第14話

 ワーリーたちが抜け道に入ってはや30分が立ってしまいました。ワーリーも部下さんももうしゃべる元気もありませんでした。治郎吉さんがもと鉱夫だといってももうご老体。疲労が目に見えて体に出てきました。しかしここは半径約1.2メートルの狭い洞窟の中です。しっかりとした休憩をとることもできません。ワーリーたちはほとんど気絶しそうな状態で進んでいました。しかし、ワーリーに限界が近づいていました。ほかの人もワーリーほどではないですがかなり疲れています。ワーリーに限界が近づいていることに気づく気力がありませんでした。ワーリーは少しづつみんなと離れていきました。限界が近いので助けを呼ぶ力もありません。治郎吉さんの持っているライトの明かりが、ぼやーとする視界の中、すこーしづつ遠ざかっていました。その明かりは命の灯のように少しづつ少しづつ小さくなっていき、ついには消えてしまいました。

 「み、ん、な・・・・・待、って・・・」

二人はワーリーがライトの届かないほど後ろいることに全く気付きませんでした。ワーリーは真っ暗の中、力の限り前に進みました。しかし全く何も見えない暗闇はワーリーからすべての気力を吸い取っていきました。ついには指一本さえ動かせないようになってしまいました。

 「クーリーを・・・・クーリーを・・・・見つけ・・・・・なきゃ・・・」


治郎吉さんたちが懸命に穴を進んでいくと前に針の穴ほどですが光が見えてきました。人は希望が目の前まで来ると、力が湧いてくるものです。二人は我先にと急いで穴を進んでいきました。二人はやっとのことで第3鉱区へとつながる抜け穴をと売り抜けれたのです。

 「ふう~。やっと着いたぞ。こりゃ腰に来るな~」

 「やっと、やっと着きました。一時はどうなることかと~。ね、ワーリーさん、あれ?ワーリーさんは?治郎吉さん!ワーリーさんがいません!」

 「なんじゃと?途中ではぐれたか、わしも必死だったもんで気づかんかった。今いないということはどこかで倒れて居るじゃろうが・・・・わしらでは助けにいけん」

 「何でですか?あんな狭い穴の中、しかも真っ暗の中に取り残されてるんですよ?早く助けに行かないと、死んでしまいますよ!」

 「落ち着かんかい。冷静に現状を見つめなおしてみろ!わしらもやっとここまでついて体力も限界じゃ!今言ったら共倒れじゃぞ。助けに行きたいなら一刻も早く体力を回復するしかない。とにかく休めそうな場所をさがすぞ!」

 「んん!もどかしいものです。すぐそこにいる仲間を助けられないなんて・・・」

 「ん?なんじゃ。この掘削機は、最近掘り起こされたかのような跡があるが・・・」

 「なんですか今は休める場所を・・・ほんとですね。不自然です」

ふたりが掘り起こされた掘削機を眺めて考えていると、奥から誰かが歩いてきました。

 「だ~れ~、だれかいるの~」

 「誰じゃ一体、ウォーリーが騒いどるのか?」

 「・・・・クーリーさん・・・・隊長・・・・・」

 「お?おまえは、部下!部下か!どこへいっとったんじゃ!勝手にどっかへ行くんじゃない!」

 「隊長~。探しましたよ~。心配してました~」

 「ん?誰かいるの?あとちょっとでコリル車治るけど・・・え?部下さんと・・・・だれ?あれ?ワーリー兄さんは、宇宙人さん」

 「実は・・・・」

部下さんはここまでの経緯を説明し始めました。街が急に変化した事、クーリーが勝手に洞窟の奥に進んで行ってしまった事、治郎吉さんと出会った事、治郎吉さんの案内でここまで来た事、そして、ワーリーとはぐれてしまった事を事細かに説明しました。

 「なんじゃ。あのフクロウとはぐれたのか?そりゃ大変じゃな。おいフクロウ2号!急いでその車を直して早く救出するぞ!」

 「そうだね、そこにある小さな穴の中なんでしょ?急がないと!急いでコリル車直すね!」

 「よし部下と、そこの爺、お前らは疲労がたまっておるじゃろう、向こうで休息をとれ!おいフクロウ3号、おまえはそいつらの看病をしろ、わしはフクロウ2号手伝いをする。  では『フクロウ1号救出作戦』を開始する!各自持ち場に着け!」

宇宙人さんの指揮のもと作業は極めて順調に進んでいきました。

 「部下さん、宇宙人さんがあんなにリーダーシップ持ってるって知ってた?」

 「私もあんな隊長を見たのは先の大戦いらいです」

 「え?宇宙人さんと部下さんどっかの戦争に行ってたの?」

 「言ってませんでした?ここに来るまえ私は前線の兵士で、隊長は指揮官でした」

 「宇宙人さんってそんなにすごい人だったの?」

 「それはそれはもうすごい人ですよ。何せ、わが軍の誇る元帥の一人なんですから・・・」

 「え、元帥?宇宙人さんそんなにエリートだったの?今までの態度から見たらそんな感じ全くないけど・・・」

 「まあそうですね、一線から退いてもう長いですからね。今はお目付け役みたいなものですよ。それでも人望は厚いんですよ?軍も隊長を手放したくないがために隊長には軍にとどまる代わりに自由な行動と特権を与えたんです」

 「そんなすごいのに、地球は全然侵略できなかったじゃん」

 「まあそうですね。隊長にとってはあなた達と出会ったのは不幸であり幸運であったと思います。少なくとも今の隊長は楽しそうです」

 「そうなんだ・・・・・」

宇宙人さんの過去について話していると、治郎吉さんがいないことに気づきました。

 「あれ?治郎吉さんは?さっきまで横で休んでいたのに・・・」

 「あ!あちらの方にいますよ。あの子供たちと話しているみたいですね」

ウォーリーと部下さんは治郎吉さんの方へ向かいました。近づくと治郎吉さんの話声が聞こえるで岩陰にとっさに隠れてしまいました。

 「君たちが、君たちがそうか・・・すまんかったな。わしが未熟なばかりに・・」

話を聞いていると治郎吉さんは子供たちの両親を知っているというのです。


~~第十四話に続く~~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る