第8話 間話 バン




俺は生まれた時から俺には親がいなかった。

村の皆んなに親の話を聞けば「龍と戦った」とか「伝説の実を探しに行ったんだ」とか口を揃えて嘘話ばっかり言いやがる。小さい頃はその話を信じていたが、でかくなりゃ嘘だってバカでもわかる。




直接死んだって言わないって事は、もしかしたら捨て子とか置き去り子ってやつだったのかもな。それでも俺が捻くれる事はなかった。村の皆んなが家族同然に扱ってくれたからだ。叱る時はとことん叱るし褒める時はとにかく褒める。皆んなで笑って皆んなで泣く。俺はこの村が大好きだった。




それでもなんでかボンヤリこのままで良いのか?

と思う様になっていた。このまま皆んなと畑耕して、嫁さんとって子ども作って育てる。俺の人生それだけでいいか?ここまで育てて貰ったんだから村に恩返しをするべきだろ?本当にそれが俺の望みか?そんなモヤモヤとした気持ちを抱えながら何日も過ごしていたある日、俺は起きたら加護を持っていた。





「"ワンダフルラッシュ"?」




寝起き頭に浮かんだ言葉を喋ると目の前に巨大な両腕が現れた。ガーーッと頭の中を鈍い痛みと共に加護の事とワンダフルラッシュの能力が入ってきた。




「"手を叩け、良いことあるぞ"なんだそれ?」




疑問に思いながら両腕で拍手をした。パーンと気持ちのいい音がなる。それだけだった。



「なんだこれ、、?」



訳がわからんねーやと思いながら畑を耕しに行き、朝のことを村の皆んなに話して「お前らしい加護だ!」と笑われながら仕事を終えた晩飯の時だった。飼ってる鳥の卵を割った時、黄身が双子だった。



「おっ!ラッキー!!」




朝のことをすっかりと忘れていた俺はその時は全くきにしなかったが、これが2日5日7日と続くと流石に加護の力だと思わざるおえなかった。毎朝なんとなくワンダフルラッシュで拍手をしていたが、こんな微妙な加護なんて、、、。この事を村の皆んなに言うとまた大笑いされた。しかし、ワンダフルラッシュの潜在能力はこんなもんじゃなかった。それが分かったのは日照りが続き畑がヤバくなってきた時だった。




「このままじゃ皆んな飢えちまう!!たまには双子卵以外なんか起こしてみろや!!」




パーーーーンっと気持ちの良い音が鳴った後、ポツリ、ポツリと雨が降り長らく降らなかった雨が降ってきたのだ。




「やったぞ!雨た!」「バンの加護の力だ!」

「卵以外にも幸運をよんだぞ!」「ありがたや」




それから後は祭りだった。色々試して見て命がやばい時はすごい奇跡が、なんて事ない状態だと双子卵レベルの良い事が起こる。回数は不明で一日に4回使える時もあれば1回しか使えないこともあった。

そんなある日、おぞましい獣が村を襲ってきた。




「バン!獣がでた!普通のじゃない!!」



「余裕がないんじゃ!たのむ!!」




村の皆んなの声を聴き外に出ると今まで見た事のない獣が何体もいた。これはやべぇ、、、そう思いワンダフルラッシュを呼び出しパーーンと拍手した。



「俺の加護は発動した!!どうなるか分からないが悪いことにはならない筈だ!!みんな持ち堪えてくれ!!」




「拍手したならこっちのもんだ!!」



「皆耐えるぞー!」




ワンダフルラッシュを使用して一気に士気が上がり獣たちに応戦することができた。獣との戦闘が膠着している時あいつが現れた。




「助太刀します!これは加護の獣です!!」

僕が注意を引くのでその隙に攻撃していってください!」




白くて長くて綺麗な槍をまるで舞っているように降るその姿に思わず見惚れてしまった。それ以上にワンダフルラッシュからビビッと何かを訴えるような感覚がした。なんだ今の感覚?!慣れない感覚に戸惑いながらもその槍使いとともに獣を倒すことに成功した。




戦いが終わった後俺が村を代表して槍使い、アルと喋ることにした。アルが別の村から来たこと、"先生"ってのが力に呑まれた事。あの獣は加護で"先生"の憎しみや怒りから生まれている事、村の皆んなが死んだ事。色々聞いた。




村が余所者を嫌うのは良くある話だって俺の村の皆んなも行っていた事がある。俺の村は余所者の集まりで出来たから余所者でも受け入れるらしいが、その"先生"ってのがこの村に来ていたらあんな獣は生まれなかったかもな。俺も多分余所者だから"先生"にほんの少しだけ同情した。




村や"先生"や獣の事を話すアルは仕切り謝罪の言葉を繰り返していた。俺からすればお前の責任じゃないんだから気にすんなよって思うけど、アルは自分が背負うって決めたからと真っ直ぐ言った。素直にかっこいいって思っちまったのと、こいつをこのまま1人で行かせればそれこそ孤独で"先生"みたいになるんじゃないのか?と直感的に感じた。





あっ、俺こいつと旅をするために生きてきたのかもしれない。会ったばかりでバカらしいけど本気でピンと来た。1人じゃ多分アルは最後には壊れちまう。なら同じ加護を持った俺が助けてやれば良い!!善は急げと皆んなの所にアルと旅に出ると伝えに言った。




「まったく、、、お前は本当つくづくあの2人の子どもだよ」




「本当だよなぁ!親は龍退治と伝説の実、子どもは獣退治と来た!」




「親が親なら子も子だな!」




ダメだと言われるのを覚悟していたが返ってきたのは意外な言葉だった。親が親なら?あの言葉本当だったのか!?




「お前の両親はな本当に龍退治にいったんだ。東の国にな、、、。世界を救うとか言って、変な奴らだったが皆んなあいつらが大好きでな、嘘を言ってるとも思えなかった」




「それで、生まれたばかりのお前を俺らに託したんだよな!この子はいずれ運命の出会いをして村を出て世界を救うからそれまで頼む!ってな!!」





「あの頃はまたバカな事いってると思ったがバンが加護を得て、そして彼がきた。なら俺たちは止めないぞバン。世界を救ってこい!!」




「み、皆んな!!」




バカみたい信じてくれる村の皆んなの気持ちが嬉しくて、自然と涙が込み上げてきた。なんだよ世界を救えって、、、。本気で言われたら救うしかないだろ!




「バン!ここはお前の故郷だ!!いつでも帰ってこい!!彼とうまくやれよ!!」




「世界を救ったらこの村宣伝しろよな!!」



「しっかりするんだよ!!これ食糧だよ!!」





皆んながそう口々に励ましの言葉と餞別をくれ背中を押してくれた。



「ありがとう!今まで育ててくれてありがとう!!こんなワガママ許してくれありがとう!!!俺世界救ってくるから!!!」




「「「いってらっしゃい」」」





その言葉とともに一歩踏み出す。モヤモヤしていた気持ちはもう無い。獣を倒してアルを助けてそして世界を救う!!




「アル!俺も旅について行っていいか!?」




そういうとアルはポカーンとしていた。そうそう、俺達はこれからなんだから暗い顔ばっかりじゃダメなんだ!!こうして俺は生涯の親友と短くも忘れられない旅をする事になった。







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読んでいただきありがとうございます!!

回を重ねる旅に書きたい事が増えて長くなってしまってます、、笑 良ければハートやらブクマやら星やらの応援お願いします!!



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