エピローグ

 一夜が明ける、朝が来る。授業を受けて、下校の時間。


 昨日の雨はどこへやら、すっかりと晴れているから、雨の心配はなさそうだ。

 天気予報は確認してないんだけどね。


 ――結局、昨日の夜は帰りが遅いって怒られちゃった。


 すぐに家に入れてくれたし、お風呂を沸かして待っててくれてたけど。


 晩ごはんの時に『早く帰るよりも大事なことがあったんだから仕方ないじゃん』なんて、言い訳を言ってみたけど、とにかく連絡ぐらいはしなさいよって返された。


 その通り過ぎて何も言えなかった。


 そんなこんなで今回は、私が謝ることで許してもらったのでした。

 めでたしめでたし。


 


 ――というわけで、一件落着! もう一件はどうなったかな。


 昨日とは打って変わって、今日は足早に教室を出た。


 彼女のクラスまで行くのは、ちょっと恥ずかしいから。

 やっぱり下駄箱の辺りで待っていることにした。


 少し待っていると、息を切らせた彼女がやってきた。


「もう、帰っちゃったかと思ったよ」

「ごめんごめん。ここで待ってたら会えるかなって」


「クラスまで探しに行っちゃったよ。連絡も返してくれないし」

「あれ? ほんとだ。あんまり使わないから忘れてた、ごめん」


「……それでさ、聞いてくれる? 昨日の話なんだけど」

「もちろん。私もその話が聞きたかったんだよ。一緒に帰ろうよ」


「うーん、帰りたくはない……かな」

「もしかして、……また、喧嘩したの?」


「ちょっと、だけ?」

「じゃあ、……今日はどこに行こうか」


 私がそう言うと、彼女は嬉しそうな顔をした。

 

 今日は太陽があまりにもまぶしかったから、昨日借りた傘を日傘代わりに2人で歩いた。傘を持つ手が重なったのは、寒かったからじゃなくて、つなぎたかったから。


 そして、最初の目的地はたい焼き屋さん。


 今日は違うものを食べに行きたいって言ったけど、彼女が譲らなかった。

 だけど、私も譲らないから、いろんなお店を渡り歩くことになったんだ。


 歩きながら、またいっぱいお話をした。

 それでやっぱり、頑固だなって思った。お互いに。


 ……もうちょっと、柔軟になってもいいのにね。

 たとえば、お互いにオススメのやつを選んでみる、とかね。


 まあ、毎回半分ずつにして分け合うのも、私たちらしくていいかなって思ったり。

 そう思うと嬉しくなったから、彼女にも伝えてあげることにした。


 そうしたら彼女は『これからも一緒にいてくれる?』なんて聞いてきたから、私は当然だけど『もちろん』って返した。

 

 彼女の顔を見ると、顔が赤くなっていたから間違いなく照れていたと思う。

 相変わらず顔に出やすい。

 

 だけどきっと、これもお互いさまなんだろうね。

 鏡を見なくたって、あなたの顔を見れば何となく分かる。


 

 これは恥ずかしいから、彼女にも言いたくないんだけど、これから先もずっと一緒にいるんだろうなって想像したら、もっともっと嬉しいなって思うのでした。


 


 

 ――そしてほんの数年後、私は毎日のように彼女の手料理を食べているのでした。


 その先のことだって…………、私にはまだまだ知らないことばかりなのでした。

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雨がふたりをつなぐまで 松内 雪 @Yuki-Matsuuchi24

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