第212話 始まる運命
何十人か、夜のお約束をした所です。
『南無。』
『強く生きろよ。』
武器にまで見捨てられる始末です。
そんな事は他所に置いといて。
「俺たちは何処で観戦すんの?」
「ご主人様は王族を超えし神です。
そこいらの輩と共にいるのは不自然かと。」
「キャスト様。我々の方で特等席をご用意致しました。」
凄く嫌な予感がする。
セレスト、ヴェルディの執事長とメイド長コンビはしっかり信仰しているようで。
ウルリカとライカがさっきから顔を背けている。
まさか・・・・・な。
「んな事だとは思ったよ。」
観客どころか、ギルド戦の建物すら見下ろすレベルだ。
その下に各国の王族やギルド関係者たちが参列している。
何してんねん。
ただでさえ、下からの視線が刺さる。
『恥ずかし死にますね。』
『ダサいな。』
そういう病が誕生しそうだよ。
「素晴らしい景色ですね。」
「素晴らし過ぎだろ。」
「ちょっと恥ずかしいわね。コレ。」
ライカの言う通りだ。
知らんおっさんたちがコチラを見てるし。
王国、法国、龍国は知っている。
聖王国は最近関係性が確立された。
「挨拶した方がいいのかな。」
「よろしいかと。下々の奴らはご自身で挨拶に来られるのが当たり前かと。」
何処まで本気で言ってんの?
『全部かと。』
オーマイ、ゴッデス!
「貴方様。わ、私も少し気恥ずかしいです。」
ウルリカさんが耳元で囁いている。
背中越しに確かな胸の感触が。
「何鼻伸ばしてんだ!変態がっ!」
ライカに脛をゲシゲシされる。
「人聞が悪い娘だ。
ヤキモチも困ったものだ。」
「こ、殺す!アンタを殺して私も死ぬ!」
こんなコントじみた光景ですら注目される。
「ウフフ。仲が良いですね。」
「よくない!もう!母さん・・・・・」
ライカはライカで気まずい上に、更に恥ずかしそうにしている。
「キャスト様。そろそろ開始かと。」
セレストの一言で戦い場へと視線を移す。
この一戦は色々と存亡が掛かっている。
頼むます!
「では、これよりギルド対抗戦『レギオン』を開始する!!
ルールは殺害以外は有効とする!
ギルド旗を取るか、全員を戦闘不能にするかのどちらかで勝敗を決める!
では、各々準備を!」
各々のギルドは配置へと着く前に。
「人数はコチラが不利です。
なので、やる事は1つです。」
クロエが地図を魔法で形成し、敵城周辺と攻め方を解説する。
「いいですか?城の形は変わりません。
ギルドの手配したものです。
ですが、小細工はされています。
今回は『ブリゲイド』とギルド本部がグルになっています。
何故こうなったか、予想はつきます。
ですが、今はいいでしょう。」
「状況は理解した。
で、どう速攻で片を着ける?」
アリシアは本題を早く言えと促す。
「あくまで、数的不利に小細工付き。
そして、これだけの人の目です。
力を見せ過ぎず、敵を制圧する必要がある。
なので、我らの旗はこの際、持ち運び、城を見捨てます。
ルール上問題はありません。
ただ、狙い撃ちに遭うだけです。」
旗は基本的に1番上か、中で隠して守護するのが順当な戦い方である。
しかし、今回は弱点を剥き出しにする事で、敵を一気に引きつけ、全敵の殲滅を真っ向から図ろうとしている。
「そうか。なら、エイン。お前が旗持ちだ。」
「あ、アリシアさん!マジで!?」
「しくじったのだろう?
なら、ここが挽回どきだ。」
アリシアにそう言われてしまったエインに、最早考える術などはない。
「分かったぜ。承った!親父に見せてやんぜ!」
「エイン。無理はしないで。」
「姉ちゃん。任せろ!
その代わり、皆んな頼む!」
「子供に重荷を背負わせるのは反対だが、エイン君ほど適任もおらず。
なら、私は彼を護衛します。」
ワイトはエインの護衛を買って出た。
「ピエロに護衛が務まるのか?」
「バカか?脳みそまで肉で詰まっているのか?
キャスト様のギルドに不必要な奴はいない。」
ヘルガーは喧嘩を売りながらも正しく答えた。
「最近見ない砂野郎には負ける。
だが、言いたい事は分かる。
ならば、頼んだぞ。ワイト。」
ワイトはぺこりとお辞儀を返す。
「アインは偵察、情報収集をしてください。
そのサポートでナタリア。」
「はーい。」
「分かりました。クロエさん。」
「そして魔法組は、とにかく遠距離からぶつけて下さい。」
「了解。僕も今回は魔法組だしね。」
「私も頑張りまっす!フンフン!」
「ハイネちゃん。落ち着いて。」
「ここは魔女としての見せ所ね。」
グレース、ハイネ、ルシファル、ミレルマナは魔法遠距離隊である。
「撹乱としてアズドラ、リリーア、ホムラ、ミレルミアで動いて下さい。」
「私も無様を晒したわ。
ギルドのメンバーとしても、早々に無くなられても困るし。」
「ここはホームだ。私の旦那様の帰る場所はこの命を懸けて守る!」
「ええ。ミレルミアの言う通りだ。」
「うようよと。
まあ、言ってる事は理解した。」
「そして、残りは前線へ。アリシアは大将を狙いなさい。
ヘルガー、マルグリット、ロキ、センキは道を開けなさい。
私は旗を狙います。
空や地上の両方から攻められる分、動きの自由性がありますから。」
クロエは龍形態と人化と共に扱えるため、いざという時の切り札になる。
「へっ。全員ぶっ殺してやんよ!」
「バカか。殺したら負けるだろうが。」
「ヘルガー。珍しく冷静だ。」
「潰すぞ!バカ鬼!」
ヘルガーとセンキは更に仲が良くなっている。
「俺とアルトリオは何人斬り伏せられるか。だな。」
「あまり争い過ぎてもだけど。
このいただいた魔道具の借りはしっかりと返さないとね。
それに、今後の働き先ぐらい守らないと。」
アルマはクロエの元へ。
「妾は位置特定かの?」
「当たり前だ。お前ほど適任はいない。」
「そうカッカせんでのお。
妾も守るために戦うからの。」
アルマとクロエは未だに歪みあっているが、今この時はお互い力を合わせようとしている。
「アリシア様。前回の失態を償わせて頂ければかと。」
「クラウディア。主様のお側で直命で付いた筈だが、おめおめと何もできずにいた件か。
罰は以前与えた。
なら、後の言う事は分かるな?仮にも私の右腕だ。」
「はっ!必ずや成果を上げて見せます!」
クラウディアは鞭打ちの刑、数日の断食、キャストとの視野内に入らない罰?を受けていた。
その傷は今も癒していない。
戒めとして。
「作戦などない。各々やりたい事をやれば良い。
命令しても動かんだろうしな。」
「アリシアの言う通りだ。
チーム制など皆無なら無くて良い。
だが、役割は忘れるなよ?
お館様の命運を握るのだ。」
全員は理解している。
例え、チームとしての団結力が無かろうと、キャストについては同じ考えを持っている。
「ではっ!試合開始!!」
コールが入る。
周りの観客や王族たちが熱狂を上げ、その戦いを凝視し始める。
「始まったか。どうでるよ。」
「作戦はという作戦は無いかと。」
「よく考えればアイツらは作戦とか連携よりは、個人の怠慢主義の方が光るか。」
『戦いの中で無自覚に相手の力量を理解しちまってんのか。
並大抵じゃあできんぞ。』
『であるなら、彼女たちなら問題ないかと。』
メビウスの言う通りだ。
アイツらほど他人を蹴落とす努力はしていない。
それぐらい、相手の事をリサーチをしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます