第7話 友達





「なるほどな、その"先生"ってのが狂っちまって、加護でさっきの獣を生み出したと、、、。そんであんたはその責任を取るために、"先生"を討ち取るわけだ。まぁ他の奴らからしたら良い迷惑だよな」



「うん、わかってる。だから本当にごめんなさい」



"先生"のこと、あの夜のことをバンやバンの村の皆んなに説明した。反応は様々だったけど、意外だったのはあまり責められなかったことだ。酷いことを言われる覚悟はあった。けれど殆ど皆慰めてくれた。中には「ボウズのせいじゃねぇーよ」や「その年で家族や友人、恩師まで失ったんだ。少し休めや」「あなたが背負う必要はないのよ」など優しく諭してくれた。



「ありがとうございます。本当にありがとうございます」



「まっ!もう気にして仕方ないしな!獣は倒した!!誰も死んでない!!ならそれでよし!!」



「本当にそれでいいの?」



「良いんだよ!!排他的な村にはある意味良くある話じゃねーか。たまたま加護を手にしただけだ。それだけなんだよ!それにアルはその責任を取ろうとしている、ならそれで良いじゃねーか!!」



バンは豪快ながらこちらを気遣ってくれた。みんなに好かれるはずだ。カラッとしてて元気で気持ちの良いヤツ。バンにそんな印象をうけた。



「バン、本当にありがとう。そう言えばバンの加護が僕を呼んだみたいな事を言っていたけど、、、バンも加護をもってるんだよね?良かったらどんな加護なのか教えてくれないかい?」



「おーー!そうだった!!そうさ!!!俺の加護でアルが来た!確証はないが確信はある!!」



「そ、そうなんだ、、。僕の加護は"マーメイドフェスタ"って言う名前で呼べば槍が出てくる。能力かどうかは分からないけれど、マーメイドフェスタを持っているときは身体能力が凄い上がる、使った事のない槍を自分の手足のようにコントロール出来る様になるんだ」



「ふーん、"先生"をどうにかするっていう祈りで戦いの加護を貰えたのかもな。俺の加護の名前は"ワンダフルラッシュ" 能力はざっくりしているんだが、でかい両腕を出せて、それを自在に使える。そしてこっからが本番だが、ワンダフルラッシュで拍手をすると俺にとって良いことが起こる。どんな事が起きるかは分からないがとにかく良い事だ!!」



「あの腕にそんな能力が!?良い事っていうのは例えば?」



「いや、ほんとにざっくりなんだが例えばだ、獣に襲われてる時に拍手をしてアルが来た。例えば畑が枯れそうになりそうな時に拍手すると雨が降った。そんな感じだ。ただ能力の振り幅はデカくてなんて事のない時に拍手しても何も起きないんだよ。多分俺の命が危ない時ほど良いことが起きやすい」



こんな加護もあるのか!?と驚いているとバンは「変な加護だろ?寝て起きたら急に貰えてたんだよ!」と笑い飛ばしていた。でも考えれば凄い能力かも知れない。良い事が起こる、博打的だけど言うなれば奇跡を起こす力だ。



「いや、凄いよ!!まさに神の加護だ!!!」



「そ、そうか?村の皆んなはからかってくるからな、なんか照れるぜ。それよりアルはこれからどうするんだ?」



「僕は"先生"をまた探しに行くよ。決着を付けなきゃ行けないから。よければ少しだけ食べ物を分けてもらえないかな?」



「よし!わかった!!俺から皆んなに頼んでみるぜ!!その辺で休んでろ!!」



気持ちの良い返事をくれたバンにお礼を言い少し休ませてもらう事にした。ゆっくりと休むのも久しぶりかも知れない。バンとの会話は思い詰めた気持ちをすこし楽にしてくれた。



しばらくしてバンは大きなリュックを背負って戻ってきた。



「アル!!俺も旅について行っていいか!?」



ニカっと笑い飛ばしながらとんでもない事を、気持ちの良い声で言うのであった。



「えっ!?一緒にって、、、。そりゃバンみたいな人がいたら心強いけど。でも巻き込まないよ」



「なぁ、アル。俺ずっと探してたんだ。この加護を得た意味を。どうして神ってやつは俺なんかにこれを渡したんだろって。そんで今日ビビッときた!!アルお前が助けに来た時ワンダフルラッシュが今までないくらいのパワーがでた。もしかしたら神同士で友達だったかもな」



「僕のマーメイドフェスタにはそんな反応無かったけど、ビビッときたか。奇跡を起こす能力があるならそう言う直感的なものに鋭くなってるとか?」



「あんがいワンダフルラッシュの片思いとかかもな!!まぁともあれだ、いずれは村から出て旅に出ようと思ってた。そしたらアルにであった。お前と話して悪いやつじゃ無いとおもった。だから一緒に行きたいんだ。もちろん"先生"との決着も手伝う。だからよ、友達になろうぜアル!!」



勢いよく右手を差し出してくるバンに少し戸惑った。村の方がトラウマになっているのか僕のせいでまた誰が傷付いたら?死なせてしまったら?そんな考えが頭をぐるぐるとまわっていた。どうしたら良いんだ!?



「大丈夫だ!俺が死んでもアルのせいじゃない。そしてアルが死んでも俺のせいじゃない!!アルが死んだら俺が"先生"を倒してやるよ!!」



その声は何故か温かくて、何処か無責任。それでもやっぱりバンの気遣いが見え隠れしていた。不安をそっと取り除いてくれる様な、一人で抱え込むなと言ってくれている。それが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。



「ありがとうバン。ありがとう!!」



僕は勢いよくバンの右手を握り、引き寄せ抱きしめた。孤独だった心を救われた、絶対に死なせない。そして僕も死なない。この旅はキチンと終わらせてみせる。再びしっかりとその覚悟をした。



「ハハッ!!よろしくなアル!!これから俺たち友達だ!!」



「うん!友達だよ!!僕たちは友達だ!!」



これからどんな困難が待ち構えていてもバンとなら乗り越えられる。そんな確信を僕は強く感じながらこの出会いに感謝の祈りを捧げたのだった。





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