第16話 投下

 次々と輸送機から歩兵が投入され、焼け野原となった国家都市を蹂躙していく。


「はははははっ!


 いいぞ、目につくものはすべて吹き飛ばしちゃえ!」


 カサトはグレネードランチャーで40mmグレネードを発射しながら叫んだ。


 次々と兵士が吹き飛んでいき、前線に風穴があく。


 そこに兵士が突撃して小銃を放ち、前線を進めていった。


「逃げたって無駄だ!


 僕たちが一歩一歩進んでいくだけだ!」


 次々とろくな抵抗をすることもできずに吹き飛んでいく敵を前に、カサトの気分は高揚し、狂気的な笑い声をあげながらグレネードを撃ちまくっていた。


 もともと戦場では火をおこす効果を持つその能力が重宝されたため、彼はあまり前線に行くのではなく、一歩下がったところでグレネードを投擲する役割を与えられていた。


 突撃を繰り返す敵を次々と吹き飛ばしていくその姿に快感を感じたことは、一度や二度ではない。


 爆発音、次々と倒れていく兵士たち、その兵士の叫び声。


 そのすべての音が興奮を高め、カサトは今絶頂のさなかにいた。


「吹き飛べ!全部吹き飛んじまえ!」


 その時


ドゴォォォォォォォォン!


 前線で大爆発が起きた。

 

「何だ!」


 カサトが目を開けると、自分のすぐ前までの道に大量の兵士の死体が転がっていた。


 そして死体の道に立っていたのは


「月狼っ…!」


「よう、カサト。」


 刀を持った月狼だった。


「何をしたっ!」


「時間を伸ばしている間に、前線にグレンお手製のクレイモア地雷を設置しただけだ。」


「くっ!」


 カサトはグレネードランチャーをぶん投げた。


「お前は最後に殺すつもりだったが、気が変わった。


 一番最初に殺してやるよ!」


「いいよ、来いよ!」


 突如月狼が目の前から消えた。


 カサトは首筋の前に腕を掲げる。


 月狼の刀がカサトの腕に食い込んだ。


「お前は僕の能力を誤解している。月狼。


 僕の能力は火を放つ能力なんかじゃない。」


 突如、月狼の刀身に錆が広がった。


「何っ!」


「皮膚で物質を酸化させる能力だ。


 これでお前の刀はもう使い物にならないね。」


「畜生。」


 月狼は急いで能力を使って後ろに下がる。


「さて、ここからは本格的な銃の勝負だ!」


 カサトはライフルを取り出した


「殺す殺す殺す殺す殺す!」


 月狼に乱射した。


 月狼は能力を発動してしゃがんでよけ、ライフルを拾う。


「食らえ!」


 月狼がライフルをカサトに構えた。


 銃のセレクターがフルオートに設定され、引き金が引かれる。


 パァン!


 弾丸が発射された。


「はははっ!


 そんなもん簡単によけられる!」


 カサトは銃口の向きから弾道を予測してよけた。


 よけつつ月狼の至近距離へ近づく。


「チェックメイトだ!」


 カサトが月狼に拳を向けた。


 だが


「いつ刀は一本だけだといった?」


 月狼はロングコートを払った。


 ズボンのベルトには二本目の刀が差されている。


カチッ


 月狼が刀のロックを外した。


 そして鞘から射出された刀を瞬時につかみ、カサトを切り裂いた。


「ぐわあっ!」


 カサトの腹部が切り裂かれた。


 カサトは膝をつく。


「こっちが俺のメインウェポンだ。


 お前にやった刀は武器屋で買った量産品。」


「くそっ!」


「まあ、その闘志には敬意を示そう。」


 月狼がライフルでカサトの頭部を撃った。


「さて、まだ敵は降ってくるか。だが、俺が狙うのは奴だけだ!」


 月狼は火の手が上がる国家都市の長い道を駆け抜けた。


 邪魔するものをすべて蹴散らして。



((((ライ視点))))


「おらああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 バリケードにあまたの敵が突撃する。


「くっ!」


 ライは街角のバリケードに隠れながら敵にカールグスタフをぶっ放していた。


 だが、吹き飛ばしても敵は次々と突撃を仕掛けてくる。


「いくら敵を吹き飛ばしてもきりがない。


 早くここを突破しないといけないのに!」


 バリケードにはロケット弾が絶え間なく撃ち込まれ、今にも壊れそうだ。


「こうなったら!」


 ライはカールグスタフに発煙弾を装填した。


 そして敵に向けて構える。


「おら!」


 ライによってカールグスタフの引き金が引かれた。


バシューン!


 敵兵の周りが煙で包まれる。


 ライはアサルトライフル二丁を取り出した。


 そしてそれを発煙弾の中の敵に向けて発射する。


パパパパパパパパパパン!


 銃声が連続で鳴り響く。


 そして用済みになったアサルトライフルを投げ捨て、再びカールグスタフで発煙弾を発射した。


「今だ!」


 そしてライはバリケードを乗り越え、煙の中に突撃する。


 そして両手に持ったアサルトライフルを使って次々と敵を倒していった。


 敵はどこにライがいるかわからないため、混乱して倒されていく…


 はずだった。


 パン!


 一発の銃弾がライの右胸を貫通した。


「くっ!」


 幸いなことに急所は免れたが、おかしい。


 煙の中であれば決して狙い撃つことはできないはずなのに。


 煙が晴れた。


「やあ。」


「っ!」


 そこにはヘルメットをかぶった少年が車の上に立っていた。


「やあ、僕はセンス。


 この僕の圧倒的な第六感の前では、煙なんて目くらましにもならない。」


「くっ!」


 パパパパパパパパパパン!


 ライがライフルを連射した。


 だが、センスは回転しながら銃弾をよけた。


 センスが着地する。


 パン!


 もう一発銃弾を放った。


 ライが再びそれをよける。


 そしてそのまま銃撃戦の応酬が続く。


「食らえ!」


 センスが銃弾をすべてよけてライに銃剣突撃した。


「死ねえええええええ!」


「はあっ!」


ドンッ。


 ライはセンスのみぞおちに蹴りを一発食らわせた。


 センスが後方へ吹き飛び、装甲車に激突する。


「クッソ!」


「タッチ。」


 突如現れたグレンがセンスの袖に触れた。


ドカァン!


 センスが大爆発を起こした。


「グレン!」


 ライがグレンに駆け寄った。


「大丈夫?お姉ちゃん。」


「何とか。」


 グレンがふっと笑った。


「ここら辺の敵はある程度殲滅されたよ。


 ほら、ライはここにとどまっている暇なんてないでしょ?」


「うん!じゃあまたね、グレン。」


 ライは前方へ向かって走り出した。


 ライの髪が風でさらさらと揺れる。


 その様子をグレンが微笑んで見送った。

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