第11話
「こ、ここが第5鉱区ですか?鉱区って感じがしないんですけど・・」
「ここは今でも使われてる鉱区じゃ。この鉱区は鉄鉱石が高純度でとれる。この街の建材には必要不可欠な鉱区じゃ。この鉱区はほかの鉱区と比べても比較的安全じゃからな。観光で来る人も多いぞ」
「そうなんですか。それで、抜け道っていうのは・・・」
「第3鉱区への抜け道はこの鉱区の奥の奥にある。そこまでは普通の道を通る」
三人は第5鉱区を進んでいきました。話していた通り人通りもありにぎやかな感じでした。
「そろそろ第5鉱区の中心地じゃ。ここから抜け道まではもう少しかかる。いったんここで休憩するぞ」
「わかりました。お弁当広げますね」
「頼む。その間少しわしは行く場所がある。まあ先に食べておいてくれ」
「あ、ええ。わかりました。どこにいくんですか?」
「まあ気にしないでいい。そんなに時間はかからん」
そう言い残して治郎吉さんは洞窟の奥へと歩いていきました。ワーリーたちは持ってきたおにぎりををシートの上に広げ、治郎吉さんの言伝通り先に食事を始めました。治郎吉さんの分を残してワーリーと部下さんは食事を終えました。しかし、治郎吉さんは一向に帰ってきません。10分、20分と経過しましたが帰ってくる気配がありません。ワーリーたちは治郎吉さんを待ちながら人の往来を眺めていました。30分を超えてついにしびれを切らしたワーリーは
「治郎吉さん遅くない?すぐに帰ってくるって言ったのに・・・ちょっと見てこようよ」
「しかし、治郎吉さんはおじいさんですよ?ただ歩くのが遅くなってるってだけじゃないですか?」
「だからこそ心配なんだよ。途中でもし転んだりしたら起き上がれるのかな?」
「確かにそれだったらこんなに遅いのも納得できますね。ちょっと見に行ってみましょうか」
二人は治郎吉さんの分のおにぎりだけ残してすべてカバンにしまいました。そして、治郎吉さんの向かった道を進んでいきました。治郎吉さんの進んでいった洞窟はかなり広くこの第5鉱区の本道という感じでした。電灯もしっかり整備されていて洞窟というよりは普通の地下道みたいです。道もまっすぐ続いていて看板には(終点まで2500メートル)と書かれていました。
「あと2,5キロもあるの?もし治郎吉さんが言ったのが終点だったらかなり遠くまで行ったことになるけど」
「とにかく行ってみましょう。途中で治郎吉さんと出会うかもしれませんよ」
二人はまっすぐ続く道を進んでいきました。奥に行くにつれ人の往来が盛んになってきました。さらに進んでいくと、治郎吉さんらしき人が立っているのが見えました。治郎吉さんは道の端にあるくぼみを見ているように見えました。二人は急いで治郎吉さんに駆け寄るとそのくぼみにあるのがお地蔵さんがあることに気づきました。
「治郎吉さん、こんなところにいたんですね。何かあったのかと思いましたよ」
「心配をかけて悪かったな。もう戻るところじゃ」
「何かあったんですか?お地蔵さんをずっと眺めてましたが・・・」
「・・・・・・・・・・・・いや、ただこの探索がうまくいくように祈っただけじゃ」
そういって治郎吉さんは先に帰路へとつきました。治郎吉さんが見ていたお地蔵さんの方を見てみると、そこには古いネームプレートが置いてありそこには{草加 宇城崎}と彫ってありました。
「これは・・・誰のだろう。治郎吉さんが置いていったように見えたけど・・・」
「ワーリーさん急がないとほら、治郎吉さんが人ごみの中に入って見失っちゃいますよ」
そう促されてワーリーは急いで治郎吉さんの後を追いました。第5鉱区中心市まで戻ってくると治郎吉さんがすでに待っていました。
「もどってきたか。戻ってきたところすまないがわしのご飯くれるか?」
「わかりました。どうぞ・・・・それでこの先どっち三向かっていくんですか?」
「んん。この中心地から抜け道の入口まではあと5分くらいで着く。そこに行ったらまた説明する」
治郎吉さんがご飯を食べるまでしばらく待ちました。治郎吉さんが食事を終えると治郎吉さんはすぐに荷支度を終わらせ、さっき通った大通りではなくその横にある枝道に入っていきました。枝道に入って数分すると治郎吉さんは急に止まりました。
「ここじゃ。ここに第3鉱区への抜け道がある」
「ここ、ですか?みたところただの行き止まりのようですが・・・」
「抜け道なんじゃ。普段は見えないようになっとる」
そういうと治郎吉さんは地面を掃き始めました。しばらくすると砂の中からチェーンが見えてきました。治郎吉さんはそのチェーンを手に取り力いっぱい引っ張りました。すると床全体が動き出しました。どうやらチェーンは金属板につながっておりその金属板で会談を隠していたようです。
「ゆ、床から階段が・・・」
「進むぞ。降りたらその金属板を戻しておけよ。ほかの人が見つけると面倒だ」
「わかりました。ここが第3鉱区への・・」
「おい、ボーっとするんじゃない。あと入る前にオイルランプを出しとけ。中は真っ暗だぞ」
言われた通りランプをカバンからだし火をつけました。階段を下りていき金属板を戻すと、本当にランプなしでは何も見えないくらい真っ暗になりました。抜け穴は人一人が中腰でぎりぎりと折れる大きさしかなく補強もされていませんでした。暗く狭い場所を慣れている人でないと圧迫感ですぐ精神力を消耗してしまいます。ワーリーたちは10分もたたないうちにばててしましました。
「ちょっとここで休みませんか?」
「そうじゃな。こんな狭い抜け穴じゃ。あんたらには相当な負担じゃろう。こっからじゃとまだあと1時間は歩かなきゃならんぞ。それは心にとめといてくれ」
「そんな・・・・こんな感じの道をあと一時間ですか?そんな・・・」
「そりゃあ長いぞ。街の下を通って第3鉱区まで行くんじゃ。ここに来るまでの比じゃないくらい時間がかかる。もうちょっとだけ進もう。あと2,3分も進めば鉱夫用の小さい休憩所がある。そこまで行ってから休憩しようか」
「わかりました・・・」
疲れ切ってはいましたがこんな場所では休むこともできないので治郎吉さんの言う休憩所まで進むことにしました。数分歩くと少しだけ開けた場所に出ました。しかし、開けた場所といっても少し大きいユニットバスくらいの大きさです。本当に人一人用という感じでした。
「ここが休憩所ですか?少し狭いような」
「頭に気をつけろ、ぶつけるな。まあここは一人用の休憩所じゃ。狭いと感じるのも無理はない。そこの壁にフックがあるのが見えるか?そこにランプをかけてくれ」
「わかりました。ここですね。それでここからも今までのような感じの道を1時間進むんですか?」
「いや、この先の道はもっと狭い。這いつくばりながら進むことになるじゃろう」
「もっと狭くなるんですか?でもそれじゃあこのランプはもう使えなくないですか?」
「ああ、この先は懐中ランタンを使う、強盗提灯ともいうかな。これなら持ちながら進めるぞ」
「この小さなランタンですか?これ持ちながら進めますか?」
「持つのはわしだけじゃ。一個で綱領は足りるじゃろうし、あんさんらが持つとそもそも進めんじゃろ」
10分ほど休憩したのち最低限の荷物だけ持って休憩所の足元にある小さな穴に入っていきました。今までもストレスは尋常なものではなかったのですがさらに狭く暗い道を進むのはそれ以上のストレスでした。治郎吉さんの話ではこの先には休憩所はないらしく1時間、それも治郎吉さんの足で、ぶっ続けで進まないといけないそうです。この洞窟の中では1分が1時間のように感じるくらいの緊張感が壁から直接ワーリーたちを襲います。緊張すると精神を使います、すでにほとんど精神力を消耗している状態でさらに長くしんどい道を進めるはずがありません。ワーリーたちは、クーリーを助けたい一心で何とか治郎吉さんの後おついていきました。いくらご老体とはいえもと鉱夫、進む速度は相当なものです。ついていくのもしんどいですが、時々壁から聞こえる地下水の音や地面が揺れる音が聞こえるのもしんどいものです。まるで生きたまま棺に入れられ地下深くに埋められたようです。ついにワーリーたちは完全にへばってしまいました。
「おい、どうした?第3鉱区まではまだ半分もきてないぞ」
「もう、本当に無理です。どうにかならないですか?」
「お前らもなんとなくわかっとるじゃろう。この洞窟は一方通行じゃ。こんな狭い洞窟じゃUターンもできゃしない。戻るとなればバックのままで戻らにゃならんぞ。それこそ無理な話じゃろう」
「でもこのままじゃこの中で力尽きてしまいそうです」
「私は大丈夫ですけどね・・・」
「部下さんは小さいからそんなことが言えるんだよ〜」
「とにかく、どれだけしんどくてもここで野垂れ死するよりはいいじゃろう?喋る元気は動く元気に変えろ。まだ先は長いんじゃ」
「そんな〜。もう泣けてきたよ〜」
~~第十二話に続く~~
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