第75話 海へ 信者生産工場長
里の集落で少しだけ休む。
荷物をまとめるとか。
「おっと、思い出した。
海がある所に案内してもらわねば。」
「お呼びでしょうか?お館様。」
銀髪ショート忍者風黒龍アマギが現れた。
まだ呼んでない。早過ぎ。
「ああ、うん。ああ、あのね。早くない?」
「何を。私なんてクロエ様に比べればまだまだです。
クロエ様はお館様の動きをしっかりと把握しておられますので。
その言伝から向かったまでです。」
ええ、なにそれ。読んでたってこと?天才やん。また頭いい奴がきたのね。
シア、ミア、エラルド、シェリオばかりに重荷を背負わせなくて良かった。
「その通りですね。」
・・・・・
『いつか対策ができますよ。』
後何年間、俺はプライバシーを侵害されればいいのだろうか。
「お館様?海までご案内致しますが・・
よろしいでしょうか?」
「じゃあ、お願いするよ。」
「ちょっっっと!まっっっった!!」
なんかエコーっぽく聞こえる。
「このヘルガーもついて行くぞ。」
「私もだ。」
ロキとヘルガーも同じ集落の一部で休憩をしていた。
なんの察知能力か、急に目の前に現れる。
「警備の者たちが居た筈では?」
「ああ、快く通してくれたぞ。」
脅したな。
アイツら腕力だけ、本当にその辺の龍にも引けを取らない。
「ほう。」
アマギの目が鋭くなる。
この人もなかなかの強さだ。
「ま、争う事ないようにね。
早く海へ行きたいし。」
「か、かしこまりました!申し訳ありません。・・・・
お仕置きはベッドでお願い致します。」
ッポ。じゃねえーし!
何回このやり取りすんだよ!
なんで俺を悪代官にしたがるの?
『実際に手を出さないからでは?』
冷静に分析すな!
「いいからいくぞ!」
俺はその場から早く部屋を出て行った。
アマギに案内をしてもらっている間、ふと思った。
「海か。何年振りか・・・」
「お館様は海を見た事がありましたか。」
「あ、いや、そうだ。結構前の話だがな。」
『安心して下さい。
マスターの前世に関わる過去などは読むことができません。』
了解。それならいいが。
「面白いお方ですね。
貴族出身の方ともお聞きしておりましたが、今は独り立ちをされているとか。」
「そんな大層なもんじゃない。
ギルドを立ち上げたけど、肝心のギルドランクが・・」
「今はAランクです。」
ロキからとんでもない事を聞いた。
てか、いつのまによ。
「今現在、我々が不在ではありますが。
生産、討伐、護衛、新規調査、ダンジョン攻略など数々の功績を治めております。」
「ロキリアの言う通りです。
今回の大遠征に戦争と国への協力から、さらに評価を得られるかと。
Sランクも近いと思われます。」
ヘルガーの言葉から俺以外が如何に優秀かがよく分かった。
俺いらない子かな?
『間違ってはいません。』
うあ!そういう事言いますか!?
傷つくわー。
「大丈夫ですよ。
お館様がいるからこその成果です。」
新人に慰められる俺は更に惨めだと思うのは卑屈なのだろうか。
「着きました。」
そうこうしてるうち、綺麗な海岸まで着いた。
綺麗な青色の海だ。
前世でもここまで綺麗な景色は少ない。
透き通るような色で深海の黒さも際立つ。
「綺麗だ。
ここは一度は見ておかなくては損だな。」
「これもキャスト様のために世界が用意されたのかと。」
すまん。それ無理がある。
「ヘルガーの言う通りです。」
あれ?俺がおかしいの?
「お館様のための海ですか。
確かにそうですね。
綺麗で何者にも汚されない高潔さを表していますね。」
んー、地元の人まで言いますか?
『信者が増えましたね。
恋人より作るの上手いですね。』
うるさ。
こちとら作りたくて作ってる訳ではありませんが。
「それよりも墓でも建てるか。」
「!!我が同胞の死をそこまで考えて下さっていたとは・・・
このアマギより一層、お館様に忠義を!」
『狂信度が50上がった。』
補足しないで。
数値化されると、シア辺りはもうカンストしてるから。
それより、ここら辺に建てるか。
骨とか無いが、このネックレスだけでも埋めるか。
家族との絆の品だろうな。
小山に木の板を刺し、『ディートリッヒ一家』で刻んだ。
南無。
「よし。これでいいかな。義理は果たした。」
その場を振り返らずに立ち退く。
「戻ろうか。」
「「「かしこまりました。」」」
ハモってるし。仲良いのかお前ら?
その後、すぐさま集落へ戻ると。
全員が準備完了していた。
「お待ちしておりました。お館様。」
「ど、どうも。クロエ。」
流石に狼狽える。さっきと態度違うもの。
それに周りの武装や集中力が凄い。
これから戦場へ行く奴の顔をしている。
「お館様のお帰りを心からお待ちしておりました。皆一同もそう思っております。」
ザッとクロエと周りの黒龍さんたちが跪いた。
いや。それ苦手なんだけど。
「しかし、これは形式のようなものです。
普段は普通に接させていただきますが、こういう場だけはご了承いただければかと。」
あ、あれ?イケメンさんがいる。
『良かったですね。イケメンも選べますよ。』
何それ?俺雑食じゃないよ。
いや、顔赤らめなくていいわ!
『満更でも無いみたいですね。
本当に良かったですね。』
「おい、シュルト。興奮するな。
お館様が怖がっているだろう。」
そこには長身の美女がいた。
俺からすれば12歳のガキなのでみんな長身だがね。(リタ以外)
『後でリタさんにしばかれますよ。』
「アリアン。私語は慎みなさい。
お館様の前ですよ。」
「かしこまりました。クロエ様。
はしたない事にお館様を見て、私も興奮してしまいました。」
頬を赤らめて見ている。
なんかエロい。
鱗がちらほや見えるが、全てが綺麗だ。
「ああ、いいよ。気にしてないからさ。
それよりもクロエ。出発できそうか?」
「問題ありません。向かいましょう。」
「じゃあ、俺たちも準備やな。
『フライングボード』に戻るか。」
すると、驚きの声が一同から上がった。
「そ、そんな!お館様!私にお乗り下さい!
速さには自信があります。」
どこからかそんな声がした。
「何ぃ!女如きが無茶をするな!
お館様!ワシの方が乗り心地も良く、早いですぞい。」
「ジジイ!無理すんな!
俺の方が筋肉もあるからな!俺が1番だ!」
ガヤガヤしてきたぞ。
もう一触即発ムードだ。
気合い入りすぎだろ。
「黙らんか!姫様にその権限があるのを忘れているのか!?」
ほう。
割とまとめ役の女の人がしっかりしてるな。
って、男女共にスタイル良過ぎんか?
まとめ役さんもそうだしな。
「お館様。誰にお乗りになるかをお決めしていただければかと。」
「何を勝手に進めている。
私たちがお連れするに決まっているだろ。」
ヘルガーさんはここでは静かにできないようだ。
「おい。新たな火種を生むな。馬鹿者共が。」
ロキは冷静だけど、やっぱ煽ってるよね。
「お館様は我らのお館様だ。
主従契約も果たしていない猿共が何をほざくか。」
アマギさん大分人が変わりましたね。
こっちが素か。
「ほう。死にたいのか?下っ端風情が。」
やべーな。ヘルガーはともかく。
ロキさんがガチギレ寸前だ。
「今争うのと龍国で争うのと、どちらがいいのか分からないのか?お前たちよ。」
クロエの冷静な指摘に一同が黙る。
「ここで暴れるよりは戦場でな。って事か。」
「ヤルなら戦場でしなさい。
誰も見てないから。」
いや。それ言ったらダメじゃね?
「ほう。受けてたとう。」
ヘルガーさん。ヤル気にならないで下さい。
何で戦時下に仲間同士とも争わなければならないのか。
『ただ、彼ら彼女たちも理解しております。
本気でやりそうで怖いですが。』
それな。
てか、何やかんや争うのに連携力は妙に高いときた。
強者同士で何が通ずるものがありそうだ。
俺もいつかそうなれたらいいな。
『まずは年齢層等にご成長なさっていただければかと。』
はーーい。
まだガキなんでね。
ガキの状態で色々ありすぎだけどな。
「なのでここは、これで手を打ちましょう。」
「私が元の龍の姿に戻りますので、お前たちもその乗り物を乗せろ。
お館様も私の背中へどうぞ。」
妥協なのか?
まぁ、ヘルガーやロキがいるなら妥当か。
それにしても乗り物ごととは。どんだけ大きいのだろうか。
「期待していて下さいね。」
・・・・・・
『??マスター?』
「では出発しましょう。」
目の前でクロエが光った。
身体がどんどんデカくってか。
大き過ぎじゃね?全長何百メートルあるの?
東京タワーと同じじゃねえか?
いや、それは盛り過ぎか?ただ、そんぐらいあるって言っても過言ではないぞ。
「『どうぞ。私にお乗り下さい。』」
大きな掌に乗せてもらい、そのまま背中までご案内してくれた。
「『お前たちは勝手に乗れ。』」
この扱い方の違いね。
ロキは『フライングボード』を魔法で自分ごと浮かせてるし。何という魔力だ。
ヘルガーはササっと登ってるし。
そして、飛行を開始した。
『フライングボード』より早い。めちゃくちゃ早い。
風圧を感じないのはクロエのお陰なのは気づいている。
後ろを見ると、沢山の黒龍さんたちがいるじゃないか。
この光景は一国を攻める事もできる。
女子供問わず、全員戦闘力が高いらしい。
どこぞの戦闘民族さんだよ。
まあ、このまま戦場へと参戦だ。
みんな無事だといいが。
とにかく間に合ってくれ!
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