第13話 いざ演習準備!


 さて朝になって大講義室に生徒全て集まったわけだが、ここが学校であっても軍隊だと言うことを真っ先に思い知らされることになった。ベルクシュタイン教官が開口一番「サバイバル演習を行う」お吐きになられたのがこちらだ、サバイバルときたか。


 ガチムチの教官、軍での階級は軍曹らしい。士官学校にいる間は教師ということで生徒の上に位置しているが、軍に戻れば部下になる。何とも悩ましい立ち位置だな。


「知っての通り真冬だ、防寒装備を揃えてのことになる。目的は簡単だ、宝珠に頼らずにここに帰還するだけ、それ以上でもそれ以下でもない。小隊ごとに初期位置を変更するが、途中で協力するのは構わん。だが制限時間を設ける、七十二時間だ」


 空を飛んでいきなりゴールじゃ訓練にならないからな。小隊ごとといっても魔導師は四人で小隊を編制する、それが三つ集まり十二人で中隊だ。これは歩兵に比べると極めて数が少ない、なぜならば戦車や戦闘機と同じ扱いだから。それだけ強力ということだな。


 そんな魔導師であっても宝珠が無ければただのヒトだ、そこらの兵士と一切変わりはない。不意の攻撃を魔力で弾けるという根本的な部分があるだけ恐怖心は少ないが。


「いつから行うんでしょうか?」


 男子の一号生徒が挙手と共に愚問を投げかけた、その質問をしたら大抵帰って来るのがアレというのに気づかないのか! それと知っていた二号生徒と三号生徒が小さくため息をついた。


「可及的速やかに実行に移すぞ」


「え、でもレポートの提出は今日一杯って……」


「そうだな、今日中に帰還出来たら提出を受理する。そうでないものは出発前に出していくのを推奨する」


 はっ、知ってた速報だな。大体あの教官がそんな甘いことをするはずがない、いつでも出来ることを先延ばしにした奴が悪い。二号生と三号生、そして勘の良いやつや真面目な一号生らがその場でレポートを提出した。うなだれているのは半分ほどだろうか。


 途中アリアスと目が合うとにっこりと微笑んでいた、しっかりと書いたようでなによりだ。小隊の編制、間違いなく二号生と三号生が隊長だが、一号生の割り振りはどうすることやら……では先ほどと同じだぞ。


 講義台の真下に進み出ると生徒らを見渡す。何だと視線を集めたりはするが関係ない。


「アリアス・アルヴィン一号生徒、エミー・マリー一号生徒、アイナ・エリマンデル一号生徒前へでろ、小隊を編制するぞ!」

https://kakuyomu.jp/users/miraukakka/news/16817139555050175469

https://kakuyomu.jp/users/miraukakka/news/16817139555443699100


 どうやって決めると言われる前にこちらで決めてしまう、これだ! 少数だ、和を乱すような者は不要だ。それに訓練での成績がそこそこ高い二人を混ぜた、これならば平均よりやや上なだけでズルとは言われんだろう。その位の配慮はしているぞ、どうだ教官。


 チラっとみると腕組をしているだけで何一つ文句を言わない。それをみた隊長候補らがしきりに編制作業をし始めた。


「デグレチャフ隊長、宜しくお願いします」


 代表してアイナ・エリマンデルが声を出す、三人の中では先任という認識があるようだな、ならばそれでいい。エミー・マリーとはペア生徒だ、こちらの命令には従うだろう。


「ターニャ・デグレチャフ三号生徒だ。では速やかに装備を調達に行くとしよう、こんなものは先着だ」

 

 四人で揃って教官に敬礼をすると武器庫へと駆け足で進む。宝珠自体は常に装備をしているが、それ以外の一般装備は軍服以外全てそこに収められている。つまりは専用品もなければ定数揃えられている保証もない。


 既に開錠されていた、あの教官こうなると想定済みか、さすがだな!


「各自分散、全ての装備を四ずつ回収せよ! 優先は小銃に防寒具、スコップと背嚢も逃すな、不要なら返却すればよい。エリマンデル一号生、この場を任せる」


「はい、隊長はどちらへ?」


 早速装備を集めにエミー・マリーが荷物に突っ込む。アリアスも小物をせっせと手にしては外へと運び出す手続きをしていた。


「私は食堂だ、飲まず食わずで三日を過ごしたくはないのでね。では健闘を祈る!」


 全てを持ち歩けるわけではないからな、だがまずは権利を主張できる手筈を進めておくべきだ。選別は後でするにしても、食糧だけは枯渇というわけには行かん。むしろこれをこそ最優先すべきだ! 甘味は我等が絶対に頂く!


 学校内は上へ下への大混乱に陥った、それでもここでは宝珠を使用不能とは言われていないので、小隊内の通信は確保されている。まあ実際はアリアスを通してあの二人とは先ほどリンクさせたばかりだったが。


 食堂で持ち出しを申請する、喜べ、何と板チョコを四枚確保したぞ! それだけではない、キャラメルにハチミツ、他にも普段はおいそれと口に出来ないレアものをしこたま四ずつ手に入れた。無論、肉もだ!


 ヒャッホウ! これならサバイバル演習も楽しくて仕方がないぞ! おっと、それとアレもだったな。

 

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