第3話 どうしてこうなった 3

 そして、4年の歳月が経ちましたとさ。


 ん?何で途中の過程を説明しないのかって?

 そりゃ、乳吸ってるか、泣いてるか、抱っこされてるかで、碌に喋れはしませんので。


 ミレルミアと母上のスパルタ・・もとい、教育を受け終え、無事に喋れるようになりました。


 簡単に整理すると、ここがファンタジー世界であるのは言わずもがなだが。


 現在、私が所属している国が『トワイライト皇国』というところだ。

 その南に位置するのが、我らの領土でもあるエンバイス伯爵家ということ。

 そして、向かいのご近所さんにいらっしゃるのが、『魔厄の森』さん。


 通称『地獄』と言われてる。

 何でも、入ったら阿鼻叫喚が待ってるそうです。死ぬより辛いってなんですかね?

 南に位置しているということは、退治と調査も兼ねてるってことだよねって言う話だよね。


 歴史とかは分からんのでパスしてます。

 時代的には、前世で言う魔法が発達している中世のヨーロッパ系イメージかな。

 あ、イギリスかな?どちらかといえば。


 今、そんな僕は妹のような義姉キアラとお遊び中です。

 僕が4歳で、キアラは約7歳の金髪ツインテール、若さ溢れるちびっ子で元気満載の少女である。


「い〜〜ち、に〜〜い、さ〜〜ん・・・」


 ただいま絶賛、鬼ごっこ中です。

 というか、2人とか悲しい。しかも、向こうスキルあるから毎度死にかけるんですが。


「あ、みーーつけーたー!

 待てーー!闇鎖ダークチェイン!」


「グヘェ!」


 急にキアラの腕から細い鎖が飛び出し、僕の体を縛り付けてきた。

 固有スキルによる『闇鎖』による攻撃である。


 いくら細くても、スキルやら魔力のない僕からしたらしんどいというか、死んどいですが。


「スキル禁止にしてよ〜。

 これじゃあ逃げるどころか、まず隠れられないよ。」


「えーーー!スキルあってもお兄様やお姉様たちは躱したりできるのに・・・・ごめんね。

 キャストには強すぎたかな?」


 マジでしょんぼりとしながら、自然と毒をはいてきます。天然ドS嫌いです。

 マジで、どうしてこうなるんですかね。



 自室


「いいですか?キャスト様。

 まず初めに、神々についてお話しします。

 誰が優れているだとか、何に長けているかなどは千差万別です。

 神とは言えど、全員が全知全能ではありません。」


 ミレルミアさんの教育を受けている。


 その大きく強調された胸を直視しながら、「だろうね」と呟いていた。

 そしたら、黒縁メガネを通して、冷たい視線が刺さった。


 すいませんでした。


「・・・・・いいですか。

 皇国の神についてですが。正確には女神アシュタルテ様と言います。

この国の信仰対象であり、選定の儀の時にスキルを授けて下さるようになっています。」


 と冷たい視線から切り替えたミレルミア。


「すいません。

 授けられなかったのですが・・・。」


「・・・・・女神アシュタルテですが、回復と奇跡の・・」


 あらま。無視された。まあいいか。

 とりあえず分かる事は、その女神を叩きに行けばいいんだな。

 まぁ、基本的に内容はスルーしといていいだろう。

 信仰心はそもそも与えられ、初めて身につくものだしな。これ私の持論なり。


「以上となります。ちゃんと聞いていましたか?」


「うむ、実に面白いやってみっブヒッ!」


 スパーンと丸めた教科書で頭を叩かれた。


 でもそんな君が美しく、かわいいです。

 嫁に来てくれないかな。


「何言ってるんですか・・・・?」


 ミレルミアがなんか顔赤めて、こちらをジト目している。


「あ、もしかして、口にしてましたか私?」


 ジト目ダークエルフさんは2回頷いた。


 あらやだ。

 最初の告白は4歳でしたってか。

 間抜け過ぎて、恥ずかしさも通り越して行くわ。


「んん!コホン。

 では次、休憩後に剣や短剣などの訓練を行いましょう。

 では、一度失礼します。」


 と早歩きで出て行った。

 壁際に控えている茶髪メイドさんこと、マールさんに聞いてみた。


「あれって脈アリですかね!?いけます?」


「はぁ。どうでしょうか。私からはなんともですが。

 それよりもお外の訓練用の服に、お着替えのお手伝いをさせていただきます。」


 なんかスルーされた。

 しかも、なんでそんなこと聞いてくんのよ顔なんですが。

 露骨に嫌われすぎではないですかね。


「はぁ。着替えますか。」


 苦労は絶えない。


 伯爵家だから、金や食事には困らないって感じなんだけど。

 というか、ここの民の方々は餓えることなく、しっかりと統治されている。

 我が物顔が領内にいないはニッコリです。


 確かに、普通に人よりは暮らしはいいんだろうが、それを駆け引きにしてもだ。

 スキルも魔力も無いし、頭も悪いときた訳だ。頭は元々だって?うるせ。



 屋敷の庭にて


「打ち込みが甘いです!

 体が小さいので打ち込む際、少しでも重心を剣に乗せて打ち込まなければ、弾き返されるどころか剣が手から離れ、懐に切り込まれて致命傷を負ってしまいます。」


 今はお外にて、母上に見守られながら短剣術の達人にしばかれています。

 一本どころ、1ミクロンもミレルミアに届きません。というか、当たらないどす。


「グヘェ」


 短剣で押し返された。脳筋馬鹿かよ。


「失礼な事を考えていませんでしたか?」


「とんでもございません。

 ただ、なんで短剣に押し返されるのかと考えておりました。」


「簡単です。

 短剣を使って打ち合いをしたとしても力負けは愚か、剣が飛ばされる可能性が高いです。

 であるなら、受け流すか、流すと同時に相手に力を流し返すなりして拮抗させています。」

 

 とんでもなく恐ろしいことをサラッと言われた気がする。

 僕にできるのそれ?

 要するに、受け流した力をコンマ数秒単位で相手に渡してるってことでしょ。

 スキルありきなのかな?

 少し前まで平和っ子の僕には難しい。


「できるかはともかく、技術としては途轍もなく凄いことだね。」


「いえ、これくらいは殆どの人たちはできます。

 なので、ご心配なさらずとも私の全力をご教授させていただきます。」


「マジで」


 もう嫌になるのと同時に、多分近いうちにもう一度転生するかもしれない。

 どうしてこうなったのか。



 訓練後


 母上、キアラ、ミレルミア、マーシャたちとお茶会してます。

 綺麗どころが多くて、大変目の保養になります。


「今日も頑張ってたわね。偉いわキャスト。」


 そう言った母上は頭を撫でてくれた。


「ありがとうございます。母上。」


 へへへ。流石に照れますなぁ。


「へえええー。全然まだまだショボいよー。

 だって、私あれくらいできるもん!

 義母上。私も撫でてください。」


 横からディスってくるキアラだ。


「はいはい。」


 優しい母上は毒義姉を撫でるのであった。

 なんかチクショウ。


「あら?メイリーン様でなくて。ごきげんよう。」


 涼しげな顔で登場されたのが、エンバイス家の第二夫人サルベリアである。

 キアラの実母でもある。


「母様・・。」


 母上は不安なキアラを横で抱き寄せた。


「サルベリア様。どうもごきげんよう。

 本日はいい天気です。

 よろしければご一緒にどうでしょうか?」


「あら、せっかくのお誘いですが、ご遠慮させていただきますわ。

 私の愛しく、優秀な息子の教育を見届けなくてはいけませんので。」


 今度は後ろから、キクル約8歳と黒髪黒騎士のクローク・ハルツメインが現れた。


 黒騎士の目は魔眼が宿っているのか、綺麗な真紅の瞳をしている。

 顔はイケメン・学歴トップなんでもござれ優秀であり、豪炎の騎士団第2部隊隊長である。


 キクルは身長もだいぶ伸びており、そのせいかより僕を見下している。


 特徴は、純粋な近接戦というよりは、持ち前の回復力を生かした前線型魔法士という印象である。


「ごきげんよう。メイリーン義母上とキアラ、ミレルミアにマーシャ。

 そして、な義弟よ。」


 おいテメェこら!


「おはようございます。キクル様」


「おはようございます。」


 マーシャが先に一礼と共に挨拶を交わし、ミレルミアが後から続いていたが、なんか目が怖い。

 その目線を無視したキクルが。


「キアラ。いつまでも、そんなに構ってないで、私と共に勉学と戦闘訓練を学びに行くぞ。

 そして、お前たち騎士も大儀であるな。

 義母上はともかく、愚かな息子にまで仕える専属の騎士がいようとはな。

 その心の深さに感服したぞ。ミレルミアよ。」


「お言葉ですが、キャスト様は大変お優しく、慈愛に満ち溢れたお方です。

 スキルや魔法だけでは優劣はつけられないかと。」


 キクルの意見に刺さる物言いだった。


 ミレルミアさんが反抗してくださったので、少しスカッとはした。

 結構グレーゾーンな発言だけど。


「なかなかハッキリと意見するではないか。

 気に入った。私の専属の騎士となれ。

 いい思いもでき、決して損はさせないぞ。

 どうだ?」


 急な勧誘をするキクルくん。


「折角の申し出ですが、ご遠慮させていただきます。

 私には生涯お仕えすると決めた方がいらっしゃるのと、メイリーン様からも託されておりますがゆえに。

 丁重にお断りさせていただきます。」


 高圧なキクルに対して、屈することなく、即座に対応するとは。

 姉御肌っすね憧れますわ。

 キクルは普段からチロチロとすれ違ったりする度にミレルミアを見てるから、きっと好きなんだろうなーと思いました。


「そうか。実に残念だ。

 うちにはクロークがいるから身の安全は大丈夫なんだが。仕方がないな。

 次に期待するとしよう。」


 次あるとか、どんだけ好きなん君は。


「それでは私たちはこれにて失礼しますわ。

 行きましょう。キクルにクローク。」


「承知しました。サルベリア母上」


「かしこまりました。サルベリア様」


 そして、サルベリアたちは軽くお辞儀をした後を去って行った。ついでにキアラも。


「感じ悪いやつらですね。

 大丈夫でしょうかキャスト様?

 何も気にしなくてもいいですから、共に少しずつ成長していきましょう。」


 慰めてくれるダークエルフのお姉さん。

 やっぱ結婚するか。いや結婚しようか。


 そんな隣でマーシャさんが頭を抱え、どうしてこうなった。という思いを感じ取った。

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