター』の前に、何をも通さない。


 ロキの魔法はオリジン魔法と言われている。

 魔王の力にプラス、自身の思想をオリジナルの教典として作り上げた。


「サラほどのスキルは無いが、私はこれでも魔法が得意だからな。

 闇でも無い、私の特殊魔法を受けるといい。

『アトミック』。」


 指をパッチンと鳴らすと、次元が裂け、上から無数の隕石が落下する。


「な、なんじゃありゃぁあぁぁあ!!」


 いくつもの流星群が降り注ぐ。


「おっと。やり過ぎたか?」


 ロキに向かって、敵の男が投げ飛ばされる

『リフレクター』に当たり、投げた方向を横目で見る。


「お前さん!妾たちまで巻き込む気か!」


 更にアルマはロキへ隕石を投げつける。

 実は隕石の被害者であった。


「生きていたのか?しぶとい。」


「ほう。若造魔王如きが、喧嘩を売るか?」


 アルマとロキは一触即発ムードになる。


「余所見とはっ!」


「「してない(のう)!」」


 息ぴったりの魔王の魔法攻撃と龍の物理攻撃が噛み合わさった。

 他の敵陣をまとめて吹き飛ばす。





「息ぴったりね。似た物同士って事ね。」


 ナタリアは静かに弓で援護している。

 アズドラも同じく。


「我々も似ていますよ。

 こうやって、陰ながらサポートしている訳ですから。」


「これくらいしかできないわよ。

 ギルドの攻城戦とは言え、障害物らしい障害物もない。

 ハイネたちのように目立って攻撃をする訳にもいかないし。」


「下手に目立つより、サポートに徹するのが1番ですか。ナタリアらしい。」


「そう?ありがとう。

 ちゃんと、ご主人様が見てくれるのを知っているからよ。

 だから、この役割でも満足しているの。」


 そしてまた弓を放つ。

 ただ、黙々と静かに弓を放つ。


 この地味な役割が、彼女たちのような存在がギルドを下から支えてくれている。

 キャスト自身、社会経験からそれをしっかりと理解している。





「そろそろか。」


「はっ!予想通り、我々の陣営が敵を押しております。

 ただ、ここまで勢いが強いとは・・・」


「でしょうね。彼女たちなりにも思う事があったというもの。

 私自身もお館様の件が絡まない以上、どうでもよかったのですが。」


 城の前にはアリシア、クラウディア、クロエが待機している。


「これ、私要らないのでは?」


「間違いはないかと。」


「バカか。お館様に頼まれたのだろ?

 なら必要だという事だ。」


「そうだな。

 主様に言われたのならそうだな。」


 キャストの事になると、考えるのを止めるアリシア。


「安直か・・・・」


「んん。とは言えど、敵の上位人はマルグリット、セイラン様で当たられるので?」


「妥当か。

 いや、セイラン様には少々荷が重いか?」


「可能性は高い。

 がしかし、セイラン様の志望でもある。

 お館様のお姉様だからな。私の義妹も同然です。

 ならば、家族としてその主張を通すのも優しさです。

 いざとなれば、私が駆けつければいいことですし。」


 クロエのちゃっかりにアリシアは反応する。


「主様の義父様にすらご挨拶をしていないのに、家族を名乗るとは早計だ。」


「あら?別日で会いに行けますけど?

 何故なら、マートンが警備や物資をエンバイス領とやり取りしていますし。

 代表としてご挨拶に参るぐらいは難しくもありませんよ。」


 謎の火花が散っている。

 ここまた1つの戦場であった。


 その様子をクラウディアはため息を吐きながら、他の戦場へと目を配る。





「うおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」


 エインはただひたすらに走る。

 どれだけ、身体が丈夫で問題無くとも旗は違う。

 取られる可能性を少しでも除去するため戦場をただ走る。


「エイン!飛び出し過ぎ!」


 アイン、ホムラ、ワイト、アルツメインはエインを守護のため共にいる。


「アインさん!エイン君の下へ!」


 ワイトが迫り来る敵を幻術魔法と短剣捌きで食い止める。


「ワイトさん。お一人では厳しいかと。

 私もここを死守します。」


「アルツメインさん。助かります。」


 アルツメインは縦と剣を扱う戦士であり、攻めと守りを両方こなす戦い方である。


「なら、私の曲芸と幻影で敵を拡散しましょう!」


 ワイトは幻の霧を発生させる。

 ピエロとして敵の上を器用に渡り歩く。

 そして、ナイフを投擲し、相手の足を封じていく。


 その隙にアルツメインが動けない相手を強襲し、少しずつエインの追手を減らす。


「・・・・・やるわね。」


 ホムラはアインとエインを横にひっそりとサポートしている。

 基本的に忍びとして目立たぬように動く。


「ホムラさん!」


「解っている!」


 エインの周囲に近寄らせないよう、火遁の術を撒き散らす。


「行けっ!」


「はい!ありがとうございます!」


 アインは再び走るエインの元へと向かう。


「ここが要だな。

 仮の城を捨てたからか、人数が少ないからか。

 詳しくは何とも。不利な状況下ではあるな。」


 ホムラは迫り来る敵へ炎の小刀を構えた。





 キャスト


「うひょ。やっぱ、戦い方が凄いな。

 あの弱点剥き出しの感じ。」


「申し訳ありません。

 お見苦しい戦いではありますね。」


「いや、別に・・・・」


 急に謝るヴェルディさん。

 謝られても困る。怒ってないし。


「けど、これって大丈夫なの?

 アンタ的には絶対に取りたくない手法じゃない?」


「ライカの言う通りだ。

 リスクが高いやり方はなかなか褒められたもんじゃない。

 ただ、今回の条件とハンデ、そして異様に相手の方が規定数より人数が多い件を考慮するに。」


 俺はこの戦いが始まってから不自然さを感じた。

 上から見ると解るが、敵の城から出てくる人数が異常に多い。

 それに、未だ主力の影が見えない。


「確実に組合本部が一枚噛んでるな。」


「嫌われ者ですね。」


『新人がいきなり高騰してますから。』


『分かりづらい。

 バカでも解るように説明してくれ。』


 そうだ!そうだ!


『はあ。要は、新人ギルドでただ伸びしろがあるのは良いですが。

 目立つメンバー、やってきた偉業の数々です。

 世間対的には敬う人こそ数多かれど、逆に恨む者や快く思わない者も多数います。』


 相手のマリュカスは何かしら俺との関係があるようで、そこを焚き付けられていたか。

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