第3話 暗闇の谷底
渓谷の底に降り立った3人は暗闇の中灯の魔法で道を照らす。
真っ暗で肌寒くもある渓谷の底で3人の心は張り詰める。
地図も無くしたので、向かう方向がどこか目星を立てることができない。
この暗闇の中、やみくもに歩いたのならきっと迷子になるだろう。
チェシャ「しょうがないわ。あの魔法を使うわ。体力消費が著しいけど、こんな状況には使うしかないねん。」
チェシャはそう言うと、呪文の詠唱をし始めた。
呪文の詠唱と共に浮き出る光輝く魔法陣。
少し風が吹いたかと思うと目の前には光ったほわほわした球体の何かが浮かんでいた。
その球体はまるで意思があるかのようにぐるっと周囲を回って見せたり、ベッキーやアリスの周りをくるくるしてまるで様子を伺い、飛び回っている。
チェシャ「これはマジカルガイドボールやねん。術者の体力をかなり削ぐ代わりに、道に迷った時などに道を示してくれる魔法や。この魔法を使うと、しばらくは魔法が使えないくらいには体力が消耗するねん。けど、この状況やとこれ使うしかないやろ?」
チェシャは額に汗をにじませつつ話す。
ベッキーはありがとう~~~!!!!と泣き叫びながら、チェシャに抱きついている。
アリスもチェシャに感謝の意を称しつつ、渓谷の底のマジカルガイドボールが指し示す先を見つめるのだった。
マジカルガイドボールに案内され、暗い渓谷の底を進む三人。
勘の良いアリスはふとどこからか感じる視線に気づく。
アリス「…この暗闇の中、誰かいる?」
ベッキー「怖いこと言わないでよアリス!!!」
ベッキーはヒッとした顔をしたがすぐに冗談やめてよと言った様子で笑顔になる。
アリスも気のせいかと気にせず歩みを進める。
トントン。
チェシャ「ん?アリス何か用?」
アリス「え?何?どうしたの?」
チェシャ「今、私の肩に叩いて話しかけなかった?」
アリス「え?何もしてないよ?」
チェシャ「そう…」
チェシャは前を向き直し進み始める。
トントン。
アリス「もう~!どうしたのベッキー!怖くないって~!」
アリスは後ろから肩を叩かれたので、後ろにいたベッキーに振り返る。
しかし、ベッキーはキョトンとした様子でアリスを見やる。
ベッキー「…???」
アリス「あれ?今ベッキー私に話しかけなかったっけ?気のせいかな~。」
ベッキー「さっきからアリス怖いこと言ってばっかり!ただでさえ真っ暗で怖いのに怖がらせないで!!」
ベッキーは少し怒った様子で涙目でアリスをにらみつける。
アリスはおかしいな~と思いながらもごめんごめんと調子よく謝りながらも進む。
そして、最後尾のベッキーが突然後ろから悲鳴を上げた。
驚き振り返るアリスとチェシャ。
するとそこには、泣き顔で腰が抜けているベッキーと目だけの実体がない何かがそこにいた。
アリス・チェシャ「キャアアアアアアアアア」
アリスとチェシャは腰の抜けたベッキーを床から引きはがし、腕を掴んで一目散に走り出した。
あの目だけの実体のない何かは3人を追ってくる。
3人は半泣きになりながらひた走る。
3人の中で一番魔法について詳しくて扱えるチェシャは先ほどのマジカルガイドボールを生成する魔法によって力を使い果たしてしまったため、何もできない。
怖がりのベッキーも腰が抜けてしまい、二人に支えながら走るのが精いっぱいだ。
アリスは突然立ち止まったかと思うと、迫りくる目だけの実体がない何かに対峙し、何かに向かって両手を振りかざし叫んだ。
アリス「エクストリームシャイニング!!!!!」
その瞬間、まばゆい閃光が放たれる。
暗闇の中唐突に発せられた強力な光によって、目だけの実体がない何かは目をつむり苦しそうにウォオォォオォオオオと叫び散らしながら退散した。
退散したことを確認した三人は安堵し、一気にその場にへたり込む。
アリス「ふわぁ~~。なんとかなったーーーー!!!!」
ベッキー「怖すぎイイイイイ。もうイヤだ~~~。帰りたい~~~!!!!」
チェシャ「‥‥‥‥。」
それぞれドッと疲れが来たのか、しばらくしゃがみこんでいた。
それからしばらくその場に座り込み休憩していると、マジカルガイドボールが跳ねる動作をし始めた。
チェシャはマジカルガイドボールが何かを見つけたのだと理解した。
チェシャ「マジカルガイドボールが何かを見つけたみたい。行ってみよう。」
満身創痍の3人は重たい腰を上げて先にすすむのだった。
マジカルガイドボールに案内され、行き着いた先には水色かエメラルドグリーンか眺める方向によって輝きが変わる神秘的な水晶群があった。
ベッキー「あ!あれ!!!」
ベッキーが水晶群のいただきを指さす。
ベッキーが指さした水晶群のいただきには、なんと探し求めていた扇が引っかかっていた。
アリス「風神様の扇だ!!ようやく見つけた~~~。」
チェシャ「見つかって良かったわ。途中から迷信ちゃうん?と思いはじめとったもん。」
三人は扇が存在することに安堵しながらも、どうやってあの扇を取れば良いのか考えていた。
アリス「この水晶登ってみる?」
チェシャ「あたしもそれは思ったが…。それは辞めた方が良さそうやな…。ほれ見てみい。」
チェシャは水晶群をよく見るように促す。
アリスは水晶群をよく見てみると、チェシャが止めた理由を理解した。
水晶群は光り輝いており、目を凝らさないと分からないのだが、小さい無数の鋭利な針のような結晶があり、下手に上って足を踏み外せば刺さりそうだった。
ベッキーが何かをひらめいたのか私に任せて!といった様子で、構えを取った。
ベッキー「サイコファイア!!!!」
ベッキーは水晶に向かって口から火を噴いた。
すると、水晶はみるみる溶け始め、いただきにあった扇もどんどん下に下がってきた。
アリス・チェシャ「グッジョブ!ベッキー!!」
扇を無事手に入れた三人は一安心。
しかし、問題は一つあった。
アリス・ベッキー・チェシャ「どうやって帰る‥‥????」
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