第76話 魔族軍の侵攻
龍国
「こうも軍備や兵の練度が悪いとはな。」
「仕方ないだろう。龍脈頼りの奴らだ。」
「アリシア、ミレルミア。
偵察から今し方戻ってきたが、開戦まで間もないぞ。」
ブラスは斥候として、キャスト一行が村へ向かったのと同時に偵察へ赴いていた。
「ご苦労。それで、後どれくらいだ?」
「すぐにでも攻め込むだろう。」
「侵攻速度が速い。
奴ら・・恐らく人質諸共殺してきてるな。」
「そうだね。」
「はわわわわ。そ、そんな事って。」
「あるんだよ。
むしろ、犯し、奪い、嬲りながら来てもらった方が時間稼ぎにはもってこいだったが・・・」
ミレルミアは心にも無い事を平気で言っている。
ここにいるメンバーは皆、キャスト以外どうでもよかった。
「主様がお戻りになるまで、どれくらい保たせそうだ?」
「ざっと5日あれば理想だが、下手したら1日で終わる。」
「僕が空中から攻撃を繰り出してもかい?」
ルシファルが翼を広げてアピールしていた。
「それでもだ。
奴らが遮蔽物を囮に、どのルートで本丸を攻めてくるのかも分からない状態だ。
それに備蓄もそうだが、こちらは使える人員が極端に少ない。」
「個々が強くても戦争となれば隙はいくらでもある。
頭を取られたら戦争は終いだ。」
「ならば、我らは去るだけだな。」
「ぶ、ブラスさん・・そんな・・」
冷徹だが、そうなる手筈になっている。
無理をし仲間を失えば、キャストが悲しむためでもある。
「だからこそだ。
どう編成するかが、この戦を長引かせる鍵となる。」
「とすると、ミレルミアさん大役じゃないですか!」
ハイネは1人だけ今更驚いていた。
「さっきからそうと・・・まあいい。
ただ、旦那様に任された以上は守り抜く。」
「私も守ることには異論は無いわ。」
新しく仲間になった魔女のグレースだ。
「ほう。守る事はか。」
鋭い目つきでアリシアは睨む。
「お前たち。今はやめておけ。」
「ブラスもよく頑張るよね。
僕的には勝手に争ってればいいのに。って思うけどね。」
ルシファルは呑気そうに欠伸をする。
「そろそろ準備に取り掛かるぞ。
各々は指示された通りの配置へ付け。
総指揮は私が取る。」
アリシアたちは部屋をゾロゾロと出ていき、配置へと向かった。
1人残ったミレルミアは。
「ふぅ。前までは一介の副騎士の私が今では旦那様と共に国を守るために戦うか。
出世したのか?
そんな事はどうでもいいか。
全ては愛する人のために・・・」
胸に思いを秘め、戦場へと向かって行く。
「おい、勇者共。あまり出過ぎるなよ。
この防衛が1番の要だ。いいな?」
アリシアの守る正門は法国・龍国の勇者たちで固められていた。
「な、何で俺までここなんだよ!
普通後衛だろうが!」
「男のクセに情けない。」
メイが鋭い一撃を放った。
「う、うるせ!
俺はお前たちみたいに身体能力は高くないんだ!」
「もう、いいじゃない。
私だってこんな事になるなんて思っても見なかったからさ。」
「何でお前たちは逃げない?」
マナミが率直な疑問をマイへ聞いた。
「本当は逃げる予定よ。
残る理由はあの子が頑張ってるのもあるけどね。
1番はメイが残るって言ったことよ。」
「割と大胆な事をするんだな。」
アリシアはメイを見ていた。
「む。キャストが私たちを守ってくれた。
それにあの子は嫌いじゃない。」
「本当にそれだけか?」
アリシアは急に殺気を放つ。
「やめろ。今はそんなことよりもだ。」
大量の魔族軍が見えた。
先頭からさまざまな武器や鎧を装着している。
大量の龍人死体を十字架張りにして上に掲げながら進む。
「悪趣味だわ。」
「お姉ちゃんの言う通り。」
「なるほどな。
あの呪物と珍しく意見が一致した訳だな。」
「??どういうことだ?」
「簡単だ。
相手は頭が相当切れる強者だってことだ。」
「!!おいおい!
魔族なんて大体殺すか食うか犯すしか脳の無い連中だって言ってたぜ!?」
「アホか。そんな訳ないだろうに。
しかし、この状況は向こうの目論見通り、龍人の士気を一気に下げやがったぜ。」
周りの兵たちは怯えていた。
次は自分がああなるのではと。
「おい!俺も効果的面だ!下がっていいか!?」
「なら、私が貴様を介錯してやろう。」
アリシアが刀を出した。
「申し訳ありません。
すぐに戦闘準備を整えます。」
「こいつは・・・」
バーナードの切り替えしの早さに、頭を抱えるマナミであった。
「コントやってないで早く号令を出して。」
「皆の者!敵が目前まで来ている!
だが、安心しろ!ここには勇者様がいる!」
「おおー!」「勇者さまー!」などと言った声が聞こえてきた。
なんとか攻撃できるレベルまで、士気を上げられた。
「各龍人は魔法とブレスによる遠距離攻撃をしろ!残りは私たちの援護に回れ!」
アリシアはアイコンタクトでマナミに号令係を任せた。
「皆!突撃ぃ!!」
正門から開戦の合図がなされた。
門から離れない程度に敵へ向かって行った。
「オラッ!」
マナミの炎の拳で魔族を殴り飛ばす。
殴られた箇所から炎が全身に広がり、燃え死んでいく。
魔力量によってはそうなるケースもある。
バーナードはすぐに援護系魔法に炎系広範囲魔法を展開していた。
「はっ!やるじゃねえか!」
バーナードは無詠唱でそれをやって見せた。
「うるさい!僕を守れ!
その分、援護なりなんなりしてやるから!」
「ったく。よっと!
お前はそういうところがなければ・・なっと!」
話しつつも向かってくる敵にカウンターを仕掛けていた。
「キリがない。」
すぐ近くで雷による放電攻撃が見えた。
「アイツらも派手にやってんな。
こっちも負けてらんないぜ!」
マナミは拳を再び握りしめ、敵陣へと攻撃を仕掛けた。
アリシアは他の龍人たちを引き連れて戦っている。
尚、前線には1人で出ている。
「(魔力自体は問題無いな。
いざとなれば主様のお力の一端をお借りするか。)」
「アサギリ流 三の型 『流水静剣』」
刀がしなるように敵の首を器用に斬る。
音もなく、静かにいくつもの首が落ちていく。
「おおーー!凄いぞ!アリシア隊長に続け!」
1人がその光景から鼓舞され、皆も戦う意志に火をつけたが。
その直後、火をつけた1人の首が刎ねられた。
次の攻撃をアリシアが防ぐ。
「ほう。なかなかの腕前だな。魔剣使いよ。」
「そんなオマエは普通の剣士か。
つまらんな。」
髑髏が付いている剣の柄に、黒く大きな刀身を握っている魔族がいた。
その魔族はツノが2つ生えており、漆黒のベールが包まれている。
「デーモンか。」
「その通りだ。上位のアークデーモンだ。」
「フッ。変わらん。
貴様は虫の種類を細かく見るタイプなのか?」
「いい度胸だ。女。俺の奴隷にして泣かし、堕ちる姿をみて見たくなった。」
「ゲスだな。
私を好きにめちゃくちゃできるのはあのお方のみだ。
それ以外に興味などない。」
「なるほど。
なら、あのお方とやらの前で堕としてやろう。」
有無を言わさず、アリシアは刀を振るった。
「なかなかの斬り込みだ。私でなければ・・!」
肩に傷が入った。
「チッ!」
ブンっと魔剣を振り、距離を離した。
「ちなみに、さっきは二撃入れたつもりだが、反応が悪いようだな。」
「面白い。
魔装『デーモニック』魔剣解放『グラム』」
「ほう。展開したか。
構わない。それで来い。」
明らかに先ほどより姿形が変わっているアークデーモンに対し、アリシアは刀しか構えていない。
「死を決心したか!女!」
途轍もない速度で距離を詰めた。
魔剣『グラム』による自身を軽くし、斬り込む際に重くするような重力操作を行なっていた。
「フン!」
アリシアはその重力による一撃を簡単に正面から防ぐ。
「なっ!なにぃ!」
流石にアークデーモンも驚いていた。
「普通ならこの一撃で死ぬが、私には愛の加護がある。」
「あ、愛・・だど・・?」
何を言ってるんだコイツ。という顔をしていた。
「簡単っだ!」
魔剣を弾き返す。
その際に重力操作によるせいか、重い状態で後ろに剣を飛ばされてしまい、バンザイ状態に。
「し、しまっ!」
「『
刀でアークデーモンを真っ二つに斬った。
「ば、バカめ!
聖者の攻撃以外は・・!どいうことだ!」
真っ二つにされたアークデーモンの身体が再生せずに徐々に崩れていく。
「知らないか。無理もない。
これが愛の力だ。」
正確には気を込めた一撃だ。
生命や存在するエネルギー自体を斬ったため絶命に至っている。
アークデーモンはそのまま消えてしまった。
「大した敵では無かった。
さて、待たせたな。次はお前たちの番だ。」
刀を改めて構え直し、怯えた魔族の大群へ向い、突っ込んでいく。
魔族軍後方
「ご報告!
アークデーモンのイビル様が討ち死に!」
「向こうにも強い奴がいるんだ。
勇者では難しいかな?って思ったけど。」
「カイザル様。それよりもですが、どうされますか?」
「うん。このまま正門は数による進行でいいんじゃないかな。
他の経路は強者の名前を聞かないから、多分この二方向に将軍級の戦力を入れるといいんじゃないかな。」
指揮しているのは、キャストと同じくらいの子供姿の悪魔上位種ヘルデーモンこと『カイザル』である。
直接戦闘よりは搦手や作戦が得意とされている。大の女好き。
側近の女性は近接力に最も長けた、アークデーモン内でも屈指の強さと言われている。
名は『メイビス』。
「ジリ貧になりそうかな?何日かは。」
「確かに見た感じそうですね。
現場指揮だけでもやれそうな感じですが。」
「けど、攻め手には欠ける。
だから時間がほしいなら時間を与えようじゃないか。
こっちも準備があるからさ。」
カイザルはメイビスの腰へ腕を回し引き寄せると、そのままベッドへと向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます