第3部 第11話 §11 リザードマン

 その時だった。

 「ん?」

 ルークは空気に違和感を感じる。ザワつく禍々しさ。空気が電気的な刺激を受けたようにピリピリと、しびれ始める。

 その空気のしびれを敏感に感じる者がもう一人いた。

 それはローズである。

 「なに……この感じ……」

 二人には、ある一つの共通点がある。それは彼等の得意分野に関わるものである。

 二人に次いでそれを感じるセンスがあるものは、魔法に長けた者である。

 次の瞬間、大気中にいくつもの魔法陣が出現する。

 それは一つではない、競技場内至る所にである。

 そして無数の魔法陣の中から、次々姿を現したのは、リザードマンである。

 リザードマンは、超獣界と呼ばれる、超常的な力を持つ生物の生物たちが住む世界で、非常にどう猛な肉食のデミヒューマンである。次々と現れたリザードマン達は無秩序に捕食活動を開始し始める。

 観客が一気に混乱の渦に巻き込まれる。慌てふためき逃げまどう。

 この尋常ではない自体に、ルークの目は大きく見張り、眉間に皺を寄せて、不可解な事態に、彼を震え上がらせた。

 「何なんだ……これは……」

 エイルはしばらく立ちつくす。

 「ボウズ!やるぞ!!手を貸せ!!」

 ルークのが苛立った声を張り上げる。

 「テメェは、早く避難しろ!!いいな!」

 ルークが言葉を吐きかけたのは、ヘンリーである。

 「ドライ!!もたもたすんな!!」

 次に彼が名を呼んだのは、普段から厄介者扱いをしていた彼の名である。スタジアムのどの位置に居るのかは、もう解らないが、その気配だけは伝わってきている。

 混乱した観客の絶叫の中、ルークの呼びかけにドライが答えることは出来なかったが、すでに戦闘は開始されている。

 ローズは一度姿を消し、一分もしない間に、二つの剣を持ち、そこに姿を現す。

 「ち!ガキども、無茶すんな!リバティー離れんな!!」

 「お嬢は、俺がガードするから!アニキはいってよ!!」

 直ぐさまイーサーが切り返す。

 明確に考えたわけではなかったが、リバティーの動きにドライがあわせていると、それは大きな戦力ダウンに繋がるような気がしたのだ。

 「一丁前言ってくれるぜ!!」

 「大丈夫!」

 イーサーは、直ぐさま銀色に輝く左腕のブレスレットを見せ、それを展開させる。

 魔力とは違う異質の力である。そして、首に手をやり、光の刀身を持つ剣を出す。

 「…………」

 無頓着なドライでさえ、イーサーが自分達とは異質の力を持つことに気が付く。

 だが、今はそれに驚いている訳には行かない。殲滅である。

 「ガキ共、しっかり気張れよ!!」

 ドライがスタンドの床を一蹴りすると、そこはその加圧に耐えきれず、大きな亀裂を走らせる。

 ドライは大きく空中に飛び出て、リザードマンが出現する魔法陣が多数ある武舞台上に姿を下りる。

 中央ではすでにルークとエイルが、次々と出現するリザードマンを切り刻んでいる。

 ヘンリーは、ルークの忠告をきき、すでに姿を消している。

 剣のない彼が出る幕はないのである。臆病の者の行動ではない。場をわきまえた正しい判断なのである。

 「マベリック・レイ!!」

 ルークが魔法と唱えると同時に、左手を上空に着き出し、そこから赤い光線を次々に射出する。

 魔法は多数撃ち放たれ、次々にリザードマン達を撃破してゆく。それと同じ行動に出ているのはローズである。

 「エイル!こっちは俺がやる!ミールと一緒にローズの詠唱をサポートしろ!!」

 そこは、あまりにも敵の出現が多いのである。

 二人の反応ではまだ、ルークの詠唱をサポートしきれないと、ドライの判断である。

 「解った!」

 グラントとフィアは、ペアを組みすでに行動を始めている。

 グラントが発する重力波で、リザードマンを足止めしつつ、フィアが重力の圏外から、炎で殲滅するという方法である。

 エイルは、近づいたミールを抱き寄せると、風を纏い上空に飛ぶ。

 ドライ達が使う飛翔の魔法とは、種類が異なる間接的な飛行方法である。便利なものだ。

 「レイオニー、早くしやがれ!!」

 きりがなくわき出すリザードマンに大してルークが名をあげたのは、レイオニーである。だが彼女自身が、そこに居るわけではない。

 恐らくこの事態にレイオニーはすでに対策を打ち始めているはずである。

 「シンプソンは!!」

 ドライがもう一人肝心な人間のの名を挙げる。

 「ジパニオスクの来賓とやらと、一緒にVIPルームだ!!」

 ルークは観客席の一部にもうけられた大きなガラス窓で覆われた席を指さす。そこは、マジックミラーになっており、こちらからその姿を見ることは出来ない。

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