第4話 幽霊の情報

夢来が入部して一週間が経ったある日、いつもの様に零華が悠斗に勉強を教えていたり、三人でお喋りをしてると、谷本先生がやって来た。

「今日も楽しそうね。」

「あ、こんにちは。谷本先生。」

零華と悠斗は同じように挨拶をし、夢来は軽く会釈をする。

「大平さんも楽しく過ごせていて何よりだわ。」

大平というのは夢来の名字だ。ただ、いきなり声をかけられてビックリしたのか、何故か夢来が驚いている。そして、少しぎこちない様子でうなずき、返事していた。

「は、はい。楽しい...です。」

「まぁ良いわ。今日は幽霊部...というか佐藤君が喜びそうな情報を持ってきたの。」

谷本先生がこうして来るのは珍しい。なんだろうと思ったが、その前に、

「情報!?それってもしかして、幽霊の情報ですか!?」

...やっぱり悠斗はすごく食いついている。零華はやれやれと肩をすくめたが、悠斗は気にしない様子で聞いている。谷本先生はフフフと小さく笑い、説明する。

「はいはい、わかったから落ち着いて。...この学校に旧校舎があるのは知ってるわね?」

谷本先生が質問をする。零華は小さくうなずき、悠斗ははいっ!と元気よく返事をする。夢来は知らないのか、首を傾げている。

「この建物から少し離れたところに、古い建物があるんだけど、それが旧校舎なの。その旧校舎で最近失踪事件が発生しているのよ。」

「失踪...」

零華はすでに怖いのか、体を震わせている。悠斗はワクワクした様子で身を乗り出している。夢来はなんとも言えない様子で黙っている。

「そう。旧校舎は前から肝試しの場所として有名なんだけど、数年前に肝試しに行った人が全員戻って来なくなる事故があったの。それ以来旧校舎には入れなくなる様に立入禁止になったのだけど...最近になってまた肝試しに行く人が増えて来て、その肝試しに行った人はまだ戻って来てないの。ただ、グループで行ってきた人の一、二人は戻って来たのよ。その戻って来た人の全員が、幽霊を見て、行方不明になった人の事を消えたって言っているのよ。」

部室の中に重い沈黙が流れる。と、その時、

「行きましょう!やっと幽霊部らしい活動ができる!」

「ちょっ悠斗!?本気なの!?話聞いてた?行方不明になったらどうするの!?」

「そうよ。鈴原さんの言う通りよ。危険過ぎるわ。」

ウキウキした様子で行きたそうにしている悠斗を、零華と谷本先生は必死に止めている。が、悠斗はどこ吹く風で、

「零華は幽霊なんて信じてないんだろ?だったら行くのに何の問題も無いよな?」

「なっ...それとこれとは話が別よ!」

零華と悠斗は行くか行かないかで言い争っている。それを谷本先生が止めにかかった。

「はいはい。喧嘩しないの。わかったわ。ちゃんと危なくなったら逃げるって事を約束してくれるなら良いわ。」

「谷本先生!?」

えぇ!?と、零華は思う。行方不明になりたく無いし、そもそも行きたく無い。でも谷本先生は大丈夫と言って微笑んだ。

「大丈夫よ。ちゃんと危なくなったら逃げれば大丈夫だから。大平さんも大丈夫かしら?」

「...あ、はい。大丈夫です。」

夢来はどこか元気が無さそうだった。悠斗は嬉しそうに話を仕切っていく。

「よっしゃ!んじゃあ早速幽霊調査にレッツゴー!」

「って...勝手に仕切るな!」

零華と悠斗の相変わらずな様子に、夢来もようやく笑った。

こうして三人は谷本先生に見送られながら、目撃情報を元に幽霊の調査に向かう事になったのだった。

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