第3話 新入部員

 ドアの方へ向かった零華は、考え事をしていた。

(一体誰何だろう?谷本先生はノックなんてしないし、新入部員ってのもなぁ。まだできて一日ぐらいしか経っていないし、そもそもこんな部活に入りたいって思う人がいるなんて思えないんだけどな。とりあえず今は誰が来たのかを確認しないと。)

「はいはーい。今開けますね。」

考えつつドアを開ける。と、そこにいたのは思いがけない人物だった。

「あれ?夢来。どうしたの?」

 夢来は最近できた友達だ。少しふわふわしたところがあるけど、芯の強い子だと零華は思う。でも、夢来が一体何の用なんだろう?幽霊部の事を知っているとは思え一ーない事もなかった。

「あの、ここって幽霊部かな?」

零華は驚いた。まさか夢来が幽霊部の事を知っていたなんて。でも何で?

「う、うん、そうだけど...何で?」

「あのね、幽霊部に入部したくて。」

夢来は平然と言う。零華はえぇー!と叫びたくなった。というか現にえー、と声が漏れてしまっている。零華の驚いた様子を感じ取ったのか、夢来が苦笑しながら言う。

「えっとね、さっき零華達が幽霊部の事を話しているのが聞こえてきて...それで、谷本先生に聞いて来たの。」

「へぇ...でも何で入部したいの?」

「幽霊部に興味があるから。」

「...変わっているね。」

思わず言ってしまった。夢来は首を傾げている。と、

「入部してくれるのか!?」

悠斗が嬉しそうな顔で飛び込んできた。

「ちょっ...なんで待てないの...」

ウキウキした様子の悠斗とは対照的に、零華は頭を抱えている。そんな零華の様子にはお構いなしに悠斗は話を進めていく。

「本当ありがとうな!俺は悠斗。副部長で、」

「え?」

何で?普通部を作った人が部長になるものなんじゃないの?じゃあ部長は誰?

「こっちは零華。部長なんだ。」

いやいやいや、何勝手に部長に任命しちゃってるの。零華は思わず心の中で突っ込んだ。というかこのままだと本当に部長になってしまう。零華はとりあえず笑顔で怒ってみた。

「悠斗。いい加減にしないと私でも怒るよ?」

と、圧力を掛けてみる。が、

「え?いっつも怒ってるよね?」

何を言っているんだろう悠斗は。零華は割と本気でイラッときた。

「悠斗。」

今度は笑顔じゃなくて真顔で、声も低めにした。すると、

「スミマセンデシタ。えっと。俺が部長で零華が副部長です。はい。」

まぁ反省してくれたので良しとしよう。...副部長も嫌だけど。

「まぁ良いか。...そういえばどうして夢来はここに入部したいって思ったの?もっと他に良い部活なんてたくさんあるのに。」

零華が素朴な疑問を口にする。それに反応した悠斗は、

「そんなこと言うなよ!仮にも自分らの部活だろ?そんなこと言って悲しくならないのか?」

と、反論するが、

「いや別に。」

零華にバッサリ切られてしまった。

「そんな...」

悠斗はショックを受けた様子でくずおれてしまった。代わりに零華が対応する。

「あぁ、悠斗のことは別に気にしなくて良いよ。とりあえず入部したいならまぁ良いよ。えっと、入部おめでとう。」

別に入部に反対しているわけではない。本人が入部したいなら尊重する。

「ありがとう。これからよろしくね。副部長?」

夢来も嬉しそうだ。副部長を強調していたのは引っかかるけど。

「俺からも。入部おめでとう。夢来だっけ?これからよろしく!」

「あれ?もう立ち直ったの?」

入部を歓迎しているのは良いが、流石に立ち直るのが早い。...どっかのギャグ漫画じゃあるまいし。

「まぁいちいち凹んでたらキリ無いしな。」

「確かに、そっちの方が悠斗らしいかもね。」

ひとしきり笑いあったところで、零華は夢来をほったらかしにしていた事に気づいた。

「あ、ごめんね。つい...」

零華は謝ったけど、夢来は笑って許してくれた。

「大丈夫だよ。気にしないで。...二人って仲良しだよね。」

夢来がポロッと言葉を漏らす。それに対して、二人とも同じことを思ったのか、揃って同じことを言う。

「なっ...仲良しなんかじゃないよ!」

「なっ...仲良しなんかじゃねぇって!」

二人揃って同じことを言った事に気づいたのか、顔を見合わせた後、揃って吹き出した。その様子を見た夢来もニコニコしていた。

この日は夢来も加わりながら、三人で楽しく喋って部活を終えた。

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