第4話 風吹く深淵の主

気付けばマジカルガイドボールも三人の上空高くにいて跳ねている。さもこの上が帰り道というように。

しかし、三人組にはもうほうきに乗れる魔力が残っていなかった。

ここまで来て途方に暮れる三人に、突如突風が巻き上がり、咆哮が聞こえた。

???「グウォオォォオオォオ」

アリス・ベッキー・チェシャ「?!?!?!」

三人は荒ぶる突風から身を守りつつ、目を開ける。

すると、そこには巨大なドラゴンがいたのだった。

アリス・ベッキー・チェシャ「今度はドラゴン?!?!?!」

ドラゴンは咆哮を上げながら襲ってくる。

アリス「この渓谷ってドラゴンいるの?!聞いてないよ!!」

チェシャ「あたしもこの地域や一帯にドラゴンがいるなんて聞いたことない。あの長老話してないこと多すぎ!!」

ベッキー「うわーーーん!!!もうヤダ~~~~!!!!」

再び逃げることになる三人。ドラゴンは追いかけてくる。

ベッキーは追いかけ襲ってくるドラゴンのあることに気づく。

ドラゴンの目は鋭く三人を捉えてはいるが、涙をたたえている。

ベッキー「このドラゴン、なんか様子がおかしい…?」

アリスはドラゴンを注視する。そして、アリスはドラゴンの片翼が破けて傷ついていることに気づいた。

アリス「待って!あのドラゴン怪我してる!!」

逃げるチェシャにアリスが呼び止める。

三人は逃げるのをやめ、ドラゴンに対峙する。

アリス「あのドラゴンの片翼をよく見て!破れて傷ついてる!」

ベッキー「だから涙目なんだね!…このドラゴン、苦しんでる…?」

チェシャ「この体格、見た目から察するにこのドラゴンは光り物が好きな『メテオドラゴン』やな。あの片翼の破け具合から見て、水晶のつららにでも刺さったんやないか?」

アリスはそれを聞いて、意を決したように言った。

アリス「この子の片翼治せないかな?」

チェシャ「何バカなこと言うとんねん!相手はメテオドラゴンやで?!あの鋭い爪にひっかかれたら最後。命がいくつあっても足りんわ!!」

ベッキー「‥‥。チェシャの言うことは一理あるけど、私も治してあげたい…!!」

チェシャ「はあ?!ベッキーまで何言うとんねん!」

チェシャは二人を説得しようとしたが、二人はもう覚悟が決まっているようだった。

チェシャ「…っはぁ~~~。…しゃあないな!!!二人は意見変えなさそうやし、助太刀したるわ!!!」

チェシャは頑なな二人にため息を漏らしながらも、こうなったらやったるで!という気概で構えるのだった。


傷ついたドラゴンは興奮しながら三人に斬撃をかましてくる。

三人はその斬撃を必死に交わしながら少しずつドラゴンとの距離を狭めていくのだった。

途中マジカルガイドボールで体力を消耗しているチェシャが転びそうになったが、アリスがしっかりと支える。

ベッキーは怖がりが嘘のように果敢にドラゴンに挑むのだった。

そして、ドラゴンの至近距離、間合いまで入った三人は、互いを目くばせし、そして言い放つ。

アリス・ベッキー・チェシャ「サークルトライアングル!!!!!!!」

すると巨大な三角形の光の輪が現れ、ドラゴンの動きを封じ込める。

ドラゴンは気付いたら自分の近くに居た俊敏な少女たちに、突然現れた巨大な三角形の光の輪に太刀打ちできず、咆哮を上げる。

ドラゴン「ギャォオオオオォオオォォォオ」

ドラゴンの動きが止まった瞬間を見計らって、アリスはさらにジャンプし、ドラゴンに飛び乗り、ドラゴンの片翼に手を向けて叫ぶ。

アリス「ヒールシャワーーー!!!!」

その瞬間、まばゆい光の粒子が三人とドラゴンを包み込む。

そして、みるみるうちにドラゴンの片翼は治っていった。

ドラゴンの片翼が完治したころには、ドラゴンもすっかり落ち着いていた。


アリスはドラゴンを撫でる。

チェシャとベッキーもボロボロではあるが満足げにドラゴンとアリスを見る。

すると、ドラゴンは自分の腕をチェシャとベッキーの前に出してきた。

そして、私に乗れという合図をしてきたのだ。

驚くチェシャとベッキーではあったが、既にドラゴンに乗っているアリスが叫ぶ。

アリス「二人とも乗ってきなよ!ドラゴンがどうやら渓谷のこの谷底から私たちを救い上げてくれるみたい」

チェシャとベッキーはお互いを見て頷くと、差し出されたドラゴンの腕に捕まる。

ドラゴンは全員が乗るのを確認すると、治った翼をバサバサと広げ、上昇する。

そして、あっという間に高く舞い上がるのだった。

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