第162話 決断

「失礼致します!クラウディア参りました!」


「お、きたきた。入っていいよー。」


 随分と長かった気がする。

 ま、別に良いけど。


 ガチャリと扉を開けてディアが入ってきた。


 ディアの姿は純白のドレスを着るお姉さんそのものであった。


『勝負服でしょうか。』


 ただの呼び出しでは?


「凄く似合ってるよ。」


「ありがとうございます!」


 これ大事。

 女性が決めてきたのなら褒める。

 しかし、いつも気付ける訳では無い。

 しょうがないの、人間だもの。


『自己完結しないで下さい。

 言ってる事は解りますが。』


「立ち話もなんだ。かけてくれ。」


「かしこまりました!失礼します!」


 随分と気合い入れて座るね。


 俺たちはソファーで向かい合うように座った。

 隣から優秀な執事のセレストさんがお茶をご用意してくれている。


「どうぞ。ハーブティーです。」


 ホクホクとティーカップから煙が出ている。

 てか、これより大きめのグラスとかがいい。


『庶民感ある方が性に合ってますから。』


 間違いない。


「ありがとう。セレスト。」


 執事は静かに一礼後、俺の近くで待機した。


「呼び出した案件だが、ディアには俺の側にいてほしい。」


『アホか。』


 あ、直球過ぎた。


「なっ!ななななななんと!!」


「あ、あのね。」


「よ、よろしいので!!」


「いやね。」


「そのような大役を私が!!」


 聞いてねえ。


『言語機能が時々バグるのは直した方がいいですよ。』


 俺もそう思った。


「ディア。いいかい?今回の法国のメンバーは既に決定したんだが、俺自身不安でね。

 そこでピンときたのがディアなんだ。

 だから、君1で俺の側にいてほしい。」


「なるほどなるほど。」


 2回言ったぞ。


「ですが、やはり私」


「いや。ディア1人で俺の側にいてくれないか?

 法国の任務時は俺から離れないでほしい。」


 ディアがいきなり立ち上がった。

 そして、机に手をつき、前のめりになった。


「本当に!よろしいので!そんなご褒美!ではなくて。

 そんな大役をこの私に!」


 ご褒美言うたぞ。

 セレストも流石に目を逸らしてんぞ。

 他のメイドも見て見ぬ振りしてんぞ。


『結構酷いものですね。』


 他人事かーい。


「ああ。君にお願いしたい。

 君も・・・大切な人だ。」


 危な。俺の女って言いかけた。

 普段から言い回しているからか。アブね。


「それを断る人はこのギルドにはおりません!

 是非、その大役をこの私に!!」


 俺の手を強く握り、答えてくれた。


 めちゃ痛え。俺より筋力あるし。

 ディアにすら負けた。グスン。


『どんどん周りが成長していきますね。』


 涙なしには見れないね。


『悔し涙だけにね。』


「よ、ようやく、私が・・・・はっ!

 こうしてはいられません!

 すぐに、支度をして参ります!!」


 ディアは急いで部屋を出て行ってしまった。


「・・・・これで良いのか?」


「何とも言えません。」


 多分大丈夫だよな?多分?


 出立前に不安の種を植え付けてしまった。




 クラウディア


 このような大役をいただけるとは。

 しかも私に。

 今まで頑張った甲斐がありました。


 私は上官である、アリシア様にご報告をしに執務室へと向かった。


「失礼致します。」


 ノック音を鳴らした。


「入れ。」


「はっ。」


 扉を開けて、執務室へと入った。


 アリシア様の執務室は、キャスト様の肖像画が多数と献上された武器と言った必要な物以外は何も置いていない。


 机の上には必要な書類に、ミニキャスト様銅像にキャスト様のお写真、キャスト君人形が置かれている。


「丁度良かった。クラウディアにも話があった。が、先にそちらから聞こう。

 なんでも、主様の直々にお呼び出しを受けたと聞いた。

 そちらの方が非常に重要な話だ。」


「はい。では失礼して。

 先ほどのお呼び出しの件は、キャスト様の直属護衛を依頼されました。」


「直属・・・か。そうか・・・」


 アリシア様・・・・


「そうか。では、その任務は命を賭けて遂行しなさい。」


 あれ?


「えーと。こう申し上げるのは失礼かと思いますが、よろしいので?」


「ああ。今回は私も思うところがあってな。

 勿論、主様に不満などと言ったバカな事は一切考えてはいない。

 そうではなくてだな。私自身の禊をしなくてはと。」


「先の件ですね。」


「ああ。あの呪物に気付かされたのは癪だが、アイツ自身、過去と目的のため1人でに変わってきた。

 私も例外では無い。忌々しいほど間違いを犯した過去がある。

 その精算をしなくてはいけない。」


「!!まさか!」


「そうだ。

 私は一度、聖王国へと精算をしに戻るつもりだ。」


「そ、それは・・・・よろしいので?」


「フフ。上官の心配は皆無か。」


「それはした方がよろしいので?」


「確かに無意味だ。

 部隊は当然だが、全軍を率いていく。

 何、戦争をする訳では無い。

 蹂躙はするが、相手の出方と私の内容次第だな。」


「エラルド様がお許しになるので?」


「許したよ。どういう風の吹き回しか知らないが。

 恐らくはクロエも絡んでいる。チッ。

 主様を狙うトカゲが。いつか串刺しに殺してやる。」


 しれっと恐ろしい事を口ずさむアリシアだ。


「聖王国の件、かしこまりました。

アリシア様の成功を心からお祈り申し上げます。」


「ありがとう。この件は最悪、国を潰してでも解決するつもりだ。

 本当に最悪の手立てだけどな。」




 キャスト


「ディアはちゃんと請け負ってくれたし、後はシアがどう動くかだな。」


 廊下をプラプラとセレストと歩いている。


「すまないね。

 適当にふらついているだけで。」


「お気になさらずともよろしいです。」


 本当、清々しいほどイケメンだね。

 ダークエルフにせよだけど、美男美女多くね?


『マスターもまあ、2.15枚目ですよ。』


 その0.15は何なの。

 後、地味にリアクションしづらい事を言うな。


「やほーー!キャスっち!」


「そのウザいノリはイザヨイか。」


「へへへ!ウザいっていうなしっ!」


「ご、ごめんね。キャスト君。忙しかった?」


「んいや。全く。」


「ん。良かった。」


 セレナ、イザヨイ、ニーフィアと学園女子メンバーに出会った。


「おや!?そちらのイケメンさんは!?」


 食い付くな。


「皆様、初めまして。キャスト様の執事をやらせていただいております。セレストと申します。」


「すげーー!キャスっち!イケメンも揃えてんだ!」


「そうだな。」


 何かリアクションすんのも疲れる。


「キャスト君もかっこいいよ!」


 うん。ありがとう。

 ニーフィアさん。それは余計な一言なんだよ。


「キャスト。落ち込まないで。」


 セレナは目が見えないのもあるが、感情や思考を読むのに必要な波長でも解るのか?


「ありがとう。

 ところで、こんなとこで何してんだ?」


「社会科見学じゃないけど、私は魔法を見させてもらったり、体験させてもらってたの。」


 ニーフィアは賢者だ。

 そっち系の方に興味があったか。


「アタシはここの隠密隊に興味があったぜ〜。」


 やっぱ忍びの一家なのか?


「私は冒険者と騎士の人たちと、剣技や技を教えてもらってた。

 時々、参加させてもらった。」


「お、セレナはそっちに行ったのか。

 皆んな割と思い思いに楽しんでだな。」


「ここは食事も一級品だよね。

 食堂でこれだけクオリティが高いのは凄い事だよ。」


「うん。王宮の食事かと思った。」


 実際、王宮勤めいたし。

 俺もメニュー開発に関わっている。

 これでも元飲食店店長や。


 料理やレシピは勉強してたんやで。


「あ、さっきさ、バーちんとここのエルフさんたちがあっちで何か喧嘩してたぜい。」


 どこでも迷惑か!アイツ!

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