第5話 茶髪のおにーさん
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「……?」
次に有希子が気が付くと、茶髪の野球のユニフォームを着たヤンキーに背負われていた。
「っ!? やめて、はなせー! はなせー!」
状況が読めない有希子は、連れ去られていると思い、必死に抵抗する。
「ちょっ、落ち着け。落ち着けって。俺はケーサツ官だ」
「嘘つけ! 茶髪のケーカンなんているわけないもん。……でも、何か聞いたことある声かも」
「そりゃよかった。ネコパン……いや、井上さん」
有希子はそう言われて、ようやくこの茶髪が誰なのかが分かった。
「え、中川さん!?」
「あたり。元気そーだな」
「はい、私は元気です。だからもう降ろしてくれても……あ、いや、やっぱり歩けないから、お姫様抱っこしてください」
「するわけねーだろ。ほら、そんだけしゃべれるんなら、1人で歩け」
「けちっ」
有希子が中川巡査の背中を降りると、後ろに母親がいることに気づいた。
そして、家に向かいながら有希子が気を失っている時に起きたことを話してくれた。
犯人は、有希子の両親が勤めていたトラック運送会社の社長に雇われた男だという。
有希子の母親は、夫の死の真相を調べようと、自ら会社に忍び込み極秘情報を手に入れた。そして、それを取り返そうとして、さっきのようなことになったのだった。
中川巡査はちょうど長期休暇中ということもあり、茶髪にして趣味の草野球のコーチをしていたら、河原を歩く井上親子の姿を見かけ、声をかけようと思ったら事件が発生し、駆けつけたのだという。
「今回のことは警察側の怠慢です。このことはしっかり調べさせていただきます」
中川巡査は深々と有希子の母親に頭を下げたのだった。
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