刃の習性(完全に昆虫のそれじゃないよな)
淡々とエグイことを言ってのけるエレクシアを信じ、俺は
「こっちにくるか…?」
と手を差しのべた。
俺の動きに一瞬、
…そうか、そうだよな。彼女も怖いんだ。
当然か。彼女にしてみれば、いくら俺が強い雄に見えたとしても、いや、強い雄だからこそリスクもあるんだ。こういう生き物は共喰いも珍しい事じゃない筈。強い雄に近付くということは、自分が食われる危険性もあるってことだろうし。
それに気付いたことで、俺は自然と柔らかい表情になっていた。
危険を感じてるのは俺だけじゃなく
お互いの手が届くほどの距離まで来て、
まあそうか。一般的に猛獣と呼ばれてる動物にしたって、基本的にはものすごく臆病なんだ。怖いから攻撃的になり、手加減ができなくなる。
こうしてみるとやはり昆虫ではなくトラやライオンといったタイプの猛獣に近いんだと分かる。昆虫は肉体の構造からして人間とは異質すぎるしそもそも精神とか心理とかいったものを持ち合わせていないから共感のしようもないが、その点ではまだトラやライオン程度には分かり合えそうだ。しかも
両手で触れても大丈夫と思ったのか、今度は鼻を近付けて匂いをかぎ始めた。この辺りもやはり昆虫とは違うな。どちらかと言えば犬や猫に近い行動だと思った。
するととうとう、俺の手を自分の首に擦り付け始めた。触れた感触は、思ったより柔らかい。胸の辺りの外皮は三八口径の弾丸でも貫通できない程度の強度はあるようだが、首の辺りは明らかにそれより柔らかそうだった。つまり、首は
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