第3部 第12話 エピオニア大会に向けて
第3部 第12話 §1 カイゼルズレポート 追記
― カイゼルズレポート 追記 ―
私は古から残されたこれらのシステムを解析し、媒体となる少年をその目にし、短い時間ではあるが、彼という存在と時間を過ごした。彼は自らの生い立ちを知らず、今は普通の生活を営んでいる。
いや、厳密に言うと、彼の生活は一般のそれとは少しかけ離れたものであるのかもしれない。ただいえることは、彼がとても幸せに過ごしていると言うことだ。そのことは人並みであり、人以上のものなのかもしれない。
彼は今、私の敬愛する二人の元で暮らしてる。恐らくそれは、彼にとって良き出会いであったのかもしれない。
彼には四人の友人がいる。それぞれが、シルベスター及びクロノアールの血縁者であることが、セシル=シルベスターの調べにより、明確になっている。
「子孫達は良くも悪くも引き合う運命にある」それは、彼女や、ブラニーがよく口にする言葉であるが、それは決して、論拠のないものでは、無いのかもしれない。
少年の名は、イーサー=カイゼル。そう、レポートにもあるように、エンジェルプロジェクトの総責任者である者の名字が彼に与えられている。
彼の実年齢は、現在彼の営みに相当するものであると、思われる。
彼が、現在に置いて活動を再開した理由は解らないが。
もし、彼の幼少の記憶が、人工的に形成されたものだと、仮定して考えるならば、時期的には恐らく、私とサブジェイが、サテライトシステムを本格的に再稼働させ始めた頃と、非常に類似しているに違いない。
何故なら、彼のその後の記憶には、彼の友人達の記憶があり、その記憶は現実のものだからだ。
だとするならば、我々の研究活動が、何らかの形で彼のがコールドスリープに、影響を与えたと考えられる。
ただし、それに拘わる情報に対するアクセスログは、まだ見つかっていない。
データは、別のログディスクに保管されていると考えれば、我々は今一度、彼のいた遺跡に足を運ばなければならないだろう。
ただし、現時点での遺跡への進入は、あまり好ましいとはいえない。
何故なら、もう一つ別の組織が、たのシステムから隔絶されたシステムを利用し、不穏な行動を繰り返しているからである。
魔物が、たびたびゲートを通じて、この世界に出没する事件である。
通常人間の行う詠唱は、精神体調に左右されることが、大いにあり、その時間は、同一の者であっても、必ず詠唱時間に誤差がある。だが、ここしばらく頻発する魔物の事件に関しては、ある手一定の法則に基づき、速度が一定である。であるならばすなわち、これは、明らかにシステマチックに行われた作業であり、人外の者であるといえる。
これはここ数年のクーガからのデータにより、明らかになっている事実である。
彼に対する情報収集は、私にとって非常に興味があり、また重要なものであるが、しばらくはさらなる、データの解析に努めていたいと思う。
重要なのは、彼という存在なのである。私は彼を見守りたいと思う。
生まれてきた生命は等しく生きる権利がある。
引用はしないが、ロイホッカーの詩集にも出てくる言葉である。その成り行きは、人が決めて、良いものではない。願わくは彼に平凡な安らぎを……。
筆者 レイオニー=ブライトン
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