オムレツ談議


 幌馬車に戻った3人。

 お風呂で身体はポカポカ、フリースのワンピースを着込んでいます。

 カセットガスストーブをつけて、馬車の中とは思えないほど快適ですね♪

 といっても、幌馬車、密閉がいいわけではありません、まあ、おかげで中毒なんて気にしなくてはよいのですが、不幸中の幸いというやつですかね。


 夕食は、オムレツをチョイス!

 沖縄あたりでよく使われている、クッキングハッシュ、使い切りタイプが95円であるのを見つけたようなのです。


「オムレツなんて、子供のころに母親が作ってくれ、食べて以来なのよ♪」

「クッキングハッシュが安くあってね、取り寄せ出来るようなのよ♪挽肉って100円以下ではないのよね」


 玉ネギ、人参を細かく切り、クッキングハッシュと一緒にスキレットで炒め、塩胡椒で味付け。

 かなり大量に作っています。


 別のスキレットにバターを投入、割りほぐした卵で薄焼きを作り、取り置いていた具?を3分の1いれて、くるりと……器用ですね。

 エマさん、スキレットを3個しか取り寄せて居なかったので、もう一つ追加で取り寄せて居たのです。


 エマさんの作ったオムレツ、帝国陸軍の軍隊調理法が元のようです。

 当然といえば当然なのですが、ケチャップなんてかけてあります。


「これがエマ様のお母様の味ですか?」

「そうなるのかしらね、クロエのお母様の味はなんなの?」

「……お母様がお料理ね……食べたことがないです……食事は全部、使用人が作っていましたから……」


 どんだけお嬢さまだったのですか!


 良く聞くと、クロエさんのご実家は、かなり裕福な準男爵家で、代々別の王国の経済官僚……

 で、お父様が権力闘争に負けた方についていたとか……


「まあ、お母様は没落する前になくなったのですが……お父様と一緒にカペーに亡命したのですが、お父様が暗殺されて……」

 生活の為に、女官になったらしいのですね。


「フレイヤはどうなの?」

「私は孤児でしたので……育てられたところの食事になるでしょうか……このような豪華な料理は出ませんでしたね……」


 えっ、たかがオムレツですよ?


「そうよね、エマ様とのお食事は豪華なものです、白パンなんかいつも食べられますし♪」


 白パンが高価というのは理解していましたが、なんどもいいますが、たかがオムレツですよ?


「ほんと、そう思います、卵料理って滅多にありつけませんから」


 どうも卵って、別にないわけではないのですよ。

 卵と大きめの黒パンが同じぐらいのお値段、それぐらいならパンを買うというのが、庶民なら当然の選択というわけです。


「その上、卵ってすぐ腐りますからね……」


 というわけで、卵料理なんてものは、これまた祝祭のご馳走というのが一般的らしいのですね。

 でも富裕階級の食卓では、出るようですね。


「私の世界では、卵なんてもの凄くお安いですよ、お肉は安いのから高いのまで色々ですけどね」

「この世界でもお肉は色々ですよね♪お肉はどこの世界でも一緒なのですね♪」


「ところで、この卵料理、卵少ないような……」

「それね、薄焼き卵でまいているだけなの♪家は貧しくてね、卵をそんなに使えなかったのよ」


 2人の為にテーブルロールなんて出していましたが、エマさんはおにぎりなんて食べています。


「パンをいつも取り寄せていただいていますが、エマ様はライスがお好きなのですね♪」 

「やはり、生まれ育った処の主食ですからね、時々無性に食べたくなるのです」

「2人はパンが主食なのでしょう?」


「その……私はジャガイモばかりで……パンはご馳走で……女兵士になってから、やっとパンが食べられるように……」

「白パンは、公爵家の姫の結婚式の警備に動員されたとき、初めて口にできました」


 どうやら、スコーネ公国というのは、かなり北の方にある辺境の国で、貧しいらしいのですね。

 デーン王国に滅亡させられた時、領主家、スコーネ公爵家の一族は全員亡くなったようです。


「2人とも、卵は好きなの?」

「好きです!」


 まったく……ハモるのですから……


「なら、別のオムレツを作りましょう♪、私も卵料理、大好きなのよ♪」


 とか、いいながら、まずはプレーン・オムレツ。

 さらにスパニッシュオムレツ……もう一つ、デンバーオムレツ……


 一つずつ作り取り分けていました。


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