竜の家族

るつぺる

ドラゴン

 ある日、家のそばに捨てられていたドラゴンを飼い始めたぼく。お父さんたちに見つからないように黙って飼うことにしたんだ。だけど図体が家よりデカくてすぐにバレたんだ。お母さんは捨ててきなさいと言った。するとドラゴンは「産廃処理法にひっかかりまっせ」と言ったんだ。お母さんは怒ってドラゴンとは仲良くないけれど産廃処理法にひっかからないほうを選んだんだ。お父さんは無職です。

 ともあれドラゴンはうちの家族になった。名前をつけようかってぼくが言うとドラゴンは「余計な真似をするな」って言ってグッと顔をぼくに近づけてからお父さんやお母さんには見えないように小さな小さな炎を吐いてぼくの眉毛を焼き払ってしまった。ぼくは何をするんだってドラゴンに怒った。ドラゴンはゲップした。

 ある日、友達のメグミちゃんがウチに来た。ドラゴンが見たいんだって。メグミちゃんの家はお金持ちだけどドラゴンは手に入らないって。ドラゴンはメグミちゃんを見るなりゲップした。メグミちゃんは鼻をつまみながらじろじろドラゴンを眺めると「なんか思ってたのと違う」って言った。ドラゴンはそのままメグミちゃんを踏んづけて潰してしまったんだ。

「おいドラゴン」

「ギャーーォン」

「誤魔化すんじゃないよ どうすんだコレ!」

「何が?」

「何がじゃねえよ! ウチの敷地で人死にが出たじゃねえか!」

「そうとも言うな」

「そうでしかないんだよ! どうすんだって! 片野メグミはもうしゃべらない! もう笑わない、泣かない、怒らない! おれたちはどうすればいいんだ!」

「わたし ドラゴンやからさ 人の罪は人の法で人同士争い人が裁かれてもろて」

「お前の罪だろ! 眉毛も返せよ!」

「お前こそ人が死んでんに眉毛の心配たあ気楽なもんやで! 生えろ! 勝手に!」

「お前が死なせたんだろ! 責任とれよ!」

「あー 知らん知らん きこえません」

「聞け! 穴という穴ぜんぶかっぽじって聞け! お前なんか拾わなきゃよかった」

「楽しいか?」

「ハアン!?」

「他人の心傷つけて楽しいかて聞いとんねん!」

「自分がやってることわかってんのかお前というアホのクソ! あーもう最悪だよ! 人生終わりだ! 小2で人生終わった!」

「まぁまぁ落ち込むな 罪は償える 誰でもやり直せるんや」

「お前!」

「バレんかったらええんやろがい!」

「なんで逆ギレしてんだよ! おい待て!」

「ファイヤーーーッ」

「……どうすんだよコレ どうすんだよ! 片野メグミ、炭になっちまったじゃねえか!」

「コレでバレんやろがい! あとはお前がシラ切り通せるかにかかっとんやぞ!」

「自首しろドラゴン! テメーがケジメつけろ! 俺は知らん!」

「今の発言、法廷ならどう結論づけるやろな 週刊誌に書かれろ! 極悪小学生として!」

「いやいやいやいや悪いのは全部お前!」

「ダンダン! 判決! 死!」

「お前!」

「閉廷! 死!」

「なら殺れ! 俺を消し炭にしろ!」

「マクド行ってきます」


 ドラゴンはなぜか絶対に物理的にぼくを傷つけない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

竜の家族 るつぺる @pefnk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る