第6話
「ん?なんじゃ、霧が・・・晴れてきたのぉ」
「ほんとだ、音もほんとに近くなってきた。もう洞窟につくよ」
「やっとか」
さっきまであった霧がすこしづつ晴れていきコリル車は洞窟にたどり着きました。細長い洞窟にはたくさんの採掘者と作業員が採掘作業を行っていました。
「え?ひ、人がいる」
「ここはまだ使われてる鉱山なのか?全然普通に作業してるじゃないか。爆発音は個々の作業の音じゃったんじゃな」
「おっかしいな。テレビで見たときはもう80年前に閉山したって聞いたけど」
「まあ人がいるんじゃ。これはこれで好都合じゃないか。降りて聞いてみようじゃないか」
「そうしよう、何かしらの情報は得られるかもしれないしね。宇宙人さんは僕の手の中にでも隠れててよ」
二人はコリル車からおり周りを見渡しました。天井にはゆっくりと時間を刻むように左右に揺れる白熱電球。洞窟は優に10メートルの幅がありひしめくように作業員がいる。奥は全く見えないほど長く、まるで吸い込まれるような感じがした。
「なんか気持ち悪い場所だね」
{そうか?わしにはよう見えんが普通の採掘場じゃないか?} と小声で答えました。
「違うんだ・・・しゃべり声は聞こえるのにしゃべってる人がだれかわからない。作業音は聞こえるのに誰も作業してるように見えない・・・まるで博物館のはく製を見てるみたいなんだ。ていうかそもそも僕たちにだれも気付いてない。あんなにでかい音だしてたのに・・・」
{まあたしかにあれだけでかい音を出してたんじゃ、誰か一人くらいは気づきそうじゃがな}
「でしょ?とにかく誰かに話しかけてみよう」
彼らはとにかく何か情報を得るために近くにいるピッケルを持った鉱夫に話しかけてみました。鉱夫はまるで時が止まったかのように固まっていました。ウォーリーたちが話しかけると鉱夫は急に動き出したように見え
「ん?なんじゃあんたたち。ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」
「すみません一つ訪ねたいことがありまして、ここにフクロウが二人ほど来ませんでしたか?」
{おい、部下の事も聞けい}
「どうせ聞いても小さくて気づいてないよ」
「ん?だれとはなしてるんだ?」
「いえいえ何でもないんです。で、フクロウ二人こちらに来ましたか?」
「ん~。フクロウかどうかはわからないけど二人組が後ろを通ったなさっき」
「そうですか。ありがとうございます」
吉報を聞いた二人はいそいでその二人組が行ったという洞窟の奥へと足を運んだ。洞窟は奥に行くにつれ狭くなってきました。進んでいくと奥にぼんやりと壁が見えてきました。どうやらこの洞窟の終わりへと近づいてきたみたいです。
「あの人が言ってた方向にずっと歩いてきたけどなんか行き止まりみたいだよ?二人はどこだろう?」
「ん~。ぱっと見はいないようじゃが・・・・まて、奥にだれか座ってるぞ」
「ん?ほんとだ。兄さんたちかな?おーい」
ウォーリーたちは座ってる二人の名を呼びながら二人に駆け寄っていきました。しかし駆け寄ってみるとそれはワーリーたちではありませんでした。
「なんだ。ワーリー兄さんかと思ったらただのシミじゃないか。まぎらわしいシミだ」
「これ・・・本当にシミか?」
「え?どういうこと?」
「シミにしてはなんというか気持ち悪いとは思わんか?」
「何々怖いこと言わないでよ。どういうことなの?」
「これって、誰かかここで何十年も前に死んでずっとここに放置され、骨すら残らず朽ちていった跡なんじゃないか?」
「なにそれ、怖い。いやでも、ただのシミかもしれないよ。ここらの岩にはいろんな種類の成分が含まれてそうだし、たまたま人っぽく見えただけなんじゃない?」
「いや、見ろ。このシミの周りを・・・虫が大量にいるじゃろ?この虫はおもに鉄分やリンなどを主として生きる昆虫じゃ。こいつがこんなにたくさんいるということはこのシミの成分は鉄分が多く含まれているってことじゃ。それにこの虫は口があまり丈夫じゃない。岩に鉄分が含まれててもそこから摂取することなんてありえないじゃろう」
「う、宇宙人さんすごい。こんなに博識なんて・・・」
「わしを誰じゃと思っとる馬鹿にするでない」
「頼りになるよ・・・にしてもまさかこんなところに死体があるなんて・・・」
「まあ死体と言えるかは怪しいがの」
「見たところ小さいね。子供だったっぽいね。こんなところに子供が?」
「ん~。ますますわからんな。こんな洞窟の奥になぜ子供がおるんじゃ?」
二人がシミを見て悩んでいると辺りが急に暗くなり音も急に途切れました。
「あれ?電気が・・・しかも音まで急に・・・」
「だいじょうぶじゃ。こんな時のために光子発生器を持っておる」
「なんだ?今日の宇宙人さん妙に頼りになるな~。ちょっと気持ち悪い」
「気持ち悪いとはなんじゃ。素直にほめるがよい。 それ」
宇宙人さんが出した光子発生器のおかげで辺りは明るくなりました。二人はいったんコリル車に戻ろうと振り返ると、さっきまでいた鉱夫も採掘機もなくなっていました。あるのは何十年も前に使われなくなったであろう採掘機の残骸とぎぃぎぃ音を立てて揺れる割れた白熱電球だけでした。
「さっきまでの鉱夫たちは?みんなどこ行っちゃったの?」
「ほんとじゃな。どこに行ったんじゃろうな」
「まるで神隠しだ。急にみんな消えちゃったよ。早く戻ろう」
「そうじゃな。怖くはないが危険かもしれんからな。いや、怖くはないぞ」
「とにかく急ごう」
二人は半分パニックになりながらコリル車に戻りました。
「はあはあ、やっと戻ってきた大丈夫?宇宙人さん」
「だ、大丈夫じゃ」
「早くこんな場所から出よう。変なことばっかり起こる。ほんとに無理だよ」
「わしも無理じゃ。長生きしとるがこんなこと初めてじゃ。早よ出るぞ」
ウォーリーは急いでコリル車の電源を入れ出口の方へ向きを変えました。コリル車が洞窟に対して背を向けたとき、
『・・・・・まって・・・・』
『・・・・・行かないで・・・・』
「何か聞こえなかった?後ろの方から・・・」
「なんじゃ怖いことを言うな。何も聞こえんかったぞ」
『・・・・どこにいくの?・・・・』
ボクタチヲオイテイクノ?
~第7話に続く~
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