遺伝子解析(いや、予測しなかったわけじゃないんだが)

 俺の宇宙船に装備してある簡易分析機でも、ある程度の遺伝子解析くらいはできる。設定を変更しつつ何度か解析することで精度もあげられる。

 そういう訳で、ひそかじんの遺伝子解析をしてみることにした。みたんだが……

「マジかよ……」

「解析手順、設定ともミスはありませんでした。十分信頼に値する解析結果だと判断します」

 エレクシアの冷静なフォローに、「そうだよな…」と呟くしかできなかった。

 俺とひそか:遺伝子適合率九八%。俺とじん:遺伝子適合率九六%。ひそかじん:遺伝子適合率九七%。

「殆ど人間とチンパンジー程度の差異しかありませんね。ということは、生物としての由来は同じと考えるのが妥当です」

「まあ、そうなるよな……」

 予測していたことではあるが、この結果を見る限り、ひそかじんも、元は俺と同じ地球人であり、その成れの果てと見るのが一番合理的だった。

 だが、それでも疑問はある。超空間航行技術が確立されて恒星間航行が民間レベルで当たり前にできるようになってから二千数百年。それ以前にも調査と超空間航行技術の検証の為に有人の調査隊が編成されて、何件か事故があったという記録もあるがそれですら三千年強程度前の話。その最初期に遭難した人間達の子孫だとしてもやっぱり合点がいかない。前にも触れたように、単純に環境に適応して変質しただけならここまで変わってしまうにはあまりにも期間が短すぎるんだ。

「これはやはり、環境適応以外の要因があると考えるのが妥当だよなあ」

 声を漏らす俺に、「そうですね」とエレクシアも返してきた。

 解析機の様子を映し出すカメラモニターと、解析機が得たデータを表示するディスプレイの前で、俺は椅子の背もたれに体を預けた。そして、ちらりと部屋の方に視線を移す。

 そこには、俺が与えた毛布を部屋の隅に積み上げて寝床を作りそこで白い毛布のようになっているひそかと、壁を背にただ体を丸めて両腕で首を守るようにして眠るじんがいた。二人とも俺と一緒にいたがるので、部屋まで入れたのだ。

「俺達は遠い親戚なのかね……」

 言葉にすると一層、二人に対する親近感が湧いてくる。本当に姪っ子とかを見ているような気分にもなってくる。

「俺も寝るから、後は頼む」

 ロボットであるエレクシアは、当然、寝る必要はない。一週間に一度程度のメンテナンスを行えば十分だし、メンテナンスも自動で行われる。

「お休みなさいませ、マスター」

 その彼女に見守られながら、俺も眠りについたのだった。


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