第161話 法国の前準備 何か修羅場

 その後、争いは皆さんによって収められた。


 俺?無理無理。あん中入ったらマジで死ぬ。

 ビビってるぐらいが長生きしやすい。


『ただのクズ人間ですけどね。』


 痛烈なディスをどうも。


「はあ。疲れたな。

 今思えば、碌に休んで無いやん。

 車内はうるせーし。降りたら会議と乱闘騒動だしで。」


『やはり、自由時間が減りつつありますね。』


「確かに。」


「?キャスト様?如何されましたか?」


 セレストが近くにいたのを忘れていた。

 仕事専用の椅子でぼっーと考えていた。


「んいや。独り言よ。あ、ディアを呼んでよ。」


「かしこまりました。只今、手配致します。」


『例の作戦を実行されるので?』


 まあね。・・・・上手く行くかな。


『社長ですから、許されますよ。』


 それは一周回って怖い。


「キャスト様。クラウディア様がコチラに向かっているそうです。」


「クラウディアだけだよね・・・?」


「恐らく。とは言いたいです。」


 どうしてセットで届く事があんだよ。


『ハッピーセットですね。』




 クラウディア


「セレスト?どうしましたか?」


 私に突然『メッセージ』が入ってきた。


「はい。!!!キャスト様がお呼びですか!

 か、かしこまりました。

 すぐに準備でき次第、向かわせていただきます。」


 応答終了後、私は迷わずに行動を開始した。


 今現在、中庭でアリシア様の戦後処理をしておりました。

 ですが、呼び出しがかかった以上、何事においても最優先事項となる。


「モーリー。ここの指揮を任せます。」


「はっ!かしこまりました。クラウディア様。」


 モーリーはおかっぱ頭の男性騎士で、キャスト様を信仰する同志だ。


「クラウディア様?どうされましたか?」


「フェリシア。ああ、キャスト様にお呼び出しを受けてな。」


「何と!それはとても重要事項かと。

 アリシア様に報告は?」


「これから行うところだ。」


「それは失礼致しました。」


 私はすぐ様、アリシア様の下へと向かった。


「アリシア様!・・・・」


 ミレルミア様とメンチを切り合っていた。

 争いこそはしないが、今にも2回戦が始まりそうな雰囲気ではある。


「ほーら!2人ともそんな事してないの!」


 ミレルマナが止めていた。


「姉さん。私はコイツを殺すために力を付けました。」


「あのね・・・・その話はともかく、今はまだ使いこなせていないでしょうに。

 それに、『気』の力もそうでしょ?」


「くっ!・・・」


 ミレルミア様は負担が大きそうであった。

 我らのアリシア様は涼しげな顔で見下している。


「は!その程度で殺すか。笑わせるな。

 私はそんなにヤワではない!

 主様の下で全てを学び、全てを遂行する力と義務が私にはある。

 たかだか、少し力を付けた程度でつけ上がるなよ。」


 凄く捻くれています。

 そんなアリシア様も美しいです。

 昔はああでは無いですが、変わったのか。それとも、元々の本性なのか。


「っ!・・・他国から来ただけの泥棒猫が。

 元の婚約者のとこでも帰ってろ。

 幸せだったんだろ?」


「なっ!!!ぐっ!・・・」


 アリシア様は噛み締め過ぎたのでしょう。

 口元から血が垂れています。


 踏んでは行けないものは世の中、存在するものです。


「へぇ。その話は初知りだ。知りたいね〜?

 1位の騎・士・様?」


 ヘルガーまで来られた。


「それはそうだね。私も是非知りたい。

 同じく学園で護衛してきた仲だ。

 そんな恥知らずな過去があったなんて。」


 ロキ様まで来られた。

 続々とキャスト様を愛しておられる方々が集まってきた。


「これは・・・どうすべきでしょう。」


「アリシア様の過去は存じ上げませんが、よろしくない事態にはなりつつありますね。」


 アリシア様は苦しそうな顔付きです。

 過去の行い・・もとい、過ちが彼女を苦しめているのでしょう。


「そ、それは・・・・」


「そんな様子で1番を名乗るとはな。マヌケめ。」


「・・・・私は・・・昔は・・愚かだった。

 全てが上手くいっていたなどという、幻想に突き動かされていた。主様に出会うまでは。

 愚かだった私は悔いた。何度も何度も。」


「皆んな、確かに純粋に彼に惹かれた人もいる。そして、初が彼の人もいる。

 けど、それが正しい訳ではないわ。」


「そうですね。姉さんの言う通りですね。

 で・す・が、私は生まれてキャスト様に出会うまで、何も感じませんでしたけど。」


「っ!!」


 キャストたちの作戦とは違う形ではあるが、アリシアの改革が行われていた。


「おーーーい!お前ら!うるせーぞ!」


 ドゴンドたちドワーフが中庭を修理作業していた。


「早く散った散った!そんなに大勢いられちゃあ、作業もできんよ!」


「そーだ!そーだ!」


「ってか、リーダーも中にいんぞ!」


「はぅ!ご、ごめんなさい〜!」


 リタもアリシア様の近くにいました。

 彼女はドワーフのリーダーになっていましたね。


「アリシア様・・大丈夫でしょうか?」


 私は声をかけたが、今キャスト様にお呼び出しを受けたなどとは言い出しづらい。


「クラウディアか?すまない。

 見苦しい姿を見せてしまった。」


 何とか、皆さんが散り散りになりましたが。


「いえ、そのような事は。

 こんな時に申し訳ありません。

 実は・・・・キャスト様からお呼び出しを承りまして。」


「!!な、何!ほんとか!」


「はい。」


「クラウディアだけなのか!?」


「それは・・何とも言えません。

 セレストから連絡を受けたので。」


 すると、アリシア様は凄く悔しそうに四つん這いになった。

 とても暗く重い表情を成されている。


「フェリシア。後は頼みますよ。」


「なっ!へ!」


 フェリシアはキラーパスをされた事を察したのでしょう。

 戸惑い方が半端じゃなかった。


「私はキャスト様のための準備があります。

 鎧姿のままもいけません。

 すぐにでも、上級ドレスを着用しなければいけません。」


 私は急ぎ、その場を後にした。




 アリシア


「ぐっ・・・・・」


 悔しい。過去の間違った自分に苦しめられている。

 剰え、部下の呼び出しに嫉妬する自分がいる。


 部下は大切だ。

 主様をお守りし、盾となる奴隷だ。

 かく言う私も主様をお守りする奴隷だ。永遠の。


 この契りに偽りはない。

 しかし、過去は違う。間違って認識した過去は違う。


「やはり、汚泥は自身の手で啜らなければいかないか。」


 私は再び立ち上がった。


「フェリシア。申し訳ありません。

 見苦し姿を見せました。」


「とんでもありません。アリシア様が無事で有ったのなら幸いです。」


「・・・お前にとって主様・・・キャスト様はどのような存在だ?」


「神を超えし、我らの神です。

 彼の方が我らを受け入れて下さり、ご寵愛・お力をお与えになさって下さいました。

 あの時、アリシア様がその恩恵を受けていなければ、我らは惨たらしく死んでいたでしょう。」


「そうだ。決して私の力では無い。

 そこは勘違いしないように釘を刺した。

 分からんバカは始末したが。

 だが、殆どの同志は理解してくれた。それはとても嬉しい事だ。」


「左様かと。我ら一同もそう思います。」


 フェリシアは忖度では無く、心からそう思っている。

 ちなみに、アリシアに仕えている部下は全員そう思っている。


 キャストの悩みの種は深過ぎた。


「ありがとう。

 我らも主様が国を出ている間、1つの仕事を遂行する事にした。」


「はっ!皆を招集されますか?」


「ああ頼む。

 その間、この事をエラルドに話してくる。」


 アリシアから唯ならぬ雰囲気が漂っていた。

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