幼なじみ探偵るる☆ 〜めがね注意報〜

マクスウェルの仔猫

第1話 シャーペン、ないの?

 

 二時間目の体育のあとの、休み時間。

 七橋ななはしカケルは、あわてていた。


 午後の国語の宿題を家に忘れ、今から少しでも!と気合いをいれたのに……。


「ない……ない。朝イチで使ってたよね僕」


 カケルは先月買ったばかりの、シンプルな青い色のペンケースのチャックを開けた。

 そして、中の物を全部机の上に出す。


「入ってないや。どこにいったんだろ?うーん」


 カケルのお気に入りの、アニメのキャラが描かれたシャーペンがないのだ。


 机の中、ゴソゴソ。

 じろじろ。

 ない。


 カバンの中、ゴソゴソゴソ。

 制服の胸ポケットも、ぺしぺし、ぽんぽん。

 やっぱり、ない。


 足もと。

 キョロキョロ。

 じー。

 ない、ない、ない!


「宿題やらなきゃいけないけど、無くしたのかもと思うと……。だめ、もう一回探してみよう。ソラトンダーは決して……あきらめないんだ!」


 カケルが、ゴソゴソじろじろもぞもぞペシペシぽんぽん、としていると。


「カケル、どうしたの?」


 そこに。

 カケルの幼なじみの斎明寺さいみょうじるるが、着がえて教室に戻ってきた。


 カケルは、もしかしたら!と思って、るるに聞いた。


「るる、『くらやみ仮面ソラトンダー』の」


「シャーペン、ないの?」


「まだ全部言ってないよ?!……ん?」


 カケルは、るるの返事に首をかしげた。


(僕、まだシャーペンって言ってないのに……?あー!もしかしたら!)


 カケルは、ナゾはとけた!とニコリと笑った。


 そう、どんなナゾでも名探偵めいたんていの僕にかかれば!


「るる、君は僕の『ソラトンダー』のシャーペンがどこにあるか知ってるでしょ……ふふふ。僕は何でもお見とおしだよ、ぜ?」


「……?知らないよ?あとカケル、何か変なしゃべり方してる」


「だってだよ?僕シャーペンの事を言ってないのに、るるはシャーペンのこと言ってたでしょ……だぜ?」


「もー、ぜんぜんカッコよくないから。それに」


 るるはカケルのカバンを、ちろりん!と見たあとに、親指でシャーペンをカチカチ!とするマネをした。


「カケルの『モウダメダー』のオジサンの絵がついたの、そのカバンのキーホルダーとシャーペンしかないし」


「『モウダメダー』とか違うよ!ヒドイよ!もう負けちゃってるじゃん!」


「で、キョロキョロしてたカケルがオジサンのこと聞いてきたから、キーホルダーはカバンについてるし、シャーペンないのかなって」


 カケルは口をポカーンと開けた。


 るるのほうが名探偵っぽい!と。

 るるは、たまに『わかってるよ?』というように、スルドイことを言う。

 

 そう、あの時だって……。


 と、カケルが思っているうちに、ピンチがすぐそこまでしのびよっていた。


「カケル。私のこと、うたぐったでしょ」

「……ふえ?……そんなことないから!ないよぉ!」


 カケルはるるから目をそらし、口笛を吹いてごまかそうとするが……。


 ふすー。

 ふひー。

 ひゅいー。


「悪い人がごまかそうとしてるような感じだけど、音いっこも出てないし。ふーん。へー」


「るる、待って聞いて!違うよ!るるなら知ってるんじゃないかって思っただけ!うたぐってないよ?!」


「オシオキ、だよ?」


るるはそう言うと、両手の手のひらをワキワキと閉じたり握ったりしながら、ジリジリとカケルに近づいていき。


 両手でガシッ!とカケルの右腕をつかんだ。


「わー?!最近、何でこのオシオキばっかりなの?!ぎゃあああ!」


「だって、カケル成分が足りないんだもん」


 るるは、最近お気に入りの、全力手のひらマッサージを開始した。

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