落下
言葉か。
黒点か。
岩漿か。
白点か。
雷光か。
身の内に駆け巡るそれらと共に、先程までの映像がちらつく。
烏天狗に辿り着くまでの、歪んだ森の景色。
木や花や草や土や岩や人間が、忙しなく近づいては遠ざかる。
舌が、歯が、喉が、口腔内が、髪の毛が、皮膚が、乾いていく。
烏天狗の仮面を目にした瞬間、漆黒に塗り潰された景色。
指の先と、顎と、前腕と、歯が、骨が軋みを上げる。
歯から、舌から、上顎から、喉から、瞬く間に全身へと極細の異物が落ちてゆく。
霧と化した烏天狗の一部が身の内に落ちてゆく。
流れるのではない。
落ちるのだ。
全身もほら。
今や、地面に落ちている。
赤い血に、落ちている。
人間が、烏天狗と話している。
とても親しげに。
笑った。
よかった。
よかった。
よかった。
取り戻せた。
仲間はここに居る。
じゃあ、帰ろうか。
海へと。
足が疼くのはきっと、早く元の形に戻りたがっている所為。
それだけなのだ。
だから。
人間の舞踊姿も、ほら。
埋め尽くされる。
言葉か。
黒点か。
岩漿か。
白点か。
雷光か。
どれかに。
すべてに。
(2022.5.19)
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