気ままに気のままに〜無力な俺を苦労が襲ってくる〜

第160話 納得いかないらしい

「トラブルは程々にしてくれや。」

「キャスト様・・・」

「若・・・・」

　男子連中よ。頭を抱えるな。

　俺でも解るわ。お前の影響だよって言いたいことが。

『大変ですね。』

　他人事か。

『私、剣なんで。』

　こういう時だけ剣主張すな。

「お館様の素晴らしさを説いただけというのに。全く。」

「クロエ様の仰る通りです。

　あのような格下共にお館様をバカにする権利などありません。」

　アマギ、クロエも共犯者だった。

　こうなると、シアたちが1番怖い。

「若が考えている通り、うちの筆頭騎士が1番の問題児だ。」

「あのバカは1番やり過ぎだからな。」

　神呼ばわりのヴィシュヌさんがそう言うんだ。

　何したんだアイツ。

「キャスト様が不在中、必ず問題を起こしております。」

「あーあー聞きたく無いー！」

「キャスト。現実逃避はいけないよ。」

　うん。キミらのせい。

『無自覚って恐ろしいですよね。』

　ある意味凶器だよね。

「アリシアは少しでも若を貶されたと知れば、組織ごと叩き潰すからな。」

「怖すぎだろ。」

「部隊まで率いておりましたから。」

「何であれで実績が良いのやら。」

　本当、変な事に才能を与え過ぎたんだよ。

　神様もおっちょこちょいだな。

『そんな可愛いもんじゃ無いですけどね。』

　間違いない。

「この前だって、あの肉はSランクギルドの勧誘を断った際に、キャストを批判されたとか。

　それで、単身で乗り込んでギルドを半壊させたらしいよ。」

　道理でウチの敵が多い訳だよ！

　なんか変だと思ったもん！

　ガルベリアさんと共に事業拡大してるのに、何で他ギルドから敬遠されるのかな？って。

　大手企業と連携してんのに、嫌われるって何してんねん！！

「女、男構わずに被害が多発している。」

「大体半殺しだそうだ。」

「その辺の殺人鬼より怖えよ。」

「いっその事、捕まればいいのにね。」

「そこは王国にコネがあるらしいぞ。

　若は覚えているか知らんが。」

　知ってるぞ。王族の2人だろうに。

「変な運だけは持ち合わせているな。

　あの肉野郎。」

　そんな事言ってるといざこざが起きるのでは？

　噂をしたら何やらだ。

　扉がバァーンとノック無しに開けられた。

「エラルド！聞いたぞ！私が不参加とはどういうことだ！！」

　シアを筆頭にサクヤ、フェリシア、トスカーネ、キャリーサ、ディア。

　ヘルガーとロキ、アルメ、ベルナーレ、ホムラといる。

　多くね？

「早速か。」

「噂をすればですね。」

「どうも何もない。お前たちは行けない。

　ただそれだけだ。」

「何？一体誰が決めた？」

「誰も何も。お館様と私たちで決めました。」

　バチバチやん。女子たち。

　シェリオとエラルドは呆れてるし。俺も。

「神に同行できない私も悔やまれる一方だというのに。お前たちは我慢もできんのか？」

　煽るな煽るな。

「ほう。なら楽にしてやろうか？」

　シアが刀に手をかけた。

「アリシア様。キャスト様の御前です。

　どうかお怒りをお鎮めに。」

　フェリシアさんが普通の事を言ってるので、少し驚いています。

「そうですね。ありがとう。フェリシア。

　主様の御前です。

　血で染め上げるのは大変失礼に値します。」

「やけに大きく出るね。人間モドキが。」

　ルルとシアがバチバチです。

　顔近いから。久々のフェイスオフかよ。

「お前たちには無いのか？主様への忠誠が？

　私は一分一秒ですら惜しいというのに・・」

　やめろ。プライベートが全て潰される。

『ドMなんで大丈夫です。』

　・・・・・言葉が見つからない。

『しょうもな。』

「忠誠があるからこそ、お館様の意図を汲み、自制しているのです。」

「ほう。トカゲの自制はその程度か。

　なら、そのまま自制していてくれ。」

「やはり、殺しておきますか。」

　今度はクロエと睨み合ってる。

　このせいで我らのに敵が増えてるとか？

『愛ゆえに。』

　名言をここで使うな。

「主様。このアリシア。あなた様のお側で何十年も見守り続けております！

　あなた様のために生き、共に死ぬ覚悟であります！

　私の全てがあなた様のモノです！」

　手を握って熱弁してきた。怖い。

　結構マジで語ってる。

「どうか。このアリシアを。」

　悩む。

『別にいても良いのでは？

　戦力的に問題ないかと。』

　最強なんでね。これでも。

　しかも、天才というおまけ付きで。

「それ・・」

　俺とシアの間に、闇の槍が飛び出してきた。

　シアは難なく避けたが、俺は動かなかった。

　だって、俺に放たれた訳ではないから。

「離れろ肉塊が。旦那様が汚れる。」

「・・・随分と禍々しくなったな。」

「フン。貴様を殺すためだ。」

「そうか。それは楽しみだ。」

　ミアが今度は現れた。新しい力と共に。

「旦那様。今回は同伴できる事を心から感謝を申し上げます。」

　煽るな煽るな。

「くっ！き、キサマ！」

　シアの気が段々高まっている。

　どんだけ力を隠してたんだ？

　気のオーラが半端じゃないくらい大きい。

　スキルに依存しているとか？

『余計に突き放されましたね。』

　本当それだよ。泣くよ？いい加減。

　ヘルガーやロキたちも何か言いたげにしてたが、見守っている。珍しい。

「なら、殺すか。」

　シアが刀を抜いた。

「なっ！バカ！お前ら！」

　エラルドの叫び声も虚しく、戦いが始まってしまった。

　超高速戦闘を繰り広げられていた。

　会議室内で。

　事件は現場と会議室で起こった。

　等々、名言を覆してしまった。

「はあ。喉乾いたな。」

「紅茶でよろしですか？」

「アマギ。ありがとう。」

　戦い始めた2人を他所に、ティータイムを始めたクロエ、エラルド、シェリオ、俺である。

「大変だな。」

「大変ですね。」

「本当に迷惑な奴らですね？」

「俺に質問するな。」

　クロエさんの疑問に答えないよう回避した。

『会議室で争うのも日常茶飯事ですね。』

　呑気だな。あ、壁が壊れた。

　その壁から２つの影が外に行った。

「これで災害は去ったのか・・・」

「災害扱いなのね。」

「災害でしょうが。」

「災害ですね。」

「つわものどもが夢の跡、かな。」

　一句パクってみた。

『せこい。』

「で、お前らも抗議か？」

「不満はあります。ですが、今回、見送られた理由も分からなくはありません。」

　フェリシアさんは普段頭飛んでる割に、案外まともだった。

「オレもそう思う。

　アリシア様は誰よりも思い入れが強い方だ。

　気持ちは充分解る。」

　キャリーサの声を久々に聞いた。

　後の奴らも納得はいかないが、理解はしているらしい。

「お前たちの思いは若が1番理解している。

　本来ならと思うこともあるが。」

「大きくなり過ぎました。

　当初よりは大分ズレてしまいましたから。」

　初耳や。

　こんな大所帯にならない予定だったのか。

「お陰で我々はお館様に出会えましたけど。」

　クロエさんが嬉しい事を言ってくれる。

　アマギさんもうんうんと頷く。

「それでも・・か。」

「それはそれで追々考えましょうや。」

「若がそう言うならそれでいいだろう。」

「キャストには皆んな逆らわないからね。」

　ルルとエラルドは俺をよく知っている。

　他もそれなりに知ってはくれている。

「それよりもだ。

　そろそろアイツらを止めんとな。」

『止められるので？』

　ハハッまさか。無理無理。入ったら死ぬ。

　修羅場間違いないよ。

　二択とか迫られたら、俺チキンだから逃げる。

『ゴミみたいな事言ってますね。』

　斬れ味抜群の一撃であった。