第76話 宅配員の里見さん

森野家に戻って、私は久しぶりに家族と過ごす日曜日を満喫していた。


いーちゃん、かっくんとワイワイ仮面○イダーやプリ○ュアを見終わった後は、お父さんの好きなニュース番組を見るとはなしに眺めながらお煎餅にかじりついていた。


そこへ、家の電話が鳴り、お母さんが応対していた。


電話を切ると、お母さんはボソッと何か呟いた。


「ふふっ、……やバカじゃなかったじゃない…。」


「電話、誰からだったの?」


気になって聞いてみると、お母さんは何故か少し慌てた様子で言った。


「ん?うん…。えーと、宅配便の人。もうすぐ荷物を届けに来てくれるって。」


「あ。里見先輩、もしかして本当に荷物送ってくれちゃったのかな?」


私は昨日のぷりぷり怒っていた先輩の様子を思い出して、青くなった。


それにしても、昨日夜に連絡して、それから送ってもらったとして、今日の午前中につくとは随分早い。


「それは分からないけど、今手が離せないから、宅配便の人が来たら、あんた出てよ?」


「あ、はーい。着払いの金額いくらって言ってた?」


「え?えーと…。それは言ってなかったと思うわよ?」


「そう…なの?」


元払いで送ってくれちゃったんだろうか?後で先輩にお金返さなきゃだな…。


「それより、あんた。のんびりするのもいいけれど、いつまでもその格好でいるの?せめてちゃんと着替えてから出てちょうだいね。じゃ、お母さん、掃除するから。」


お父さんの白いTシャツ一枚だけで着ている私の格好に、お母さんは眉を顰めてそう言い置くと、急にバタバタ動き始めた。


いーじゃん。ぎりぎり下着も出ないし、この格好楽なんだもん。


私は着替えが億劫だなと思い、不精な事を思いついた。置き配にしてもらえば、宅配便の人と合わずに荷物受け取れるんじゃない?


そうと決めると、私は再びゆっくりくつろぎ、スマホに手を伸ばした。


LI○E を見ると、未読のメールが届いており、ドキッとした。


先輩から返信が来ていた。


「必要ない。』


一言。


昨日、私が最後に、ちゃんと話したいから今日家に戻るといった内容のメールに対しての返事がこれ。


私がガックリと肩を落としたとき…。


ピロン。


『また後で。』


ピロン。


続いて公式キャラクターのうさぎがペコリと頭を下げているスタ○プが送られてきた。


??


「また、後で?」


私は首を傾げた。


家に帰る必要がないと言っておいて、また後でってどういう事?


意味が分からない…。


私は先輩の意図を問おうと、 電話をかけようとすると…。


ピンポンと玄関のチャイムが鳴った。


「りんごー!出てくれる?」


「あっ、はーい!」


私はインターホンに急いだ。


「はーい!」


私はインターホンの受話器をとって応対した。


(ちなみに、うちのインターホンは、音のみでカメラのないタイプ)


『あの、すいません…。』


若い男の人の遠慮がちな声がした。宅配便の人新人さんなのかな?なんだかえらく緊張しているようだった。


「あっ、はいはい。宅配の方ですよね?すいませんが、荷物置き配にしてもらえますか?」


『いや、宅配じゃありません。ってもしかして森野か…?』


「?!」


『里見です。』


私は目をパチクリさせた。半信半疑で、恐る恐るドアを開けてみると…。


こちらと同じくらいビックリした顔をしている、里見先輩がそこに立っていた。


「せっ、先輩???宅配便のバイトでも始めたんですか?」


「何を言ってるんだ、君は?違うって言ってるだろうが!」


自分でも何を言ってるのか分からない私に、里見先輩はいつものように間髪入れず、突っ込みを入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る