第3部 世界の鍵編

第3部 第1話 出会い

第3部 第1話 §0 ―― 前書き ――

― 前書き ―

 

 十六年。時間はそれだけ流れた。時間は人の記憶を掠れさせ、また人そのものを呑み込んで育って行く、一つの生き物のようなものだ。赤い目の伝説、仮面の英雄も、遠い音色のように、騒めきにかき消されてしまっている。


 成長し始めた時間は、走ることを覚えたかのように、加速し始める。

 人々の間には、AMCオートマティックモバイルカーIHアイアンホースといった、自走式の乗り物が普及し、その行動範囲は、大陸間に及ぶようになる。大陸間で尤も使用頻度の高いものは、飛空船だ。


 過去世界を股にかけ、歩き回っていたのは冒険家だった。時代は進み、ある意味では、誰にも公平なものになっていた。

 それと同時に魔法は力は衰えを見せ、代わりに魔力を人工的に生み出す文明が育っていた。


 例外というならば、医術などの特殊分野に関しては、まだその地位どうにか奪われる事なく生きている。


 失われるということは皮肉な物で。その力の希少価値が増してくるほど神格化され、崇められてるようになる。そんな風に移ろう時代である。

 魔法に置き換わりつつある文明は、さらなる進化を目指そうとし、また異世界の生物に関しても、そのメスを入れようとしていた。


 この世界の全てが文明の手によって、解き明かされる日も、そう遠くは無いのかもしれないと、人々が新しい力に歓喜し、その未来を疑わない時代。

 物語は再びそこから始まる。

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