第116話 新たな決意

 俺とホムラはようやく、ミアたちに追いついた。


「ふぅ。お待たせ!大丈・・わぁお。」


 マルグリットを中心に巨大なクレーターができていた。

 野球場ぐらいの大きさはある。

 その中心に丸焦げのサメ少年?とマルグリットがいた。


「あれれ?あんなに大きかった?」


『恐らくはクスリです。』


 ああなるほどね。

 ドラゴニフのような感じか。


「大丈夫か。ミア。」


「はい。旦那様。セイラン様もご無事です。」


 姉さんは横になっている。未だ目覚めず。


「キュルキとマートンは?カーチャとアホは?」


「誰がっ!アホか!」


 あ、いたわ。チッ。


『イケメンを露骨に嫌い過ぎでは?』


「こっちも大丈夫でありんす。

 マートンはんも大丈夫でありんしょう?」


「ゲホッゲホ!問題ない。

 砂煙に慣れていないだけだ。」


「イチエイは?」


「はっ。無事でございます!」


 片腕無いのに元気そうであった。


「イチエイ様。任務を無事に遂行致しました。」


「うむ。ご苦労だ。下がっていなさい。」


「はっ!」


 ホムラは大人しく下がっていった。


 なんか不満そうな顔してるし。


『・・・・・・。』


「それよりもだ。あっちどうなってんの?」


「分かりませんが。

 新人が神装を慌てて展開し、火力を出し過ぎたのでしょう。

 ご覧のような有様となってしまいました。」


「へぇ〜。」


 ほぼ分からん。

 かくかくしかじかレベルの説明だよ。それ。


「あなた様!」


 向こうから呼んでくる声がした。


「おー!マルグリット!俺は無事だ!

 代わりにすまん!助かった!」


「そんな!滅相もありません!」


 元気かアイツは。

 この距離で話すレベルで余裕ってことかよ。

 この火力でまだまだいけるとはね。

 俺の最強への道がまた遠のく一方だな。


『縮まった感じは今まで無い気がします。』


 あーそれ言う?それ言いますか!?

 確かに毎度毎度、敵が強いから感じにくかったけどさ。

 でも強くはなってんだよ!?俺は!

 え?今はどうでもいい?確かに。


「向かうか。」


「かしこまりました。

 おいお前たち。旦那様の護衛だ。ついて来い。」


 ミアが指揮をとりながら、俺の隣に引っ付いてきた。


 なんか近くね?

 護衛の人たちのように、もっと距離を離してもいいんよ?

 ホムラもじわりじわりと背後から近づいていた。


 護衛するのか、しないのか、どっちなんだい!


『なんのネタですか。』


「足元にお気をつけ下さい。」


「後は私にお任せ下さい。」


「あんさんら。過保護過ぎでありんしてよ。」


「いうな。キュルキよ。

 マスターの周りにケチつけようもんなら、周りが黙ってはいない。

 触らぬ神に何とやらだ。」


 最早、腫れ物扱いされてるやん。

 じゃなくて。今はそれよりもだ。


 マルグリットの所へ辿り着いた。


 うひょょょょ。

 この焦げ具合は助からんな。

 というか、まだ生きてんのかい。

 クスリで耐久値も上がってるんだな。


『この状況では、それが良くない形になりましたね。』


 そうだな。

 死ぬ寸前まで、痛い思いしなければいけないし、この身体の状態だ。

 立つ事は愚か、動くのも無理だ。


「改めてすまない。マルグリット。

 俺がミスってしまったからこそ、代わりをしてもらって。」


「どうかお気になさらず。これが、本来の役目です。

 むしろ、役目を全うでき、気分がすこぶる良いです。」


 この状況で気分が良いのは戦場慣れなのか、果または、別の意味なのか。

 ただ、俺としては複雑だ。


 姉の被害によって、俺たちは戦った。

 殺された思いと死んではないが、人して殺された思い。

 案外、俺たちは話し合えば・・・とか余計な事を考えてしまう。

 家族思いの奴で悪い奴では・・・。


『テロリストにいる時点で悪いかと。

 ただ、この世界にはどうしようもない現実が付き纏うケースがあります。』


 そんな事は言われずとも知ってる。

 前世となんら変わらない。

 そういう意味では、俺にとってこの異世界も見慣れた世界だった。って事だな。


「あなた様?」


「ん?ああ。すまない。

 考え事をしていてだな。」


「あまり、ご無理をしないで下さい。

 よければ、私がお話をお聞き致しますが。」


「いや。俺が聞くよ。

 コイツは俺と同じ思いだったからな。」


『治しますか?できなくは無いですよ。』


 いや。コイツも分かっていた筈だ。

 自分の立場に、このどうしようもない現実を。


「起きてるか?」


「うっ・・・・い、痛い?」


「そうか。手短に聞くとしようか。

 分かってればでいいんだ。お前らの目的を教えてくれ。」


「・・・・・教えねーよ。バーカ。」


「なら、別の事を聞こうかな。

 姉ちゃんは好きだったか?」


「!!ぐっ!・・・・・・大好きだ。」


「俺と同じだな。俺と同じで家族を大切にしていた。

 ただ、今回は立場が違った。

 そっちにも覚悟があった筈だ。

 例え、それしか生きる道が無いとしてもだ。」


 焦げていて表情が読めないが、なんとなくだ。

 なんとなく、苦々しいリアクションをとっている感じがした。


「知ってた。

 お前に言われなくても!知ってた!でも、でも。」


「そこを責めたい訳では無い。

 お前の姉ちゃんが、『光明の旅立ち』に入らずとも、やる事や目的によってはいずれこうなる可能性はあった。」


「・・・・・・。」


「俺もそうだった。

 自分で正しい事を選択していたとしても、間違えた選択をしたとしても、姉さんの選択や運命を阻止する事はできなかった。


 俺は当時、その場にいなかった。

 ただそれだけの事だ。


 別にいなくなった訳ではないから、同じ気持ちだよって言うつもりは無い。

 けどな、もしかしたらっていうケースやああしてればって言う後悔は解る。

 それと、相手への憤りもな。」


「俺は・・・俺は!姉ちゃんが好きだっだ。

 いつも守ってくれて、いつも前で戦って支えてくれていた!

 ゴフッ!ゴッホ!ゴッホ!」


 泣いているのが解る。

 涙は出ずとも、思いによる重みは感じる。

 気の力関係なく。


「お前、俺と同じなんだな・・・。

 支えてくれた家族が大好きだったんだな。」


「ああそうだよ。

 幸いと言えば良いのか。俺んとこは死ななかった。かく言う俺もな。


 これが奇跡だったからなのか。人に恵まれたからなのか。それとも行動が早かったからか。

 何が一体、ここまで違う結果になったのかは分からない。」


 マルグリットが隣で俺の手を握ってくれた。

 俺も握り返した。


「ただ、仲間には・・。

 俺は家族たちには恵まれたな。

 俺自身が何も無くても、周りが見ていてくれたかな。

 けど、まだ足りないし、努力も足りないみたいだ。

 それを今回は教えられたよ。色々と本当にね。」


「そ・・うか。おま・・え。おもし・・いな。

 グッ!俺も!お前と一緒なら良かった。

 俺と姉ちゃんで新しい家族になれて、もっと違う事ができたかな・・。


 ・・・いいか。よく聞け。

 アイツらはこの国でっ!ゴフッ!この国の王族と勇者を使って!聖王国と争わせる気だ!」


「なっ!なんですって!」


 カーチャ様〜。ちょっと黙って。聞こえん。


「そして!皇国の勇者と聖王国の勇者を消すつもりだ!勇者の権利諸共だ!」


「そいつは・・かなり一大事だな。」


「それだけじゃない!

 龍国が機能停止している今は、法国や帝国にも矛先を構えている。

 恐らくは、そちらがさゴフッ!」


「いや、もう良いよ。ありがとう。」


 明らかに、無理をして説明してくれていた。

 だから、せめて。


「お、俺。お・ま・・えに・・あ・えてよ・っ・・・。」


「俺もこんな形だが、良かったと思う。

 だから、ゆっくり休め。」


「・・・・お姉ちゃん。」


 そう言った彼は目の光を失った。


『反応消失しました。』


 辛いな。

 同い年ぐらいの・・友達になれそうな奴が失われるのは。


『全てを背負う必要はありません。

 ですが、今回のような被害者は出すべきではありません。

 そういった想いは背負っていただいても良いかと。』


 そうするよ。コイツを忘れないようにな。

 やるべき事は決まったか。

 らしくはないな。いつもは苦労が何とかって言ってたが。


 ただ、こんな気が起きるのも悪くはない。

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