限りなく白に近いグレー
水依レイ
プロローグ
『もし今、私たちの知らない遠く離れた地の誰も居ない森で、一本の木が倒れたとします。その際に、その木は〝音を出して〟倒れたのでしょうか』
これはアイルランドの哲学者、ジョージ・バークリーが投げかけた言葉だ。バークリーはこの問いに対し「木は〝音を出していない〟」と答えた。
そんなはずはない、そう誰もが思うはずだ。
ここで重要なのは、「認知」、つまり誰も居ない森の中で倒れた木の音は、誰にも認知されていないということだ。
バーグリーは「(それが)存在するということは、(誰かがそれを)認知をすることである」つまりは、「存在は、認知があって初めて成り立つ」というのだ。
だから結論として、「誰も居ない森で、木が音を出して倒れたところを、認知できないため、木は音を出していない」と言えるのだ。
しかし、これは僕たちが生きる現代社会において全く意味を持たないだろう。人間は一人では生きていけない、社会的存在なのだから、互いにだれかを観測し、だれかに観測されているはずだ。
つまり認知されない人間なんて、存在しない。
────────ただ、僕を除いて、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます