第163話 コンディションチェック

 3人と別れてから早歩きで、噂の喧嘩先に向かっていた。


 あ、ハイネが怒っている。ん?ハイネ?

 意外だ・・・あ、ナタリアもキレてる。


「オイオイ。お前ら何しとんねん。」


『屋台のおっちゃんですよ。』


 うるさい。


「あ、ご主人様!じゃなくて・・キャスト様!」


 何故呼び方を変えた?


『露骨ですから。』


 アレか?恋人から嫁に上がるため的な。

 悪くないのぉ。


『自意識過剰乙。』


 なんか、中国語みたいになっとるがな。


「きたわね!ちょっとあなた!同胞がこんなにいるなんて聞いてないわよ!」


「何がやねん。」


 大阪のおっちゃんになってしまった。

 あまりにも唐突過ぎて。


「キャスト様。説明したんですけど、奴隷でも何でも無いって。

 それに、法国には帰らないと。」


 ああなるほどな。法国の民としてって奴か。

 後は、エルフは閉鎖的だからな。

 つまりは奴隷か何かでも思ったんだろうよ。


「奴隷では無いぞ。」


「そこは理解しています!

 そうではなく!何故王国に!それも法国出身じゃない!」


「法国じゃないといけない理由でもあるのか?」


「それは法国が他種族との交流を禁止しているのよ。

 私たちの虐げられた歴史があるから。

 それなのに・・・いいえ。そんな事より、何故シルフィード様を裏切るの!?」


 誰やねん。


「ご主人様。シルフィードはね。王様なの。」


 ナタリアさん。バリ呼び捨て。


「あなたね!シルフィード様は常にエルフのためを考えられているお方よ。

 皆が彼を慕い、彼と共にあるべきなのよ!」


 法国は洗脳国家か何かか?

 ヒ◯ラーの再来か?


『似たようなものですね。』


 それ俺じゃないよね?


「だからっ!昔はそんな話を聞きましたけど、今はキャスト様なんですって!」


「そうですわよっ!皆、キャスト様にお仕えすべく集まった同志ですわよ!」


 カルバーナ。久々に見た。

 変わらず安心したよ。


『どこ見てんだ?』


 どこって、アレよ。胸部よ。


『胸って言えよ。』


 相変わらず、断崖絶壁だな。


『刺し違えてでも殺しにきますよ。』


「今だろうと昔だろうと知らないが。

 俺たちはギルマスの下に集まった。」


 エルフのイケメンズや。眩し過ぎて目が潰れる。


「アズドラさん。ありがとう。」


「ハイネが謝る事じゃない。気にするな。」


「かっこいいわね。ご主人様の次に。」


 おいやめろ。ナタリア。

 その表現ガチで言ってんなら俺傷つくよ。


『イケメンと天秤にかけられるとは。

 心中お察しします。』


 面白がってんじゃねえ。


「貴方たち・・・・もう知りません!」


 プリプリしながらバーディスは去って行った。


 アイツ何で付いてきたんだ。


『貴方の胸に聞いてみて下さい。』


「騒がしい奴だな。なあ?アズドラ。」


「ガッシュか。そうだな。

 それに、あの国に未練など無い。

 俺たちもそうだが、ここにいる奴らは少なくとも、皆ギルマスのキャスト様を慕っている。」


 俺がアンタらに何したんよ。

 心当たりが無さ過ぎて怖い。


「キャスト様。お見苦しいところをお見せしてしまい、誠に申し訳ありませんわ。」


「気にすんな。トラブルがあったとは聞いていたが、ハイネたちがしっかりしていたからな。

 無駄足だったかな。」


「え、えへへへ。」


 こ、コイツも変わんねえな。


『褒められるとすぐに調子に乗るタイプです。

 マスターと同じですね。』


 失敬な!俺、そんなんじゃないし!


「ご主人様。久しぶりね。お姉さん。寂しかったよ。」


「なら来なさい。抱きしめて上げよう。」


「何しとんじゃ!」


 魔法のハリセンで叩かれた。


「痛いじゃないか。」


「ハイネ。そんな魔法を習得していたのね。」


「流石はハイネ様ですわ。

 キャスト様とのやり取りのための魔法ですものね。」


 ハイネはあわあわと赤くなったが。

 一言だけ言わせてくれ。

 このためのハリセンって事?


『でしょうね。』


 何の努力してんねん!!

 あ、逆に俺突っ込んじゃったよ。


「ハイネは嫉妬深さは変わらないのね。」


「ハッハッハッハー!

 我らの頭はそうでなくてはな!」


「うるさいぞ。筋肉。」


「それは褒め言葉だぜ!」


 うるさ。

 アズドラもイケメンがイケメン過ぎる。

 最早自分でも何言ってんのかわからん。


「キャスト様。今回は私たちの活躍を期待して下さいね!」


「ああ勿論だ。それに、何やかんや初めてだな。

 改めて、よろしく頼むよ。」


「ご主人様。少し大人になったわね。」


「あたぼうよ。

 いつまでも、ガキのままではおられんよ。」


「話し方が相変わらず変ですけどね。」


「ハイネに言われたら終いよ。」


「なっ!!」


 ハイネはムキーとすぐに高血圧になる。

 感情が豊かと言えばいいのか。


「とはいえど。実際に母国だ。

 これから何が起こるかは、薄々は勘づいてはいるだろう。

 だから、しっかりと家族には会っておけ。

 後悔や未練は残すなよ。

 少しでもあるなら帰っても大丈夫だ。

 これは嫌味じゃない。」


 家は大事だ。大切な人もな。

 自分がいれば何て考えるしな。


『セイラン様の件ですね。』


 そうだ。

 後、少し早ければ。何て事も考えた。

 情報収集が緩かったとか、色々あるけどね。


「キャスト様!私はあなたのだ、第一・・お嫁さんです。」


 声ちっさ。

 最後なんて恥ずかし過ぎて小さいどころか、聞き取れるか怪しいぞ。


「緊張してますね。」


「自分で言っといてか。」


「もう。ハイネったら。」


 皆んな微笑みながらも、おっちょこちょいなボスを見守ってくれている。


 何だ。いいじゃん。


「はいはい。じゃあ、1番嫁に期待するよ。」


「あら。妬けるわね。」


「な、ナタリアさんっ!」


「私もお嫁さんよね?

 既にセットでいただいて貰ったし。」


 あんまそういう事言わないで。

 人前とか恥ずかしい。

 ほら、ハイネなんて湯沸かし器みたいになってんよ。


 そんなこんなで、エルフたちとほっこりとした時間を過ごした。




「何とか治って良かったな。」


「左様ですね。」


「セレストは今回付いて来ないのか?」


「はい。この家でのお勤めが主なので。

 ご期待に添えず、申し訳ありません。」


「いいよ。それが仕事だ。

 ただ、里に家族やらいるんなら顔は出しとけよ。」


「そうですね。その時はそうさせていただきます。キャスト様のお話もしたいので。」


 すんな。余計に炎上するわ。


「次は・・・・大丈夫か?」


「多分かと。」


 次は獣人チームだ。


「よっす。」


 ノック無しに入ってみた。

 どうせ、野生の勘とかで気付いてる。


「あ、お父様!」


「親父!久々!」


 うーーーん。誰?コイツら?


『アイン様とエイン様です。』


 デカ過ぎじゃね?

 2人の身長は160を超えており、今まで子供だったサイズの面影はない。

 服も大人用になっている。


『チビ助さん的にはどうですか?

 獣人特有の急成長は?』


 面白いかっ!?おもろいか!?

 俺を嘲笑っておもろいか!


 もう病んでくる。エインはイケメンやし。

 俺150あるかな。


『多分ありますよ。』


 適当か。


「親父!どこで油売ってたんだよ!」


「どこも何も、お前らはどうメタモルフォーゼしてんだ?」


「メタモ・・何ですか?お父様。」


「もうパパの威厳は無いよ。

 君たちの身長からね。」


「あらまあ。そうやね。

 私たち獣人は急成長があるでありんすえ。」


 キュルキのキュルキさんはまだ成長すんのかな?


『急に元気になりますね。』


 お胸主義なんで。デカ胸党なんで。


『懐かし過ぎです。

 まだ廃党になって無いんですね。』


 永久不滅也!

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