第3章 第9話 §4 霊獣
少しすると、エイルの剣が持つ帯電は収まりを見せ、彼が戦闘意識をとくと、それは馬の形へと姿を変える、
金色の鬣と、あおく光る目を持ち黄色と黒のゼブラ模様の馬である。ただしサイズは、フィアのゴン太と同じように、ミニチュアサイズである。名はないが、イクシオンというらしい。
「ふふ。まぁかわいらしいお馬さんね」
「どこが……」
ノアーが、ほほえましい笑みを作るが、エイルは肩に乗っているそれに少々冷や汗が流れている。なぜなら、その馬は絶えず体中に帯電しているからである。
残るは、ミールとグラントである。二人もエイルに続き同じような儀式を受けるが、あえてテストを行うことはしなかった。理由は、ドライの家の芝生が、だめになってしまうことであることと、その後のドライの激怒ぶりに、対処方法がないということであった。
おそらくエイルは、後からやってきたドライとローズにちくちくと、いわれるに違いない。
ミールが得た守護精霊は、リヴァイアサンといい、非常に長くスリムで美しく透き通るような青い肌を持つ、竜魚である。その肌に鱗はなくなめらかで、偏光作用があり、七色にきらめく。目には瞼があり、ふつうの魚とは違い、アイコンタクトが可能である。残念ながら、手乗りとはいかないようだ。左上腕に絡み、右の肩口から、ひょっこりと顔を出している。普段は空中浮揚を移動の糧としている。
剣の色は、水色が基調となるロングソードである。
「この子、神秘的ね~。目が結構知的だし……」
ミールの評価である。確かに実在する生物からかけ離れた存在であり、ふつうの人間には始めないかもしれない。だが、波長なのだろう。ミールにはそう感じた。時々、イルカのように、キュルル……と高めの声で鳴いている。
「ママに見つかったら蒲焼きにされない?」
それがリバティーの感覚だったらしいが、全員に大受けだったのは、いうまでもない。
「やめてよ!かわいそうじゃん!」
ミールは、すっかり愛着がわいているようで、すぐに庇護にまわるが、それだけローズの行動に納得できる節があったのである。顔は笑いながら泣いている。
「お嬢、イーサーのボケがうつってるよね!」
特に腹一杯抱えて笑い倒したのは、フィアだった。
ローズならやりかねない。そう思ったのは、セシルもノアーも同じである。
一色単になって、笑い転げている彼らを見ると、確かに彼らはサヴァラスティア家の子供達といってもいいのかもしれない。
残りは、ヨークス自由枠優勝者であるグラントである。
強い緊張を持った彼の前に現れた精霊は、最強の攻撃力と防御力を持つと呼ばれるバハムートである。素早さでは、イクシオンや、リヴァイアサンには及ばないが、その堅固さは他の追随を許さないのである。
バハムートは、陸竜に似ており、ずんぐりとした体型をしている。いやそれよりももう少し体幅が広いだろう・その体表は金属の鱗で覆われており、全体が青い黒色で埋め尽くされている。両腕は思うより長く、腕はドラゴンよりも発達している。翼も持っている。
剣もそれに併せて、黒色に変化し、重量感がより一層際だって見えるようになる。
「あの……こいつ、結構重いですね……」
別に肩に乗せる必要はないのだが、他社に並ぶとそういうスタイルになってしまうのが、自然といえば自然だろうか。バハムートはがっちりとした足で、グラントの肩に捕まっている。
「もっとも物質的な存在ですからね」
と、ノアーのそれは、説明であって説明になっていない。
「やっぱりうちのゴン太が、一番自然だよね」
と、この世界に存在しうることはない、三者に比べて、小型の猿に近い彼を手に取り、得意げに眺める。
「ふふ。彼らはあなた達に忠実ですが、虐めたりすると、力を貸してくれなくなりますよ?」
それは彼らにも心があるということを、いっているに他ならない。
「はーい」
ミールが少しだらしない返事をするが、やはりノアーが引率の教諭に見えてしまう。
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